J1第1節 FC東京 4 - 0 アルビレックス新潟(観戦4試合目)

とうとう今年もやってきました、開幕戦。天気は・・・雪の翌日。そしてわれらの試合は今日の最終試合、午後7時キックオフのナイター。天気予報は厳寒。
というわけで、そろそろクリーニングに出そうかな、と思っていたダウンジャケットを着込み、座布団&足先ホッカイロを購入、膝掛け毛布まで用意して家を出た。


新宿からいつものように京王線に乗ると、青赤に混じって東京観光旅行に来襲なさった新潟サポの皆様もちらほらと見える。彼らにとってちょっとかわいそうなのはナイターだと新潟に帰る最終新幹線(午後9時40分頃に東京駅を出るはず)にぎりぎりだということ。寒さは慣れているだろうけど。


味スタは人でごった返していた。今年もU-SOCIOなので、いつものようにバックアッパー中央に席を取る。グラウンドの隅には雪の山が出来ている。飛田給もそれなりに積もったらしい。


いつものように試合前の手順が進行していく。新潟ファンは試合開始1時間前から歌い始めた。どこか山形の念仏(死語w)と一脈通じる、素朴な、山の中から響いてくるかけ声のような、ちょっと呪術的な感じがするメロディだった。
メンバー紹介時に気になったのはレフェリーの人選だった。京ポンで昼間の試合の主審をチェックしていくと、
瑞穂:砂川、埼スタ:吉田、日本平:松村、万博:上川、大分:片山、横酷改め日産:岡田
となっていた。あれ、と思いつつJ2の試合記録もチェックしていくが、いない・・・あいつらが・・・僕たちの(笑)、家本、穴沢、奥谷、そして柏原がいない!
私の近くでも気付いた人がいたらしく、「これはくるかもよ」なんて会話が聞こえたのだが、ふたを開けてみれば山西さんだった(安堵)。
おそらく彼らは明日のためにとってあるか、第4審判に回っていたかのどちらかなのだろう。ということは明日の日立台(観戦予定)で・・・・?
そして両チームのスタメンが発表される。


東京の先発。いちおう、4-3-3という言い方にしておく。

     ルーカス
 戸田        石川
   宮沢    栗澤
      今野
 金沢 茂庭 ジャーン 加地
      土肥

サブは、塩田、浅利、藤山、三浦、そしてダニーロ
トーチュウ様がおっしゃるとおり、まだフィットしていないダニーロがベンチにまわり、代わりに好調が伝えられる宮沢がスタメンに入った。


対する新潟も4-3-3だった。

      上野
 鈴木慎    エジミウソン
  ファビーニョ 本間
      山口
 青野 丸山 海本慶 海本幸
      野澤

控えは、木寺、萩村、梅山、アンデルソン・リマ、そして岡山。
こっちも4-3-3。


お互いに、表記の上では同じフォーメーション。ポストプレーヤーが1トップとして陣取り、残り二人のFWが大きく開いてウイング風に位置する。中盤も底にアンカーを置き、攻撃的MFに2枚を配する。そしてDFラインも4バック。お互いに似たような役割が振られている選手が多い、ミラーゲーム。鏡の国の戦争。向かい合う選手の力量差が、如実に表れる試合。


そして、鏡の中で躍動したのは東京だった。

  • 2分:栗澤→ルーカス→戸田とパスが回る。戸田がドリブルで前進して上げたクロスにファーから斜めに入ってきた石川が頭で合わせる(シュートは浮く)。あれ、いつもと役割が逆じゃないすか!
  • 3分:石川が右サイドをぶっちぎって中のルーカスめがけクロス。ルーカスのヘディングシュートは枠をそれる。
  • 6分:右サイド、石川・加地の2段アタック。加地のクロスに戸田が合わせようとするがミートせず。
  • 8分:宮沢のフィードに飛び込んだルーカスのヘッダーは野澤の正面。
  • 9分:右サイドでルーカスがファウルを受け、FKゲット。宮沢がいいボールをゴール前に入れるが野澤がキャッチ。
  • 11分:野澤がゴールキックをハーフウェイ付近にいた石川へプレゼント。据え膳食わぬは男の恥とばかり石川がぽっかりと開いたスペースを(そりゃ開いてるわな)高速ドリブル。斜め45度から放ったグラウンダーの早いクロスは、新潟左SB青野の股間を抜け、ゴール左隅へ進路をとる。ボールの軌道上で敵味方合わせて数人の選手がパタパタと倒れこみ、その間を抜けたボールはシュートとなり左ポストのすぐ内側におさまる。東京先制(実は石川がシュートを放つ瞬間、加地が石川を追い越さんばかりの位置まで全力疾走でオーバーラップを掛けていたのだった。あんた何物だ)。

