仙台カップ国際ユースサッカー 第1日第2試合 U-18日本代表 4 - 5 U-18ブラジル代表(観戦66試合目)

日時:2006年8月31日(金)19:00キックオフ
会場:ユアテックスタジアム仙台仙台スタジアム)
観衆:5524人
主審:東城、副審:浅野、山田、第4審:堀江
得点:アレシャンドレ(ブラジル、9分)、アレシャンドレ(ブラジル、16分)、ウィリアン(ブラジル、31分)、アレシャンドレ(ブラジル、35分)、平繁(日本、44分*前半ロスタイム)、イゴール(ブラジル、51分)、長沢(日本、54分)、森村(日本、73分)、前野(日本、87分)
警告:平繁(日本、52分)
退場:なし

毎年恒例らしい仙台カップ国際ユースサッカー。U-18年代の各国代表(日本、海外2チーム)+東北代表の計4チームで争われる。今年の海外チームはブラジル代表とフランス代表。東北代表は清水さんが監督なのね。


観戦したのは第1日の第2試合。第1試合が13:30キックオフ、第2試合が19:00キックオフのナイターとインターバルが長い、何を考えて作ったのかよくわからないタイムスケジュール。所用で第1試合には間に合わないため、第2試合のみの観戦となった。ちなみに今後のスケジュールは、9月1日が休養日(あれこれ行事があるらしいけど)で、第2日は9月2日、第3日が9月3日と連戦になる。


仙台に着いたのは3時半頃。♪牛タンでしょでしょ、たとえアメリカ産であっても〜♪ などと「涼宮ハルヒの憂鬱」オープニングテーマの替え歌を口ずさみながら(なんだかなあ)、いの一番に牛タン屋に入り、塩味噌ミックス1.5人前+とろろ麦飯おかわりビール付きを堪能する(ちなみに私の入った店はニュージーランド産の牛タンを使用していた)。満腹になってミッションの90%を終了(をい)、仙台駅前をしばらくぶらついたあと、仙スタ改めユアスタに向かった。


8月終わりのユアスタ、気温もこの時期にしては涼しいので締まった試合を期待したのだが、なんと大乱戦になってしまった。原因は、日本代表が準備不足で、ブラジル代表がコンディション不良だったことによる。

日本代表のスターティングラインナップおよびサブスティテューション。

    長沢  平繁
  遠藤       乾
    遊佐  倉田
 前野 池田  當間 桜井
      清水

SUB:長谷川、田代、高垣、園田、中野、森村、金沢
選手交代:乾→高垣(26分)、倉田→森村(58分)、桜井→田代(69分)、高垣→園田(76分)

以下は選手一覧。

GK 1 長谷川徹名古屋グランパスU18)
GK12 清水圭介滝川第二高)
DF 2 桜井翔仁(大分トリニータU18)
DF 3 田代真一横浜FMユース)
DF 4 池田達哉(G大阪ユース)
DF 6 園田清次(ルーテル学院高)
DF13 高垣淳司(初芝橋本高)
DF15 當間建文東海大第五高)
DF16 前野貴徳愛媛FCユース)
MF 5 遊佐克美(cap.)(サンフレッチェ広島ユース)
MF 7 倉田秋G大阪ユース)
MF11 遠藤康(塩釜FCユース)
MF14 乾貴士野洲高)
MF18 中野遼太郎FC東京U18)
FW 8 森村昴太(FC東京U18)
FW 9 長沢駿清水エスパルスユース)
FW10 平繁龍一サンフレッチェ広島ユース)
FW17 金沢亮(金光大阪高)
監督 吉武博文

全員が1988年生まれ。前回のワールドユースU-17に日本が出場できなかったため(小澤や吉本がいた布ジャパンはアジア予選を突破できなかった)、この年齢の選手は強化の谷間に入ってしまった。代表結成自体が約1年半ぶりということで、いわば急造チーム。連携がどうかなあと心配したがやっぱりだめだったorz。


ブラジル代表のスターティングラインナップおよびサブスティテューション。

     イゴール   アレシャンドレ

  ラモン            ウィリアン

     ロベルト    デニウソン

ヴィニシウス シジネイ エルナンド レイリエルトン

        ルイス・カルロス 

SUB:ジョアン・カルロス、クリスチアーノ、タッシオ、カルロス・アルベルト、ウェンデル、ラファエル
選手交代:ヴィニシウス→ダニーロ(58分)、レイリエルトン→タッシオ(70分)、デニウソン→ウェンデル(76分)、アレシャンドレ→カルロス・アルベルト(80分)

