ナビスコカップ準決勝 FC東京 4v - 3 緑 (観戦80試合目)

この試合、緑は前半寝ていた。後半は東京が寝ていた。延長は緑が目を覚ます前に東京が決めた。そんな試合だった。


台風のおかげで延期となっていた東京ダービーがようやく開催。急遽、午後半休を取った不良サラリーマンも味スタに駆けつける(職場は千葉湾岸なので定時退社してもキックオフに間に合わないのよね)。


平日開催とあってスタンドはちょっと寂しかったが、東京のゴール裏はやる気満々。試合前からコンコースを歌いながら練り歩いていた(さすがに緑のゴール裏まではいけなかったらしい。そのときビールとカップラーメンを持っていたので突いていけなかったのよね)。スタンドでも試合前から「べるでーだけには負けられな〜い」といつもの歌。青赤の小旗が多数翻り、ビジュアルも雰囲気満点である。「アンチベルディスタストップ69(駐禁マークの中に69ね)」横断幕はシミスポ規制をくらったようだけど。一方の緑も、数はすくないがそれなりにやる気はあるみたい。こっちのダービーソングをもじって、「漏れだけには耐えられな〜い、緊急車両の力、見せてやろうぜ」なんて横断幕あり。なんじゃこりゃ。


東京は4-5-1フォーメーション。GKはカップ戦要員塩田、DFは金沢−茂庭−ジャーン−藤山、ボランチに今野・三浦、左MF馬場、右が石川、トップ下ケリー、ワントップがルーカス。控えは遠藤、前田、宮沢、阿部、鈴木規。加地と土肥がオマーン行き、戸田が怪我。
緑は3-5-2。GK高木、3バックがウベタ−戸川−米山、中盤の底に林、左WBが相馬、右が山卓、OMFに小林大と慶、2トップが桜井と平本。控えにはウーゴ、平野、飯尾といった面々。三浦アツがオマーン行きで欠場。
ちなみに主審は柏原氏。「え”〜」(みんな)。


東京は序盤から高い位置でプレスをかけ続け、緑を圧倒。両ボランチやケリーのところでボールを奪い、素早くサイド攻撃を仕掛けることができていた。
そして開始6分に早くも先制点を上げる。立て続けに左CKを2本獲得、その2本目だった。馬場の蹴ったボールがファーサイドへ、ルーカスがヘッドで折り返したボールをジャーンが押し込んだ。高木はファーサイド側に流れたCKにつられてぼんやりと(としか見えない)前へ出てしまっていたため、二アサイドへのシュートに対応できなかった。意外な展開に沸くスタジアム。


緑も反撃に出るが東京のプレスに手を焼き、しばしばカウンターの機会を提供してしまう。12分にはカウンターに移ろうとするケリーを林が倒してしまい1枚目のイエローを受ける。
それでも単純にパスをつなぐだけなら日本1,2を争うチームであり、そのテクニックはさすが。3-5-2フォーメーションと書いたが実際はかなり流動的であり、中盤の底でボールを散らす林はともかく、その他のMFは、FWがサイドに流れたり引いてボールを受けたりして空いたスペースにあがっていく。とくに左サイドの相馬が積極的にオーバーラップしてチャンスメイクを試みる。しかしその他のMF陣の攻めあがりにダイナミックさが欠けており、サイドをえぐっても中の人数が足りず、厚みのある攻撃ができない。かえって相馬の上がったスペースをスタメン復帰のスピードスター、石川に蹂躙される。


東京の2点目はその石川の突破から。右サイドをドリブルで持ち上がり、それから中へ切れ込んでDFをひきつけたところでペナルティアーク左隅付近でフリーになっていたルーカスへグラウンダーのクロス、これをルーカスが落ち着いて右足で蹴りこみあっさり2点目。緑のDFが完全に「石川ウォッチャー」と化していた。


いよいよ攻めるしかなくなった緑だが、それは東京の思う壺。高い位置でのプレスを継続しカウンターを狙う。22分にはケリーと林でこぼれ球を競り合い、これに勝ったケリーが抜け出そうとしたところを林が手で止めてしまいイエロー2枚目で早くも退場。状況からみてイエロー必至のプレーだっただけに、林は抗議もせずにピッチを去る。


試合はいよいよ東京ペース。林のいなくなったDFライン前のスペースを突いて、面白いようにグラウンダーのサイドチェンジが決まり、両サイドを揺さぶる。スペースのある状態になればやはり石川が活きはじめ、39分には右サイドをドリブルでえぐって折り返し、こちらもいいプレイを見せていた馬場が中へ入ってきてミドルを放つがクロスバーを直撃する。42分には同じく石川がドリブル突破、エンドライン付近までえぐってクロス、これを走りこんできたルーカスが頭で豪快に決めて3点目。これで試合は決したかに思われた。


ところが相手が強いなら強いなりに、弱いなら弱いなりに、合わせてしまうのが今年の東京の悪癖である。
後半開始から開き直ってシンプルに縦にボールを入れ始めた緑に戸惑い、47分にははやくも平本のエリア内での折り返しを、迫力満点に突撃してきた山卓に頭で合わせられて1点を返され、きな臭い雰囲気が漂い始める。


