全日本大学選抜 3 - 0 ミドルセックス・ワンダラーズ(観戦19試合目)

日時:2005年5月18日19:00キックオフ
会場:西が丘サッカー場
観衆:963人
審判:大岩 副審:田中、智方、第4審判:山中
得点:赤嶺(24分)、藤本(48分)、高橋(78分)


ミドルセックス・ワンダラーズ。
この名を聞いたことがある人は、高校選手権の開会式・表彰式を見た人か、古くからのサッカーファンかのどちらかだろう。私は前者で、開会式のカップ返還のとき、「ミドルセックス・ワンダラーズ杯」という耳慣れないカップの名前を聞いたのが最初だった。
もっとも、その名が全英アマチュア選抜チームだと知ったのは、今回が初めてだった。なんでも、1906年に英国ミドルセックス州にできた対外遠征用チームにルーツを持つそうで、現在の名前になり全英アマチュア選抜による対外遠征チームとして位置づけられたのは明治44年(1911年)とか。で、1906年から数えると創立100周年になり、その記念大会として日本に遠征してくることになったらしい。ちなみに来日は今回で8回目、その昔は弱かりし頃の日本代表とまじめにガチンコの試合をしてくれる貴重な対戦相手だったらしい。
全英選抜なのにあいかわらず「ミドルセックス」を名乗るところは、伝統を大切にするというか、古いものを捨てられないというか、なんとも英国らしい。


今日の東京は、午後からときおり小雨がぱらつく。雨中の観戦になるかもと心配していたら、夕方には雲の切れ間が出来て、素晴らしい夕焼けになった。ただし風が強い。時折、西が丘名物・隣のグラウンドから巻き上げられる土埃が観客席を覆う。


主審は大岩真由美さん。Lリーグで見かける方ですね。


大学選抜スターティングメンバー。

    赤嶺    小松
   (駒澤) (関西学院

  藤本          辻尾
 (筑波) 衛藤  池上 (中央)
     (福岡)(仙台)

 小宮山  秋葉  登尾   徳永
(順天堂)(筑波)(福岡)(早稲田)
        赤星
       (福岡)

8月にトルコ・イズミルユニバーシアードを戦う大学選抜。監督は福岡大の乾さん。
強化指定の池上(キャプテン)、オファーを出している赤嶺・徳永も名を連ねており、青赤な人にはうれしいスタメンである。東京の工作員が「赤嶺・池上魅せろ東京魂 徳永はわかってる」とさっそく新歓?横断幕を張り出していた(早く来てくれ〜)。


一方のミドルセックス・ワンダラーズ(以下MSW)スタメン。

========10スミス=====9エバンス======
===============================
====3ベイカー==========7スタッダート==
===============================
======8サウザム======6デイ==========
===============================
==11クラーク=5ライリー=4シンクレラ=2ワード==
===============================
=============1ラルフ==============

当然の事ながら、これだけ見てもさっぱりわからない。各選手の所属クラブをパンフレットに書いておいてくれると良かったのに。でも、アマチュアということはきっとフットボールリーグでも下のほうのディビジョンか、その下のノンリーグ所属のはずで、出身クラブを見てもやはり分からないに違いない。でも、興味あるな。


本日発見した有名人は、岡野さん、川淵カピタン、たぶん大熊さん、水原恵理嬢。そのほか、いかにも関係者風の人たちがぞろぞろいる。アサヒマンらしき人も見かけた。


日本は風上のエンドを選択してキックオフ。
当然といえば当然だが、ユニバー2連覇中、実質的にプロ予備軍である大学選抜がテクニック・戦術面では上であり、優位に試合を進めた。
アンカー的な役割を与えられた池上が中盤の底で攻撃の目を摘み、ボールを散らす。先日のサテライトとは違って、判断に迷いがなく、地味ながら的確なプレーで大学選抜の守りに安定感をもたらしていた。
徳永は、このメンバーの中では明らかに別物感を醸しだし、攻守にわたってチームの中心となっていた。10分すぎに接触プレーで頭をかち割られた(大げさなw)ものの、白い帽子を被って(包帯です)復活。結局90分フル出場を果たした。守りでは素晴らしいスピードを披露してMSWの仕掛ける裏への放り込みやドリブル・ランをことごとく迎撃し、攻撃ではオーバーラップこそ少なかったが、正確かつ多彩なロングフィードでビルドアップの起点となっていた。
大学選抜の攻めは、徳永のキックや池上の散らしから、右サイドを辻尾のスピードでかき回し、左サイドでは藤本・小宮山が正確なクロスを入れてくる。このサイドからの崩しに連携して、2トップと攻撃的な役割を与えられたボランチ・衛藤が得点を狙う。


