J1第10節 FC東京 0 - 2 鹿島アントラーズ(観戦14試合目)

日時:2005年5月4日16:00キックオフ
会場:味の素スタジアム
観衆:40300人
主審:太田

orz...
気を取り直して観戦記執筆。


連休中、人気チーム同士の対戦、そしてお天気も良しとなれば千客万来というわけで、ものすごーく人が多い。いつもと同じくキックオフ1時間前にスタジアムに着いたのだが、なんとU席中央はすでに上のほうまで埋まっているのだった。いつものど真ん中からちょっとホーム寄りに場所を移して潜り込む。売店も長蛇の列なので、比較的空いているゴール裏の売店まで行って食糧とビールを購入。戦闘準備を整えているところで、早くもゴール裏からコールが始まった。バックアッパーから見ていると、ジャンプしている人の数がいつもより1ブロック分ぐらい多いし、こりゃ、みんな気合い入ってるな、と頼もしく思った。
こんな盛り上がりは、そう、あのナビスコ決勝以来じゃないのかな。


東京のスタメン。

      近藤
  栗澤  馬場   石川
   宮沢   今野
 迫井 茂庭 ジャーン 加地
      土肥

サブは、塩田、増嶋、浅利、小林、ダニーロ
4-3-3というよりは、今野・宮沢のダブルボランチに見えた。トップ下に馬場、栗澤が左サイド寄りのポジション取り。
1トップは最後のFW(orz)近藤祐介
もう戦力うんぬんより選手の数自体が足りなくなって来ているが、おかげで?コバが控えに入っているのはちょっと嬉しかったりする。


鹿島のスタメン。

    鈴木  興梠
  本山      増田
   小笠原  青木
 石川竜 大岩 岩政 アリ
      曽ヶ端

サブは杉山、内田、本田、阿部、田代。
こちらもケガ人やら警告累積が多いらしく、深井やアレックスミネイロやフェルナンド、FWに抜擢されて活躍していたという野沢もいない。
ところで新井場はどこへいったのだ(やっぱりケガかね)。というわけで小笠原がボランチに入り、興梠・増田という鵬翔コンビが攻撃陣に入っている。


5月らしい、陽差しは強いがさわやかな風の中、試合が始まる。序盤は東京が猛攻を仕掛ける。

  • 1分、ナオが挨拶代わりのミドルシュート
  • 2分、祐介が左サイドで勝負を仕掛け、DF2人を抜いてエリア内に切れ込むがドリブルが長くなったところを曽ヶ端に押さえられる。
  • 3分、宮沢が右サイドのFKを直接狙う。押さえた弾道の素晴らしいキックはしかしゴール枠の角を直撃。惜しい。
  • 7分、栗澤がキープしたところをアリに倒され、FKゲット。ゴール左25mのところから石川ナオが直接狙うが左にそれる。
  • 8分、宮沢が中盤左サイドから一気にサイドチェンジ。これを受けた石川ナオがドリブルで切れ込んでシュートするがキーパー正面。
  • 13分、上がってきた迫井からのスルーパスに祐介が走り込むが追いつけず。

石川ナオがクロスを上げられる状況にもかかわらず積極的にシュートを打ってくる。近藤祐介がいい動きを見せ、裏に出されるボールにその馬力を生かして走り込む。馬場・栗澤(適宜ポジションを入れ替えてましたね)が起点をつくって近藤・石川がシュートを狙うパターンが多い。石川はクロスよりシュートを選択し、とにかく先取点を取ろうという姿勢が見える。他の選手も同様で、なんと前半のクロスらしいクロスは加地の1本だけ。
東京の勢いの前に鹿島はたじたじで、ファウルで止めるシーンが多くなる。当然、宮沢の出番が多くなり、惜しいフリーキックもあった。この時間帯、鹿島は鈴木めがけて苦し紛れのロングボールを入れるほかはほとんど攻め手がなかったが、東京の攻撃が強引すぎたきらいもあり、結局、得点ならず。
15分以降は東京の運動量が落ち始め、試合が落ち着き始める。


そして、スローペースになると鹿島が中盤でパスを回し始める。こんなときの鹿さんは要注意なのだが・・・

  • 17分、オーバーラップした石川竜からのクロスがファーサイドの興梠へドンピシャリ。興梠がダイレクトで放ったヘディングシュートはクロスバーを直撃し跳ね返りは真下に近い角度(80°ぐらいかなw)で落ちる。これがなぜか詰めていた本山にピッタリと合い、鹿島が先制。
  • 29分、宮沢のFKに祐介が振り向きざま、というよりDFを背負って後ろ向いたまま右足だけ振り抜いてシュート、わずかにゴール左に外れる。
  • 35分、加地がボールを奪ってそのまま上がり、ミドルシュートを打つが曽ヶ端キャッチ。
  • 41分、鹿島は右サイドで得たスローインから増田がキープ、ジャーンに加えて茂庭が引きつけられたことでゴール前に生じた小さなギャップに浮き球でパスを送る。これにタイミング良く飛び出した興梠がボレーで合わせる(加地のカバーリングは間に合わず)。シュートはバーを直撃したが、なぜか本山の真正面にこぼれる。これを本山が落ち着いて決めて鹿島2点目。
  • ロスタイムは1分、ここで祐介の落としから加地がシュートするが曽ヶ端キャッチ