それでもチャンスはあり、48分には東京の左CKにジャーンが合わせようとしたときに反則があったらしく、エリア内での間接FKを得た。その位置がなんとゴールライン上!。当然、緑は全員がライン上に並んで文字通りの壁を作る。こりゃ、コースはゴールの上、しかもスピードボールを叩き込むしかないよ、と思っていたらそのとおりのねらいだったがバーの上。


この後、東京は55分に三浦out、宮沢in。
一方、緑は56分に戸川に代えてウーゴ、64分に桜井に代え平野を投入し反撃に移る。フォーメーションは戸川をはずしたことで4バック、というより2バックになり、平本が1トップ気味で左右に流れてスペースメーク、空いたところに平野や小林大やウーゴが入り込んでくる、という攻撃になる。交代で入ってきた二人の運動量が多く、これに触発されて緑の選手たちの出入りが激しくなる。パスは縦に、シンプルに、選手が動きながらつながる。東京ディフェンスはマークをつかみきれない。とくにウーゴの運動量が際立っていて攻守に大活躍、東京が中盤でボールを持ってもほとんどウーゴにつぶされていたような印象をもってしまった。それにしても流れが悪い。対応が後手後手になってしまっている。こんなときにチームを立て直せる選手がいないんだよね。それができるであろう文丈がベンチに下がってしまったのは結果論だが痛い。それにしても一人少ないどころか、一人多いんじゃないかとさえ感じさせる緑の運動量はすごい。


中盤でほとんどボールをもてなくなった東京は、74分にいつもの阿部投入(石川out)で攻撃をてこ入れする。その阿部は入ってくるなり勝負に出てCKゲット。宮沢の蹴った左CKをヘッドでたたきつけるが、これが叩きすぎ(笑)で、ボールは大きくバウンドしバーを越える。これが決まっていれば緑の息の根が止まったのだが。


圧倒的に攻めながらなかなかシュートに結び付けられなかった緑だが、直後の77分にとうとう小林大悟の折り返しを平本が決めて1点差に追いつく(展開が早すぎてどうやってフィニッシュまで持っていったのか覚えていない)。さらに78分、今度は平本のつないだボールを小林大悟が決めてとうとう同点に追いつく。このとき、直前の競り合いでウーゴが倒れており、笛が吹かれるかとでも思ったのか東京デイフェンス陣が一瞬フリーズしており、その隙に大悟にフリーで打たせてしまった。


これはやばいと、めっきり運動量の落ちた馬場を下げて87分に鈴木規を投入する。が、見せ場を作れず。ロスタイムは5分。かなりやばい雰囲気の中、後半は尋常ではない切れっぷりを見せていた平本&大悟コンビによってこの試合最大の危機が訪れる。大悟のフィードに平本が反応しうまくラインの裏へ抜け出す。ディフェンスの対応は間に合わず、平本は左足シュート。塩田は動けず万事休すかと思ったのだがこれがクロスバー直撃。悔しがる平本。そして後半終了。


そして延長開始直後、阿部の突進でこの試合13本目(手元集計デス)の左コーナーキック。蹴るのは宮沢。なんか、うずうずとするような、まだ弛緩が抜けきらず試合に入りきっていないような、変な雰囲気の中で宮沢の蹴ったボールがファーサイドに伸びる。緑の選手がぞろぞろとファーサイドに移動。キーパー高木もつられて何歩か前にでる。そこにルーカスが待っていた。頭一つ抜け出たルーカスがヘッダーを放つとこれがゴール右側に飛んでいく。ポジションを変えていた高木は対応できない。そしてネットが揺れる。この日の合計7ゴール目、初めて東京側のゴールに吸い込まれたシュートだった。ハットトリックVゴールで決めたルーカスがなにやら叫びながらゴール裏に向かって駆けていく。そのゴール裏では雪崩発生(笑)。みんな、大丈夫だったかな。


予想外に息詰まる試合になってしまったが、とにかく決勝に行くことができた。緑の息の根を止められず、とんでもない試合にしてしまったのはやっぱり実力。強い相手にも互角に戦えるポテンシャルを持っている反面、試合運びのうまさやここ一番の集中力という面ではまだまだなのがわれらがクラブの現実なのだろう。一方,緑は前半の3点、Vゴールの場面と集中力の切れた隙がそのまま失点につながってしまった。とくに1点目とVゴールのとき、高木がふらふらとポジションを変えてしまったのが致命傷になってしまった。


Vゴールが決まったあと、平本はユニホームで顔を覆って座り込み、しばらく立ち上がれなかった。その姿を見ていて、東京ブギウギに乗り損なってしまった。そういえば緑の選手たち、平本、小林大&慶、山卓、米山、相馬、けっこういいやつらばかりではないか(林は個人的に嫌いだけどw)。一人足りない中で3点返すなんでいくら相手がウブ(笑)でもそうそうできることではない。彼らが相手なら、来年もスリリングな東京ダービーが味わえるな、と思った。もちろん相手選手たちへの敬意を持って。