ブラジルの選手一覧。

GK 1 ルイス・カルロス(インテルナシオナル)
GK12 ジョアン・カルロスアトレチコ・パラナエンセ)
DF 2 レイリエルトン(ゴイアス)
DF 3 シジネイ(Cap.)(インテルナシオナル)
DF 4 クリスチアーノ(コリンチャンス)
DF 6 ヴィニシウス(パルメイラス)
DF13 エルナンド(ゴイアス)
DF16 ラモン(インテルナシオナル)
MF 5 ロベルト(アトレチコ・パラナエンセ)
MF 7 デニウソンサンパウロ)
MF 8 ダニーロバイーア)
MF10 ウィリアン(コリンチャンス)
MF14 タッシオ(ヴィットーリア)
MF15 カルロス・アルベルト(パルメイラス)
FW 9 イゴールコリンチャンス)
FW11 アレシャンドレインテルナシオナル)
FW17 ウェンデル(ゴイアス)
FW18 ラファエル(フィゲイレンセ)
監督 ネルソン・ロドリゲス

こちらは、昨年行われたワールドユースU-17の準優勝メンバーが中心というすごそうなチーム(実際、前半はすごかった)。所属クラブをみると、ケリーのいたアトレチコ・パラナエンセとか、他にはパルメイラスとかコリンチャンスとか、そうそうたる名前がならんでいる。名前といえば、アレシャンドレとかクリスチアーノとかダニーロ(!)なんてどこかのチームで聞いた名前が並んでいるが見た感じ「あの人」では無かった(あたりまえだ)。

さて試合、試合っと。
ファーストプレイ、ブラジル陣内深いところで日本の右スローイン。これをロングスローで直接ゴール前に入れる。ボールは味方に渡らなかったが、クリアしようとしたブラジルDFがなんとハンドを犯し開始0分にしてPK。「え〜???」という雰囲気の中でFW平繁がPKを蹴るが、GKにコースを読まれストップされる(コース自体も甘かった)。
直後の1分、ブラジル10番ウィリアンがマーカーを振り切って中央をドリブルで持ち上がり、左サイドを駆け上がってきたSBヴィニシウス(ローマ皇帝みたいな名前だな)にドンピシャリのパス。ヴィニシウスはやや遠目からクロスなのかシュートなのか、早いボールをゴール前に入れるがこれはバーの上。得点には結びつかなかったものの、スピード・フィジカル・パスのコースと速さ・トラップの正確性など、早くも別物感を漂わすブラジル代表。


先制はブラジル。8分、左ショートコーナーをラモンがキープ、DFを引きつけたところでCKを蹴ったウィリアンに戻し、クロス。これをファーサイドでFWアレシャンドレが甘いマークを難なくかわしてヘディングシュートを決めた。


先制したブラジルは明らかにカウンター狙いの体勢に移る。この狙いが大当たり。
15分、ハーフウェイ付近からMFロベルトがロングボールを蹴ると、反応したFWアレシャンドレが一発でウラを取り、GKをかわしてシュート、ゴール。続いて30分、カウンターでウィリアンがドリブルで前進、いったんFWイゴールに預けて前進、リターンを貰って難なくラインの裏をとりエリア右へ侵入、やや角度のない位置だったがGKの位置をよく見て逆サイドネットに突き刺した。さらに34分、混戦でこぼれたボールを今度はDFヴィニシウスがロングボール一発、アレシャンドレがあっさり抜け出し、追いすがるDFを振り切ってシュートを決めた。


こうもきれいにカウンターを決められた原因は、まずブラジル代表の正確無比なロングボールが挙げられる。2点目と4点目、いずれもハーフウェイ付近からの長いボール一発でFWに抜け出されたのだが、ボールの速さといいコースといい、裏へ抜け出すアレシャンドレがスピードに乗って受けるのにちょうどいいものだった。おまけに蹴るタイミングが唐突。普通、前線に長いボールを入れるときは、ルックアップして、出す相手を見定めて、えいやっとばかりにバックスイングしてから蹴る、というプロセスを、少なくとも日本の選手の場合は踏む。要するに、蹴る前に何らかの前兆がある。ところが、ブラジルは、2点目も4点目も、マーカーがわずかに間合いを開けた隙を逃さすワンステップで蹴ってきた。つまり、マーカーと駆け引きをしながらもFWの動き出しが視野に入っているってこと。もうひとつ言えば、FWもそれがわかっていて、ロングボールが来るタイミングで裏へ走っているってことでもある。
カウンターを成功させたブラジルの技はスーパーだが、日本の守備が甘かったのも事実だった。とくにDF陣がアレシャンドレのマークを離してしまったのはいくら急造チームにせよ論外だよ(しっかりしてくれ)。


一方の日本。それなりに攻めようとはしていた。倉田秋遠藤康がさかんに2列目からドリブルで仕掛けていくが、対人に強いブラジルのダブルボランチに難なく、という感じで止められる。それならば、とルックアップしてパスコースを探してもすぐに運動量豊富なブラジルの中盤に囲い込まれて潰される。ただし、ブラジルDF陣は少々甘さがあり、日本のFWが少し引いたときにマークが浮く傾向があった。このため、ボールを「迎え」に来たFWにクサビを入れ、2列目が素早くサポート、サイドに展開できた場合だけチャンスになり、そこからクロスを入れるなり横から切れ込むなりしてペナルティエリアまでボールを運ぶことができていた。
それでもゴール前の守りは堅く、なかなかゴールが奪えない。前半はこのままかなと思っていたが、ロスタイムに日本が1点を返す。左スローインを受けた高垣から倉田、倉田がドリブルで突っかけてマークを引きつけオーバーラップした高垣にリターン、高垣がグラウンダーの折り返しを入れると、中央で受けた平繁がDFを背にしながらもコースを見つけて反転シュート、これがDFの間を抜けてゴール左に決まった。