MSWはエースFWである10番スミスにボールを集め、それに左MFの3番ベイカーやCMF8番サウザムが絡んでシュートを狙っていくが、秋葉・登尾のCBコンビの強さと徳永の高速カバーリングによって阻まれる。さすがに体格ではMSWが勝っているのだが、大学選抜の選手たちはフィジカル勝負を挑まれても果敢に戦っていた(まあ、結構苦戦はしていたが)。


大学選抜の先取点は25分、MSWのオフサイドで得たFKを早いリスタートで右SB徳永にパスが出る。徳永はハーフウェイより後ろから左サイドに正確なサイドチェンジを送る。これを受けた藤本がワントラップしてゴール前にアーリークロスを送ると、これに飛び込んだ赤嶺が見事なジャンピングヘッドでネットを揺らす。MSWに守備を整える時間を与えない、ダイレクトプレーのお手本のようなみごとなゴールだった(どこかの青赤なチームは見習ってください)。


以下、前半の試合経過。

  • 4分、MSW:左ロングスローのクリアボールを拾った8サウザムがミドルシュート。ふかす。
  • 6分、MSW:10スミスがドリブルで左サイドに侵入、スローインを得る。ゴール前にロングスローを放り込まれてガタイのいい選手たちに頭で繋がれるが、なんとかクリア。
  • 7分、大学選抜:辻尾がスピードを生かして右サイドを突破、クロスを入れるがクリアされる。
  • 8分、大学選抜:裏に出されたボールに辻尾が追いつくが、プレー選択を迷っている間に詰まる。いったん後ろに戻してオーバーラップした左SB小宮山が鋭いクロスを入れるが、クリアされる。
  • 10分、大学選抜:左から今度は藤本が鋭いクロスを入れる。キーパーラルフがCKに逃れる。
  • 15分、MSW:右SBワードのオーバーラップで起点をつくり、最後はFWエバンスがシュートを放つがGKがキャッチ。
  • 18分、MSW:左MFベイカーがドリブルシュート、GKガキャッチ。
  • 22分、大学選抜:左SB小宮山がオーバーラップしてクロスを上げる。2列目から飛び込んだ藤本がこれに合わせてシュートを打つが、バーの上。
  • 24分、大学選抜:早いリスタートから徳永が左サイドの藤本に大きなサイドチェンジを送る。藤本のアーリークロスに赤嶺が飛び込んでヘディングシュート、これが決まって大学選抜が先制。
  • 26分、MSW:スミスが左サイドにドリブルで侵入、戻したボールを左MFベイカーがシュートするがゴール左に外れる。
  • 27分、大学選抜:スルーパスに反応してラインの裏へすり抜けようとした赤嶺?を倒してCBライリーが警告。ゴール左寄り25mからの直接FKを藤本が蹴る。カーブのかかったボールにFW小松が合わせようとするがわずかに届かず。
  • 39分、MSW:FWエバンスが倒されて得たFKを左MFベイカーが直接狙うが、壁に阻まれる。
  • 43分、MSW:スミスが左サイドからカットイン。倒されて39分とほぼ同じ位置でFKを得る。ベイカーがゴール前に山なりのボールを送るが、オフサイド判定。

前半だけで藤本が3本、小宮山が5本のクロスを入れており(どちらも恐ろしく正確)、やはり左サイドからの攻撃が主となっていた。藤本がキープ→小宮山がオーバーラップしてクロス→その間に中に入りこんだ藤本がシュートを狙う、というのが一つのパターンになっていて、呼吸がぴったり。右からのクロスは辻尾・徳永が1本ずつで、徳永はオーバーラップを自重してロングフィード主体のプレーをしていた。辻尾は右MFとしてのプレーがどこかぎこちないように思えた。大学選抜のシュートは8本。内訳は赤嶺2,小松3,藤本2、衛藤1。
MSWはテクニックとフィジカルを併せ持つFWスミスを起点とする攻撃が主。ドリブルの切れ味はなかなかのものでフィジカルも強く、右SBが徳永でなければかなり手を焼いたと思う。シュート数はチーム全体で4本だった(いずれも手元集計なので公式記録とはたぶん違っている)。


