2004 J2 第44節 湘南ベルマーレ 2 - 0 水戸ホーリーホック(観戦100試合目)
スカパーで山形vs福岡を見ようと思っていたのだが、あまりに天気がいいので平塚まで出かける事にした。
今シーズン2回目にして最後の平塚(上田監督就任初試合のフロンターレ戦を観戦)。
メインスタンドの向こうには白い雪を戴いた富士山。バックスタンドに降り注ぐ晩秋の日差し。文字通りの小春日和で、Tシャツ姿の人もちらほら見える。ビールがうまい。
最終戦ということで、ベルマーレのボランティアスタッフへの感謝状贈呈が行われた。そのあと、バックスタンドの方を向いての社長挨拶。「戦わない選手やスタッフは、来シーズンの終わりまでにはクラブにいないだろう」とこの2年の成績不振を受けてか鬼気迫る調子のものだった。
湘南のスタメン。
柿本
佐野
坂本 高田
吉野 中町
北出 浮氣 戸田 加藤
鈴木正
メンバーが大きく変わっている。不動のFWだった高田ヤスが右MFにコンバート、坂本も左サイドへ。スピードを生かしてスーパーサブ的な役割を果たしていた加藤大志がなんと右SBをやっている。よくみるとDFラインに本職がいないような気がするのだが。もうパラシオスいないしね。
柿本がトップに張ってポスト役、佐野裕哉が少し下がり目でチャンスメークを担う。
控えは、小林、村山、池田学、鈴木良和、そしてアマラオ。
水戸のスタメン。
松浦
伊藤 関
北島 マルキーニョ
永井
磯崎 大和田 柴小屋 小椋
武田
サブは鏑木、矢畑、秦、吉田、小林。
こちらは4バック3ボランチでがっちり守りを固めたフォーメーション。
前は3トップとも、1トップ+左右ウイングとも言えそうな並び。
先日の大宮戦いらい、ちょっと注目している松浦がスタメン。
午後2時キックオフ。
しばらくは攻める湘南、守る水戸という展開が続く。
この時間帯は、湘南が攻めてこそいたものの、むしろ水戸の「守ってカウンター」というゲームプランがはまりかけた。湘南は水戸の人数をかけた守りの前に決定機がつくれない。いわば「攻めさせられている」という状態。水戸はボールを奪って素早く両ウイングに展開し、カウンター気味の攻撃を意図する。が、ここで立ちふさがるのがテクニックの壁。肝心の展開パスの精度が低く、チャンスを未然に潰してしまうシーンが目立った。
しだいにエンジンが掛かってきたのか、湘南のパスがつながりだす。
- 13分、坂本のクロスに柿本がヘディングシュート。対応したDFから頭一つ抜け出しており、決定的だったがわずかにバーの上。
- 15分、くさびを受けた佐野が素早くスルーパスを送る。柿本がダッシュ、シュートするがGKがセーブ。
- 17分、佐野が右オープンスペースの高田ヤスへパス、高田がフリーで放ったシュートは枠を捉えられず。
- 19分、前線でボールをキープしようとした佐野が水戸CB大和田に倒される(大和田は警告)。佐野のFKは柴小屋がクリア。
- 22分、水戸の反撃。セットプレーからの展開で湘南のクリアボールを拾って2時攻撃。永井が右サイドから入れたクロスに柴小屋が頭で合わせるが、シュートはバーを越える。
- 24分、湘南がワンタッチパスを繋ぎ、最後はオーバーラップした右SB加藤がクロスを入れる。佐野がトラップするが、水戸DFの寄せが早く、クリアされる。
水戸の守り方に慣れたのか、湘南がリズミカルにパスをつなぐ。佐野裕哉が少し引いてきてボールを受け、攻撃の起点となっていた。加えて高田・坂本の両サイドがタイミングよくサイドのスペースへ飛び出し、クロスを入れる。
しかし、湘南はゴールが奪えないでいるうちにしだいにペースダウン、試合は膠着状態に陥る。水戸が粘り強く運動量を惜しまずに守るため、湘南はゴール前にボールを運べなくなる。一方の水戸も、カウンターのチャンスはあるものの、あいかわらずパスの精度が低く、シュートまで持ち込めない。
35分をすぎた頃、水戸がやや疲れてきたのか、ボールホルダーに対するチェックが遅れがちになる。湘南が落ち着いてパスを回しだす。
ロスタイムはほとんどなく、両チーム無得点で前半が終了する(訂正、訂正^^;)。
後半開始直前、スタジアムDJが「おわりよければすべてよし!決めてくれ〜」とほとんどやけくそ気味に叫ぶ(吹き出してしまったw)。
- 46分、水戸FW松浦が倒されて得たゴール前25mのFKを関が蹴る。クリアボールを拾って再び放り込むが、オフサイドの判定。