先取点を奪われたあと、東京の調子が上がらない。全体に運動量が落ちている。石川ナオの右サイド攻撃は対面の石川竜に阻止される。石川竜はナオのプレーの癖を研究していたのか、どうも勝負に出るときの間合いが読まれていたようだった。そして、石川竜がディレイをかけている間に小笠原・本山がナオを囲んで潰していた。こうしてナオが封じられたが、代わりに加地が中に切れ込んでいいシュートを放っていたが、手詰まり感は否めなかった。
鹿島も、鈴木が東京DF陣にたびたび肉弾戦を挑んでいたが起点を作るまでには至らず、こちらもまったりムードだったのだが、このチームはスローペースから蜂の一刺しがあるのよね・・・

  • 47分、右サイドで得たFKから、栗澤がカーブをかけたボールをゴール前に送るがクリアされる。
  • 49分、鹿島のカウンター。左サイドを突破した石川竜がマイナスのグラウンダーを中央の鈴木に送るが、なんと師匠が打ちそこね。
  • 50分、馬場out、ダニーロin。馬場は序盤の15分を除いてはいいプレーを見せられず、かえって軽いプレーを狙われてカウンターの起点にされてしまっていた。
  • 53分、たびたび標的にされていた東京の左サイドに鹿島右SBアリがドリブルで仕掛ける。これに焦った迫井がアリを後ろから押し倒してしまい、PK宣告。

キッカーは師匠。そしてPKは大きく枠をはずす。

このPKが決まっていれば事実上の死刑宣告だったのだが、土肥と茂庭がしつこく世間話?をしたのが効いたのか、師匠がいい人だったのか、インファイトが実は邪魔をしたのか知らないが、とにかく外してくれた。スタジアムの沸き方は本日一番。そして、これをきっかけに、東京が勢いづく。

  • 55分、近藤が左サイドで強引なドリブルを仕掛け、FKゲット。ところがこのFKをダニーロがどっかん(このアホ)。
  • 56分、またしても近藤が倒される。小笠原が警告。東京はここで迫井を下げて小林を投入。小林が2列目の左サイドに入り、栗澤がポジションを下げる。宮沢が左SBへ移る。
  • 59分、ダニーロがドリブルで仕掛け、マークを振り切ってカットインしシュートを放つ。グラウンダーは左ポストを直撃して跳ね返り、クリアされる。
  • 65分、ダニーロがドリブルで突っかけると見せかけて左サイドに展開、最後は栗澤からのスルーパスに小林がシュートを打つが曽ヶ端キャッチ。
  • 69分、ダニーロのスルーパスに近藤が走り込むが、アリとの競り合いになりファウルを取られる。
  • 71分、鹿島は足を痛めた興梠を下げ、本田投入。逃げ切り態勢に入る。

鹿島が引いたせいもあるが、東京が猛攻をかける。
ダニーロプレースキックが全くだめだった。というか、完全に宮沢の邪魔をしていた。2,3回技術拙劣意図不明のCK・FKを蹴った後、さすがに周囲の殺気立った雰囲気に気付いたか、蹴ろうとしなくなったのには笑った。ただし、流れの中では近藤・小林とサテライト仕込み?のコンビネーションをみせてそれなりに働いた時間帯もあった。持続しないのは相変わらずだが・・・。コバは自分で突破を狙うよりも周囲を生かすようなプレーを心がけているように見えた。
鹿島は完全に自陣に引きこもり、逃げ切り態勢。本田がダニーロをマークする。

  • 75分、東京は足を痙った近藤を下げ、増嶋が入る。ジャーンがトップに上がる。
  • 79分、石川ナオがドリブル突破。アリがオブストラクションで止め、警告。
  • 82分、鹿島のカウンターで鈴木隆行がエリア内で倒れるが、シミュレーションを取られ、警告。
  • 84分、左SBに入った宮沢のフィードにジャーンが飛び込むが、シュート打てず。
  • 89分、鹿島はアリから阿部敏之にスイッチ。

東京はジャーンを上げてパワープレーに打って出る。加地・宮沢の両SBも上がり目のポジションを取り、実質2バックのスクランブル態勢で攻める。宮沢からジャーンに向けてアーリークロスが入っていたが、肝心のジャーンが大岩・岩政との競り合いに勝てず。かえって攻撃が単調になってしまい、鹿島に守りやすくしてしまった。何度か鹿島のカウンターを浴びたが、増嶋が必死で防ぐ。鈴木師匠とのガチンコ勝負に勝ってたし。でも・・・
ロスタイムは4分。結局、ゴールは割れなかった。