キックオフから、東京が怒涛の攻撃を見せる。
いきなり戸田が左サイドをえぐり、次に石川が右を切り裂く。今野・宮沢・栗澤の中盤プレスを軸に圧倒的にボールを支配する東京は新潟にまともな攻撃を許さない。
結局、新潟は一度もシュートを打てずじまいで失点を喫することになった。
東京ゴール裏は律儀に野澤へ感謝の意を表明。やっぱり礼儀正しくしないとねw。

  • 12分:エジミウソンが右サイドをえぐってクロス。土肥がキャッチ。新潟が初めてチャンスらしいチャンスを得た。
  • 14分:ファビーニョが一か八かの超ロングシュート。土肥が戻ってピッチに叩き落とす。新潟初シュート。
  • 15分:宮沢が左サイドやや高めの位置から右へ美しいサイドチェンジ(ため息)。石川が受けてクロス(DFに引っ掛かる)。
  • 22分:再び宮沢が右サイドへ美しいサイドチェンジ(ため息)。石川がえぐって入れたクロスを新潟DFがクリア。しかしこれが短く、今野の前へ。これを今野が人垣を抜けて低く抑えた素晴らしいシュートをネットに突き刺す。東京2点目。野澤からはブラインドになってたのかな?
  • 25分:金沢が栗澤とのワンツーからクロス。ルーカスが合わせるが野澤の正面。
  • 34分:栗澤がパスカットしてそのままドリブル、狙いすましたスルーパスをルーカスに送る。ルーカスがDFと競り合いながら触るが野澤がキャッチ。
  • 35分:海本幸が戸田を倒して1枚目のイエロー。
  • 40分:加地のアーリークロスを戸田が落としてルーカスが反転シュート。野澤の正面。


新潟はほとんどいいところ無く前半を終えた。かろうじて、上野にいいクサビが入った時に、チャンスらしき状況ができていた。
東京は完璧に近い出来。新潟のカウンターを浴びる場面もあったが、DF陣がピンチの芽を摘み取る。茂庭が効いている。


ハーフタイム直前から降り始めた雨がピッチを濡らす中、後半が始まる。
後半開始直後にいきなり宮沢のフィードに戸田が飛び込む(シュートは野澤がセーブ)。後半もいきなり先制パンチを入れる。
そのあとも栗澤のミドルシュートなどで東京は攻め立てる。
新潟もリズムよくパスを繋げる場面が出来はじめ、ファビーニョエジミウソンを軸にしてカウンター気味の攻撃を仕掛けるが、東京DF陣が耐える。
そのうちに、東京に追加点が入る。

  • 59分:新潟の攻撃を潰して素早く前線にロングフィード。石川がうまく青野と丸山の間に入り込んでこれを納め(マークも甘かった)、海本慶もマークにつく中、エリア内で粘ってルーカスに落とす。フリーで受けたルーカスががら空きのゴール左サイドではなく、あえて石川や海本慶や丸山が交錯しているゴール右へのシュートコースを選択、シュートは人垣を抜けてネットに突き刺さる。野澤の反応は間に合わず。東京3点目。
  • 63分:左サイドでボールを持ったルーカスがドリブルで持ち込む。本間(だったと思う)が対応しゴールライン際の角度のない位置へ。なんとその位置からルーカスが思いきってシュート。これがゴールマウスの左上をピンポイントで抜け、上側のゴールネットを突き上げた。このスーパーゴールで東京4点目。このとき、バックアッパーは皆が一瞬「何が起きたの?」という感じで静まりかえった。私も何なのか理解できなかった。