- 48分、続いて水戸のチャンス。マルキーニョのスルーパスを受けた関がドリブルシュート(GKキャッチ)。湘南の浅いラインの裏を突く。
- 49分、湘南右SB加藤のアーリークロスを逆サイドから入ってきた坂本がダイレクトボレー。コントロールしきれず、ボールはバーの上。
- 54分、水戸右ウイング関のクロスに柴小屋が飛び込むがシュート打てず。
- 56分、湘南右サイド、加藤とのコンビネーションで抜け出した高田がサイドをえぐってクロスを入れるが直接ラインを割る。
- 57分、ロビングに対するオフサイド崩れで関が湘南DFラインの裏に抜ける。飛び出したGKをかわして持ち込むが、トラップをミスして少しもたつく間に湘南DFが帰陣し、シュートが打てない。
- 59分、加藤が裏のスペースに送ったパスを走り込んだ高田が受ける。しかし中途半端なパスを柴小屋にカットされる。しかし、佐野裕哉がすかさず柴小屋にプレッシャーをかけてボールを奪い返し、左に寄って来た坂本にパス、坂本の強烈なミドルを水戸GK武田がおさめきれず、胸で弾いたボールはゴール右に収まる。湘南先制。
この時間帯はやや湘南ペース。湘南は全体に押し上げが効いており、先制点も高い位置でのプレスから得られた。積極的に崩しを試みる湘南右サイドだが、いかんせん二人ともコンバート組の悲しさでちょっと空回り気味。水戸の人数をかけた守備に手こずったが、アグレッシブに仕掛けていた坂本が思い切り良くシュートを決めた。
水戸は伊藤・関の両ウイングを起点とした攻撃を試みるが、いかんせんパスの精度が低い。FW松浦は完全に押さえられている。
リードされた水戸は前がかりで反撃にでる。これに対し、湘南はカウンターを仕掛ける。試合に流れが出始める。
- 59分、失点直後の水戸の反撃。左サイドを伊藤がドリブルで前進、カットインしてDFをかわしシュートを放つがGK正面。
- 60分、水戸の選手交替。北島→吉田
- 63分、湘南のカウンター。ロングボールを柿本が落とし、そこに走り込んだ佐野がミドルシュートを放つ。シュートは枠を捉えていたが、GK武田がはじき出し、CK。
直後、水戸はマルキーニョを下げて小林を投入、2トップに移行。
- 69分、坂本が倒されて得たFKを佐野が蹴る。これに柿本が頭で合わせるがGKがキャッチ。
- 70分、水戸の選手交替。疲れが見える伊藤に代えて秦。
水戸は立て続けにフレッシュな選手を入れて、反撃を続ける。フォーメーションはこんな感じ↓。
小林 松浦
秦 吉田 関
永井
磯崎 大和田 柴小屋 小椋
武田
エース格の小林と松浦の2トップに秦・関の2ウイング、プラス吉田が高めの位置取りで攻撃に絡む。永井が中盤の底で展開役を担う。前の人数が増え、パスコースの選択肢が多くなったため水戸のパスがつながりだす。
湘南も攻め込んできた水戸のボールを奪って、カウンター気味の攻撃をかける。
攻守の入れ代わりがめまぐるしくなり、ゴール近くまでボールを運ぶシーンが増えてきて、試合が面白くなる。
水戸は右サイドで起点となっていた関に加えて、左に張った秦が、対面する湘南右SB加藤の中途半端なポジション取りをついて攻撃に参加する。
- 72分、水戸の決定機。関からのサイドチェンジを、左サイド裏に入り込んだ秦が受け、中央に待ち構える松浦にクロスを送る。松浦がこの日初となるヘディングシュートを放つが、枠を捉えられない。
- 73分、秦が左サイドを突破、クロスを送るがGKがキャッチ。
- 76分、佐野裕哉のバックパスをカットした関がドリブルで前進、倒されてFKをゲット。これを自分で蹴るがクリアされる。
- 78分、ロングボールを受けた柿本がいったんキープして左サイドを上がってきた坂本にパス。坂本のクロスは水戸DFに弾き返されるが、クリアボールを拾った坂本はドリブルでエリア内に侵入、倒されてPKとなる。坂本が自分で落ち着いて決めて湘南が2点目を得る。
その後、湘南は81分に、左SB北出→村山と選手交替(関を押さえるため?)。引き気味になって逃げ切り体勢に移る。水戸の運動量が増えたせいもあり、湘南陣内で試合が展開する事が多くなる。湘南は安全第一にクリアを繰り返すが、前線がキープできず、水戸の二次攻撃を浴びる。そこで、
85分、柿本→アマラオ(キターーーーーーーー!)