首位にいるチームと連敗の泥沼の中にあるチームとの差を見せつけられた試合だった。
たしかにツキはなかった。
よりにもよって、バーに当たった跳ね返りが、なぜ2回とも本山の目の前にこぼれるのだ?
どちらも、跳ね返る角度が少し違えば、得点にはなり得なかった(とくに1点目は)。
それに比べて、宮沢のフリーキックも、ダニーロのシュートも、いずれも枠に阻まれた。
あと数cm、ボールの当たり所が違っていたら、勝敗は逆転していたかもしれない。


でも、それでも、今は鹿島のほうが強いと思う。
彼らも怪我人続出でベストメンバーではなかった。しかし、そんな中でも結果を出せるかたちを持っていた。
お得意の、ゆったりしたパスを回しながらマークのずれを誘い出し、その一瞬を逃さずに突くというイメージを全員が共有していた。
前線からの守備を怠らず、最後まで集中力を切らさない守備。大岩・岩政両CBの強さ。そして肝心なところは警告をもらってもファウルで止めるいやらしさ。
つまるところ、勝負どころを知り尽くし、チャンスをものにする(あるいは相手のチャンスを潰す)のに手段を選ばないチームなのだ。それも控えの選手に至るまで(今日に限って言えば興梠のセンスによるところも大だろうが)。


かたや、東京も自分たちのかたちは持っている。そして、たとえ泥沼の中にいようと、それを貫こうとしている。
この試合でも序盤から高い位置でボールを奪い、奪った勢いのまま速い攻撃に繋げようとする意志が表れていた。
ただ、そこから得点に結びつける何かが足りなかった。クロスの精度それ自体も、ニアを狙うかファーを狙うかそれともタイミングをずらして2列目から飛び込む選手に合わせるのかという駆け引き、出し手と受け手とのタイミングの合わせ方に工夫が足りなかった。
祐介は奮闘したが、持ち味の突進をシュートに結びつけられなかった。馬場はあいかわらず消えてしまう時間があった。石川はクロスにしろ、シュートにしろ、勢いはあっても強引にすぎるきらいがあった。ダニーロはDFラインの前をブラブラして、短いパス交換とドリブルで裏を狙うという持ち味が少し出始めていた。だがいかんせん、機能しない時間が多すぎた。
DFラインは、やはり金沢がいないことによるひずみを解消し切れていない。サイドに振られた時のポジショニング・カバーリングが不安定だった。特に不慣れなSBをやらざるを得なかった迫井が狙われていた。1失点目は迫井のマークの甘さ自体を突かれた(石川竜のクロスも素晴らしかったが)。2点目は左サイドで増田にボールを持たれ、カバーに入った茂庭が空けたポジションを、ジャーンと加地がスライドしながら埋めていくときに生じた隙を使われた。
あとは、やはり連敗中という影響が出ているのか、失点したあとに多くの選手が不安を感じながらプレーし続けていたように見えた。そして、その不安を打ち払うだけの力を持っていなかった。序盤の攻勢で得点できなかったときの次の一手を、別のパターンで攻撃を再開するという引き出しを持っていなかった(これは金沢の不在も大きいと思う)。


つまり、僕らのチームは、まだまだ力が足りないのだ。
額面上の戦力は去年より確実に落ちている。ケリーが去ったことで攻撃のヴァリエーションが乏しくなり、阿部が去ったことで形勢を逆転する力が失われた。フロントは、その埋め合わせに即戦力を補強することはせず、いま居る選手たちの成長に望みを託した。
その中で今野や加地は別格の存在感を示していたが、多くの選手は、いまも発展途上なのだ。


終了の笛が鳴ったあと、多くの人が、本当に多くの人が、スタジアムに残り、敗れた選手たちに拍手を送っていた。
ゴール裏はYou'll never walk aloneを唄った。
このわずかな時間だけかもしれないけれど、確実に、おそらく万を越える人たちが同じ気持ちを共有していたと思う。
つまり、そういうことなのだ。


私の後ろのほうで、「何で負けたやつらに拍手するんだよ」とわめいていた奴がいたが、そんなフットボールのなんたるかを知らん奴はさっさと帰れ。
勝利の果実だけが欲しいなら、この日の対戦相手か、数と金に物をいわせる奴らか、それとも自称オサレな国際貿易都市のチームにでも付和雷同してくれ。


このとき残った人たちは自分の道を選び取った人たちなのだ。
あの不器用かつ融通の効かない選手たちと一緒に、階段を一つ一つ登っていこうと決めた人たちなのだ(まあ、みんな口は悪いしお調子者だけどね)。
だから、いつも唄っているように、今はまさに土砂降りの中だけど、顔を上げて歩いていこう。
決して一人ではないのだから。明けない夜はないのだから。そしていつかは輝く夜明けが待っているのだから。