このあと、新潟は本間に代えアンデルソン・リマ、石川にやられまくって青色吐息の青野を下げて梅山(皆さん拍手)を投入する。そしてブラジル人トライアングルを中心としてせめて一矢報いようとするが・・・
78分、戸田によって果てしのない肉弾戦に引きずり込まれていた海本幸が、たまりかねて戸田を倒してしまい、2枚目イエローで退場(1枚目も戸田がらみ)。今日の戸田は鈴木師匠なみのDF殺しの技を見せた(余談だが、浦和系blogまで鈴木のことを「師匠」と書いていたのには笑った)。


この後、新潟は一か八かのミドルシュート攻撃を行うがいずれも枠を捉えられない。地団駄踏んで悔しがる山口。


一方の東京はもはやイケイケ状態。
ゴール裏はルーカスの4点目直後から「ダニィーロゥー」と新19番出場をヒロミにおねだり。
ヒロミは少し気を持たせてから82分、ダニーロを投入(石川がお役ご免)。
直後に新潟も元Mrグランパス、岡山を投入(上野out)。


このあと、スタジアムはダニーロ祭りに突入。シュートをはずしても「ダニィーロゥー」、無理なドリブルで自爆しても「ダニィーロゥー」、何もしなくても「ダニィーロゥー」(笑)。煽り系のナイスなコールがこの状況にぴったり。物見高いバックアッパーの住人たちも方々で唱和しはじめる始末である(笑)。
ロスタイムに入った頃、カスーラたちがメインアッパーから「眠らない街」を歌い出すが、お祭りにはかなわずw。
リーグ開幕にふさわしい祝祭状態の中、締めに三浦・浅利両ベテランを投入してめでたくゲームは終了。東京はこれで開幕戦6連勝だそうです(すごい)。


この日、東京のミッドフィールドは、今野が底、栗澤が右前、宮沢が左前の逆三角形という配置だった(宮沢がやや下がり気味だったので、左肩下がりの逆三角形のように見えた)。そして、この3人のポジション取りや役割の分担が絶妙だった。
先週のPSMの時は、ダニーロが守備では機能していなかったため、栗澤に負担がかかりすぎていた(右の攻撃的MFが左サイドの奥深くまでケアするのはやりすぎ)。それに比べ、今日は宮沢が左サイド、栗澤が右サイドを基本的なプレーエリアとし、どちらかに負担が集中することはなかった。
また、この二人は今野が前に出たときのスペースをしっかりとケアしていた。今野が栗澤をサポートするために前進すると宮沢が下がってきてスペースを埋める、というシーンが何回も見られた(もちろん、その逆に栗澤が下がることもある)。この日のフォーメーションを「今野・宮沢のダブルボランチ」と表現した人もいるが、それは宮沢の守りを意識した動きを見てのことだろう。
実際は、宮沢がトップ下的な位置でプレーしている時間が結構あったので(大学時代はトップ下だし)、選手たちの意識としては今野を底にした逆三角形のポジショニングを意識していたと思う。
このように、1ボランチフォーメーションで懸念された今野の両脇のスペースは、宮沢と栗澤が精力的にケアしていた。またラインを高く保っていたので、今野の両脇を突かれても加地なり金沢が素早く出てきて対応していた。それに多くの時間帯でボールを支配して主導権を保っていたため、大きな問題は発生しなかった。

ダブルボランチで横並びになっている時は、宮沢は左利き、今野も攻め上がる時に左に寄っていく癖があって、プレーエリアが重なることが多かった。しかし、この二人を縦並びにして、基本的には宮沢が前でプレーすることになって、役割が整理された。
もともと中盤と名のつくところならありとあらゆるところに顔を出し仕事をこなす栗澤、本職はボランチだが大学時代はトップ下の宮沢、ボール奪取が本領だが攻撃力もなかなかのものがある今野、この3人で構成するミッドフィールドが攻守両面で機能し、東京のエンジンとなっていた。


攻撃面では、前線と連動して前からプレスをかけ(ルーカスがアマラオ並みに走り回っていた)、ボールを奪うなり素早く石川・戸田に展開し彼らのスピードを生かしてサイドを突く、というサッカーが実行できていた。
そして石川がミスを見逃さずに先制点を奪い、やや落ち着いてきた時間帯に今野がすかさず追加点を取ることによって、試合の流れを決定づけた。