その後、湘南はコーナーフラッグ付近でキープを繰り返し、時間を稼ぐ。アマラオはボールタッチそのものが少なかったが、積極的にディフェンスにも戻り、一回はしっかりクリアボールをキープして、時間稼ぎに貢献。
ロスタイムに関がフリーでシュートを放つ(ゴール右にそれる)が、水戸の反撃もこれまで。2分が過ぎ去り、タイムアップ。湘南が今季最終戦を飾った。
湘南は終始優勢にゲームを進めた。本職がいないDFラインも、CB二人がボランチと連携してしっかり水戸のFW陣を押さえていた。個人的にはこの試合のMVPだと思っている佐野は攻撃の起点となるだけではなく、守備面でも貢献していた。
ちょっと残念だったのは右サイドの二人。
加藤は守るとき、前へ出て潰すべきか、後ろのスペースをケアすべきかの判断が悪く、結局は中途半端なポジション取りで、後ろのスペースを使われてしまう場面が目立っていた。一対一でもあっさりと抜かれてしまうことが多かった。また、攻撃時には積極性がいまいちで、自慢の高速ドリブルを披露する場面がほとんどなかった。以前はスーパーサブ的に使われて突貫小僧に徹していれば良かったのが、一転してバランスを要求されるポジションにコンバートされてしまい、戸惑っている様が見えた。機を捉えた鋭いオーバーラップ(川上直子!)を期待されての右SB起用だと思うので、とにかく判断力を磨く事が今後の課題か。
右MFの高田は、サイドをえぐるという意識が強いが、もっと中に入ってシュートを試みても良かったと思う。左MFの坂本はたびたび中央に入り込んで佐野、あるいは柿本と絡んでチャンスをつくろうとしていたのだから。
来季に向けた補強ポイントとしては、パラシオスの抜けたDFラインで核となれる選手だろう。攻撃面ではそれなりに能力のある選手がいるので、少なくとも今の順位で甘んじているチームではないと思う。
水戸はとにかく今の戦力で出来る事はやっている。ただ選手のテクニックの問題で、とくに展開パスにミスが多く、チャンスを自分で潰してしまっていた。両ウイングの関や伊藤はそれなりに突破力のある選手なので、うまくサイドチェンジが通せればチャンスの数が増えると思うのだが。
今日の試合に限って言えば、大宮戦でわりといい動きをしていた(前節は得点をあげた)松浦が完全に押さえられたことが誤算だった。加えて、一番テクニックのある永井が中盤の底に下がっていたため、前目の位置でパスを捌ける選手がいなくかった影響が大きかった。見た限り、永井は中盤の底から長いパスを出すというタイプではなさそうなので、結局、マルキーニョ(いいのか悪いのかよくわからない出来)や北島をいったん経由しないと両ウイングに展開できず、またここのつなぎの精度が低いのでどうしてもチャンスに結びつく回数が少なくなる。このあたりに水戸の台所事情の苦しさがうかがえる。
しっかり守ることは出来ているので、せめてもう一人正確なつなぎのできる選手がいれば、展開が開けるのだが・・・
富士山がシルエットになりかかるころ、選手・監督がシーズン最後の挨拶を行った。
J1を目指すという上田監督のスピーチ。ミニサッカーボールをスタンドに投げ入れつつ、場内を一周する選手たち。その列の中に、ほとんど最後尾の位置にアマラオがいた。かわらぬ飄々とした雰囲気で、スタンドに手を振りつつ歩み去る彼の姿をじっと眺める。後ろには湘南の青緑と、東京の青赤を繋ぎ合わせたマフラーを持ったおじさんが、バックスタンド最上段のフェンスにもたれ、ピッチを見つめていた。
もう一度、彼がピッチに立つ姿を見る事が、できるのだろうか(あ、埼玉があるか)。
平塚駅から東京行きの列車に乗るころには、富士山が完全にシルエットになっていた。