J1第27節 FC東京 2 - 2 サンフレッチェ広島(観戦79試合目)

日時:2005年10月15日(土)15:00キックオフ
会場:味の素スタジアム
観衆:20136人
天候:晴れのち曇り試合後雨
主審:砂川、副審:中井、木城、第4審:野田
得点:前田(広島、55分)、阿部吉(東京、76分)、佐藤寿(広島、82分)、馬場(東京、83分)
警告:ササ(東京、73分)

雨予報はどこへやら、薄日が差し、蒸し暑い土曜の午後。代表戦による中断があけ、残留をかけた残り8試合の戦いが始まる。SOCIOデーということでゲートで選手のお出迎えがあり、待機列で待っていれば握手ぐらいできたのだが、なにしろこの日は朝から絶食状態でのスタジアム入り(単に寝坊しただけですだ)。おまけに蒸し暑くで汗をかき、喉もカラカラときては、とても選手がくるまで待てず、さっさと入場してフライドチキンをむさぼり食いながらビールをがぶ飲みする。ちなみにバックゲートには家本氏から有給休暇をもらった戸田がきていたようだ。


東京のスタメン。

   阿部   ルーカス
      馬場
   宮沢     栗澤
      梶山
 藤山 茂庭 ジャーン 今野
      土肥

SUB:遠藤、金沢、浅利、規郎、ササ
選手交代:栗澤→規郎(56分)、宮沢→金沢(66分)、ルーカス→ササ(71分)
加地が右足首に加え左太股痛で欠場。これを受けて今野が右SBに入る。中盤は戸田が前節の赤紙で出場停止になったため、馬場をトップ下に据えたダイヤモンド構成で、右に栗澤、左に宮沢、そして底に梶山を配置した。そして2トップはルーカスと待ってましたの阿部ちゃん先発。控えには回復途上の金沢と、守備固め要員なのか久々の浅利、そして規郎とササ。
本来は左が得意な今野が右SB、代表戦の疲れが懸念される茂庭が強行先発、なんと梶山を底に据えた中盤と、守りの面ではなにかと不安材料の多い急造フォーメーションで試合に臨む。サイドバックの層の薄さがもろに噴出している格好である。鳴り物入り(でもないか)で加入した藤田はいったいどうしたの、と愚痴りたくもなる。結局、レギュラーの後に藤山あれど、藤山の後に藤山なし、ということらしい。こんなときは池上がいて欲しいけど、大学リーグがたけなわとあっては、得意の学徒動員も使えない。
中盤の構成も、肝心のアンカーポジションをつとめるのが梶山とあってはいざというとき中盤を支えきれるのか、不安が残る(この不安は、的中することになる)。
逆に攻撃面では、先の大宮戦ですばらしいパフォーマンスを示した馬場と、勝負する男・阿部の先発起用で非常にわくわくさせられる構成になっていた。


広島のスタメン

     寿人  前田
       大木
   茂原      李
      森崎和
 服部 小村  ジニーニョ 駒野
      下田

SUB:佐藤昭、西川、高柳、ガウボンジョルジーニョ
選手交代:下田→佐藤昭(59分)、大木→高柳(74分)、李→ガウボン(78分)
ベットが累積警告で出場停止。そのため、大木がトップ下に入り、スーパーサブとして使われていた前田が先発した。佐藤寿人と組むツートップはワンチャンスを確実に決める能力があり、はっきりいって怖い。リーグ最小失点を誇る守備組織も見所のひとつ。


前半開始。
広島は前線から積極的にプレスを掛け、高い位置でボールを奪って、裏を狙う佐藤寿人、前田、大木に合わせていく攻撃を狙っていた。詰まったら、森崎和が中盤の底から散らしてサイド攻撃を試行する。ラストパスやクロスに反応する佐藤寿人と前田の動きが秀逸で、一瞬たりとも気が抜けない。