さあ、後半は反撃だ、と思った矢先の51分。日本DFがボールの処理にもたついたところをFWアレシャンドレがすかさずかっさらい、ドリブルで突っかけてからここまでゴールの無かった相方のFWイゴールにプレゼントパス。イゴールが難なく流しこんでブラジル5点目。もうだめぽorzとだれもが思っただろう。
しかし54分、日本はカウンターの機会を得る。倉田が素早くドリブルで持ち出して4対3の状況、倉田はFW長沢にパスを送る。長沢はシュート体勢に入るがタイミングが一瞬遅れシュートはDFにブロックされ、左CK。これがゴール中央やや左寄りにいた長沢の頭にドンピシャリ。ヘディングシュートが決まってスコアは2対5。


この後、ブラジルはパスを回して日本を翻弄、完全に押し込むが追加点は奪えず。勢いに乗って攻めてくるはずの日本に対し、何でカウンター狙いの省エネ戦法を続けなかったのかは謎。トドメを差そうとしたのか、パスで崩すというプレー自体をやりたかったのか。後半、日本の守備が少しは改善されていて、ブラジルFWに対するマークの意識は明確だったし、ラインの駆け引きをしてFWの動きを牽制するような場面もあったので、カウンターがやりにくかったのかもしれない。
ただ、ブラジルの攻勢はせいぜい10分ほどしか続かなかった。この間、10番ウィリアンの強ミドルがわずかに枠を外れたり、FWアレシャンドレのカーブをかけた芸術的なシュートがポストを叩いたりと惜しい場面はあったがゴールは割れず。そして後半20分すぎ、ブラジルの足が止まる。


まず、中盤のプレスが機能しなくなり、日本の選手が容易に前を向けるようになる。また、鉄壁と思えたデニウソン・ロベルトのダブルボランチもバテてきて、ちょこまかとしたドリブルで仕掛ける日本選手を止められなくなってきた。70分には右サイドを駆け上がった當間がクロス、これを受けた前野がゴール正面でシュートするがDFに当たり、その跳ね返りを今度は遊佐がシュート。これもDFに当たるがCKになり、そこから平繁が頭で合わせてわずかにゴール左、と日本に勢いが出てくる。
日本3点目は73分。中央をドリブルで攻め上がった遠藤康がエリア手前やや右にいた森村にパス。ゴール前にいたにもかかわらず森村のマークは浮いていた。森村はしっかりボールを落ち着かせてから狙いすましたミドルを放つとこれがゴール右上に決まる。途中出場で左サイドを中心に動いていた森村だが、ここまではゲームに入りきっていない感があり、ボールに触る回数も少なかった。しかし、ここで日本をさらに勢いづかせる値千金のゴール。うれしかったね。


残り時間は約15分、日本はさらに攻勢を強める。完全に足が止まったブラジルは、次々と交代選手を投入して立て直そうとするが流れは変わらない。それでも日本が完全に前がかりになっているためカウンターが極めて有効な状況になっていて、75分にアレシャンドレ、77分にダニーロ、78分にイゴール、84分にカルロス・アルベルトといずれも決定的、つーかそれってドフリーじゃん、というシュートチャンスがあったがことごとく枠を捉えられない。疲労の影響なのか、やっぱり勢いなのかはよくわからないが。


そして87分、日本は左サイドからのビルドアップでブラジル陣内に攻め込み、森村がドリブルで仕掛けて折り返し。これがファーサイドに抜け(中央で平繁が触ってたかもしれない)、ボールを受けた前野が右45度からシュートし4点目。
こうなるとがぜん盛り上がるスタジアム。前半から、サッカー少年たちが散発的にニッポンコールをしていたが、ロスタイムに入るころには観衆全体が手拍子で合わせはじめる。ただし、帰りの新幹線が心配だった私は出口方面に移動しながらの観戦になった。ロスタイム自体は5分近くあったとおもうが、ブラジルが時間稼ぎに出たせいもあり日本の勢いも削がれ、結局は追いつけないまま試合終了。


準備不足vsコンディション不良で思わぬ乱戦となった試合だが、エンターテイメントとしては十分面白く、仙台まで来た元はとれたと思う。森村のゴールも見られたし(中野遼太郎が出場しなかったのは残念)。森村君、左SBから左MF、今年はついにFWと見るたびにポジションが上がっていく妙な選手。この試合では途中出場で周りとうまく噛み合っていない感があったが、スピードもテクニックも兼ね備えた選手だけに、トップに上げてくれないかな、と思う。それにしても、日本DF陣の脆さがちょっと気になった。やはり、日本のストロングポイントはMFの敏捷性だ、ということを納得した次第。