加地のオーバーラップが少なかったのは、ケリーがいったんタメを作ってから攻めるという形から、栗澤あるいは宮沢が早いタイミングでサイドを使う、という形に変わったからだろう(上がる時間がない)。
宮沢の好調には目を見張った。キックの精度を取り戻したようだ。そして石川へのサイドチェンジの美しいこと。大活躍だった石川だが、宮沢から飛んでくるサイドチェンジを意識してか、ポジション取りと動き出しのタイミングが良くなったような気がする。


栗澤は攻守両面にわたって非常にクレバーなプレーぶりを見せていた(まあ、2年目みたいなもんだし)。パス、ラン、ドリブルというプレーの選択が実に的確で、しかも技術が高かった。後半は「持ちすぎ君」になっていたが(加地も使ってあげようねw)、まあ、何をしても許される状況になったので一ついいところを見せてやろうと思ったのでしょうね。


ダニーロは、やる気こそ感じられたが、周囲とかみ合っていない様が明らかだった。まだまだ時間が必要な感じである。


DFラインは相変わらず安定していた。ジャーンは相変わらずの安定感を誇っているし、茂庭も効いていた。ラインが高く保てていたのは彼の働きによるところが大きいのでは。ただし、茂庭はまだ感覚が戻りきっていないか、クリアがゴールラインを割ったり、相手にプレゼントパスを贈ったりと、久々の茂庭劇場になる場面もあった。


一方、新潟は終始圧倒され、ほとんどいいところなく終わった。中盤3人は、ファビーニョ:守備は知りません、本間:東京の速さにオロオロ、山口:孤軍奮闘も多勢に無勢、という感じで前半は東京に圧倒され、全くボールを持てなかった。このため、エジミウソン鈴木慎吾という両サイドの大駒にいいボールが渡ることはなかった。鈴木慎吾など、石川に蹂躙されっぱなしの右サイドをケアするため、下がって守備をしている時間が多かった。また中盤でタメが作れないので、海本幸が自慢の攻撃力を発揮できる機会は少なかった。
DFラインは東京のサイドアタックを止められなかった。右の海本幸は既に述べたとおりだし、石川とマッチアップした左SB青野は悲惨な状況に陥っていた。抜かれるのが怖い→間合いを詰められない→かえって石川に好きなようにされる、という負の循環に陥り、石川にボールを足元に収め、前を向くスペースを与えてしまっていた。


後半は東京のプレスに慣れてきたのか、中盤でパスを交換して攻撃を組み立てられるようになってきたが、東京DF陣を崩し切れず、苦し紛れのミドルシュートを放つしかなかった。アンデルソン・リマは可能性を感じさせるプレーをみせたが、あの状況で投入されても何もできないだろう(岡山も同様)。


新潟は東京と(数字表記では)同じフォーメーションを選択した。大型補強を行ったとはいえ、マッチアップする選手の質を東京と比べれば、上野・ファビーニョエジミウソン鈴木慎吾などの攻撃陣はともかく、中盤やDFラインでは明らかに劣勢で、日の丸先生(反町さん)がどういう策でそれを補うのか注目していた。しかし、序盤から東京に押し込まれ、野澤のミスから先制点を献上し、主導権を取られたことによって、後手後手にまわり、ついに劣勢を挽回できなかった。日の丸先生の鏡に映った物、それは残酷なまでの戦力差だったに違いない。
もっとも若いのに(私より年上だけどw)策士なあの御仁、このまま手をこまねいているとは思えないけど。


ところで、次節で対戦する広島も4-3-3フォーメーションなんですね(あくまで表記の上ではね)。小野さんの鏡にはなにが映るのだろうか?


追記:
東京のスタメンには、関東大学リーグ出身選手が、戸田(筑波)、宮沢(中央)、栗澤(流経)、金沢(国士舘)の4人もいたんですね。あの西が丘で、あののんびりした雰囲気の中、休日の昼下がりにささやかな楽しみをくれた選手たちがトップリーグの舞台に立っているとは、なんだかうれしい(金沢の学生時代は知りませんが;)。