スタメンにサイドアタッカーがいない東京は、中盤の底に位置した梶山からの広い展開と、馬場のチャンスメーク能力に期待する。

  • 3分、広島:中盤の底の森崎から右サイドの駒野へ大きな展開。駒野がそのままドリブルで前進、中へ折り返す。ニアに佐藤寿人、中央に大木、ファーに茂原が突っ込んできたが合わず、戻ってきた梶山がクリア。
  • 同3分、東京:梶山のクリアからカウンター。クリアを栗澤が拾い、前線中央に残っていた阿部へ。ターンした阿部は左サイドに上がってきたルーカスへすばやくはたく。ルーカスがカットインしてシュートを狙うが、ジニーニョにブロックされる。

広島は、駒野を使って右サイドからチャンスをつくる。この形は、この後、再三にわたって見せつけられることになる。東京は、長いボールに反応して阿部がDFラインの裏を狙う動きを見せ、チャンスをうかがう。カウンターからいったんチャンスをつくるが、広島守備陣の戻りが早く、決定的な形にならない。

  • 4分、広島:駒野のフィードを前田が受け、素早いターンでエリアに切り込むが東京DFが阻止、広島の右CK。CKはクリア。
  • 5分、東京:藤山が裏へフィード、阿部が反応して左サイドへ切り込み、中のルーカスへクロスを入れるが広島DFがクリア。そのまま上がってきた藤山がセカンドボールを拾い、最後は馬場がシュートするが枠を大きく外れる。
  • 9分、広島:大木の裏へ飛び出す動きに合わせて前田がロングフィード。大木がエリア内で受けて戻し、待ちかまえた寿人がフリーで狙うがふかす。
  • 12分、東京:左サイドを突こうとするが広島の堅実な守りの前に膠着状態。意を決した藤山がドリブルで仕掛け、なぜか止められずにスルスルと上がっていき、クロスを入れるがクリアされる。
  • 15分、広島:左サイドの茂原がピッチを横切る早いサイドチェンジを出すと、これを走りながら受けた駒野がFWの動きに合わせてアーリークロスを送る。クロスに対してニアに佐藤寿人、中央に前田が飛び込むが、ボールは佐藤寿人の頭を越えてしまい(ちっちゃいのね)、待ちかまえたジャーンがクリア。

広島はワンタッチでパスを回し、中と見せて外、外と見せて中、といった感じで東京守備陣を振り回し、機を見て鋭い飛び出しで裏を狙っていく佐藤寿人、前田、大木らを狙ってボールを入れていく。この時間帯から、東京の両サイドを攻略する形が出来ていく。東京の3ボランチが機能不全で、特に(広島から見た)左サイドで起点をつくられた場合に宮沢が中に絞りすぎてどうしても右サイドにスペースが出来てしまう。広島はここを突いて、一気に駒野へ展開しチャンスをつくるが、クロスが中の選手と合わない。一方、広島からみた左サイドでは、栗澤がスペースを埋めかつ後ろに控えた今野がその対人能力を発揮していたため、服部・茂原らの突破を許さなかった。
一方、東京は中盤でパスを回して広島を振り回し、機をみて前線の二人を生かしてゴールに迫ろうとする。たしかにルーカス・馬場・宮沢・栗澤・梶山といったメンツだとボールは回る。しかし広島の組織的守備網の前にパスコースを塞がれ、囲むようにプレスをかけられるためボールを戻さざるを得ない。中盤の底からの展開を期待された梶山も、佐藤寿人や大木が前線からプレッシャーをかけてくるためDFへバックパスを出す場面が多い。カウンターの状況でも、広島守備陣の早い寄せの前に攻撃をスローダウンさせられ、なかなか決定的な場面が作れない。広島の守りの前に東京の攻撃が行き詰まり、しだいに選手の動きが停滞して足元パスが多くなっていく。こんな中、馬場が二列目を大きく左右に動きまわってボールを引き出し、リズムを作り出そうとする。そう、ケリーのように。
そして、この試合で最初の決定機が訪れる。