後半、大学選抜は3バックに変更する。なんと6人をハーフタイムに交代した。以下は後半開始時のフォーメーション。

    高橋(c)   矢島
   (福岡)  (早稲田)
       兵藤
     (早稲田)
 藤本         徳永
(筑波)       (早稲田)
    伊野波  本田
    (阪南)(法政)
  小宮山  秋葉  登尾
 (順天堂)(筑波)(福岡)
       藤井
     (東京農大


MSWも後半開始時に2人を交代、DFラインを組み替えてくる。

=====10===9=====
================
===3========7===
================
=====8====6=====
================
==14==5==18==11==
================
=======1========

14フラインを左SBに、18ドゥクー(でかい)をCBに入れてきた。

3バックにしてトップ下を置いたフォーメーションになると、大学選抜の攻撃スタイルが変わる。
前半はサイドからのクロス攻撃を主としていたのが、トップ下に入った兵藤のテクニックを軸にして、前線の選手たちが短いパスのコンビネーションやドリブルで崩していく形になる。兵藤はDFラインと中盤の間のスペースを上手く使ってやりたい放題。2得点に絡む大活躍だった。
リードされたMSWは積極的な攻めに出る。FWに加えて中盤の選手までどんどん前に出てくる果敢な攻撃を見せたが崩しに工夫がなく、強引なドリブルで突破を仕掛けたところを潰されていた。かえって、中盤とDFとの間に大きなスペースが空き、兵藤の活躍を許すことになった。MSWは、10番スミスが63分に退くと流れの中ではチャンスを作れなくなる。しかし体格では勝るため、セットプレーの迫力はなかなかのものがあった。


以下、後半の展開。

  • 46分、大学選抜:兵藤がドリブルで突っかけたところを倒され、FKを得る。場所はゴール正面、ペナルティアークから3mほどのところ。藤本が左足で、兵藤が右足で蹴るポジションに入る。兵藤がフェイントを入れて、蹴ったのは藤本。左足から放たれたFKはカーブを描いて5枚の壁を巻き、ゴール左隅に収まる(得点時間は48分)。美技。
  • 50分、MSW:7スタッドハートから16ジョーンズに交代。ジョーンズがCMFに入り、8デイが右MFに移る。
  • 54分、MSW:FWの交代。9エバンス→15ウェアハム。
  • 56分、大学選抜:徳永が入れたグラウンダのクロスがDFの間をすり抜けていくが、誰も触れず。
  • 61分、大学選抜:徳永がロングボールを入れ、FW高橋を走らせるがGKが飛び出してキャッチ。
  • 63分、大学選抜:藤本がお役ご免。代わりに菊池(駒澤)がIN。MSW:10スミス→17サンダース。
  • 66分、MSW:CB登尾のクリアミスをMFデイが拾ってシュート。危なかったが枠を外す。
  • 67分、大学選抜:徳永がミドルシュートを狙う。
  • 77分、大学選抜:FW矢島から原一樹に交代。
  • 79分、大学選抜:兵藤の左CKをニアに入ったFW高橋がヘディングシュート。これが決まって3点目。
  • 80分、大学選抜:原のスルーパスから高橋がシュートを放つが外れ。
  • 82分、MSW:40m級のFKを日本ゴール前に入れていく。これが風にのってあわや、という場面。
  • 87分、MSW:ゴールキックが味方DFに当たってあわやオウンゴール
  • 89分、大学選抜:兵藤のラストパスから高橋がシュートするがポスト直撃。


そしてタイムアップ。MSWの選手たちは、日本のファウル基準を厳しいと感じるのか判定にいらつく場面も見られたが、最後はやはり親善試合らしく笑顔で終えた。最後に歌を歌っていたのかな(なんとなくラグビー的)。スタンドにユニホームを投げ入れたりもしていた。


選手退場口には東京工作員?たちが集まり、徳永に「早く来てね〜」と声をかけていた。
徳永は、加地と違ってオーバーラップを繰り返すタイプではないが、守備力とフィードの正確さは現時点でも加地を上回っている。大学選抜の中でも別格の選手であると感じた。
赤嶺は持ち味を発揮した。駒澤大の試合ではそんなにシュート数が多いわけではないが(マークが厳しいのよ)、決めるべき時にしっかり決められる選手で、近藤祐介にとっては強力ライバル出現だろう。
池上は、仙台大学では攻撃参加も見せているらしいが、今日はアンカーとして堅実に守備をしていた。サテライトで見せた判断のもたつきは全く無かった(日曜は、周りとのコンビネーションも掴みきっていないようだったし)。プロのプレースピードに慣れれば、浅利社員に展開力をプラスしたような選手になるのではなかろうか。


というわけで、3人ともさっさと入社手続きを済ませなさい。


以上。