  • 16分、東京:パスを回して機会をうかがう。足元パスが多い中、馬場が大きく動き回ってボールをさばき、リズムを作り出す。左サイドに下がってボールを受けたルーカスが馬場に預けて前進する。馬場がワントラップして前方スペースにスルーパス、そこへ流れた阿部が左足アウトサイドで流し、上がってきた宮沢が広島DFにカットされる寸前に足を伸ばしてディフェンスのギャップに走り込んできたルーカスの足元にボールを送り込む。ルーカスがチェックにきた小村をするりとかわし、コースが空いた瞬間にコントロールド・ショットを放つ。広島DFのカバーリングは間に合わず、キーパーの反応も遅れて決まったかと思ったが、無情にもシュートは右ポストを叩く。ぎゃぼー!!!(「のだめカンタービレ」風)。跳ね返りは広島DFがクリア、CKに逃れる。馬場の左CKはクリアされる。
  • 17分、広島:そのクリアボールからカウンター。前田が左サイドに走るが、茂庭がしっかりついて行きディレイをかける。進路をふさがれた前田はやむなく上がってきた駒野に預けるが、これに対しては戻ってきた今野が対応、しかしファウルを取られFK献上。この左サイドからのFKを李がニアサイドに入れ、広島の選手が頭に当てるが、ラインを割ってスローイン
  • 18分、東京:そのスローイン、前目からプレッシャーをかけてくる広島によって自陣右サイドで囲まれるが、うまくけり出してカウンターに移る。ルーカスを経由して阿部が右サイドへ走るが、戻ってきた駒野に止められ、いったん栗澤→宮沢と戻して大きく左前方にサイドチェンジを試みる。馬場が反応して左サイドに走り込むが、ボールはラインを割る。
  • 21分、広島:中盤、ルーズボールを奪って李がミドルシュート、土肥がはじき出して右CK。ショートコーナーでマークをはずした森崎和がゴール前の密集に低いクロスを入れていくが、東京がクリア。
  • 24分、東京:自陣内でサイドチェンジを受けた藤山がドリブルで持ち出し、30m以上あるのにロングシュートを放つ。皆の予想どおり(笑)、宇宙開発。これは仕様(^^;
  • 25分、広島:DFラインから右サイドへ展開、駒野がフリーでクロスを狙っていくが東京DFがブロック、右CK。前田の右CKがファーサイドまで抜け、待ちかまえた寿人がフリーでヘッドするがバーの上。危ない、危ない。
  • 27分、東京:左サイドに流れた阿部が遠い距離から狙っていくが、枠を大きく外れる。
  • 28分、東京:相手ファウルから早いリスタート。栗澤を経由して右サイドへ走り込む馬場へパス、馬場がクロスを入れていくがクリアされる。

東京の決定機。ルーカス→馬場→阿部→宮沢→ルーカスがシュート、と4人の選手が絡んでの中央突破は新しい形だった。中央突破は去年もやっていたけど、基本的にケリーとルーカスの二人だけでやってたしね。しっかし、なんであれが入らんかな。ぐぬ?。
このシュートを皮切りに試合が動き出し、しばらくは忙しい展開が続く。広島はすぐに守備組織を立て直し、東京のパスを回した攻撃に対抗する。
となれば、ここで藤山ですよ、奥さん!とばかりにオーバーラップからシュート、お約束どおりふかす。藤山の上がりは、「おずおず」というべきなのか、パスを出そうかドリブルしようかちょっと迷ってから、ええい、いっちゃえ!という感じなのだが、この煮えきらなさがちょうどいいフェイントになって捕まえにくいらしく、結局は「するする」とDFをかわしていく。
広島はあいかわらずがら空きの右サイドを使って攻め込み、CKを奪取すると工夫をこらしたセットプレーで東京守備陣をゆさぶる。25分の前田のCKはDFの間隙をねらったいやらしい弾道で、佐藤寿人がシュートをはずしてくれたのは幸運だった。まあ、ルーカスのシュートとおあいこだけどね。
この後、お互いに守りあって、しばらくは膠着状態が続く。


試合が再び動き出したのは、40分近くになってからだった。

  • 35分、東京:左サイド、前線へのフィードがクリアされるが、ルーカスがこぼれ球を拾って、馬場が大きくサイドチェンジ。ポジションを上げていた今野が持ち出して、左足でクロスを入れるがGKがキャッチ。
  • 38分、広島:右CK。キッカーは森崎。後方から走り込んできたジニーニョに合わせてくるが、頭で合わせるもラインを割る。
  • 41分、広島:今度は左CK。低いボールに佐藤寿人が合わせるが、ミートせず。
  • 42分、広島:中盤で浮き球の取り合い。宮沢が競りに行くが、先んじた李がワンタッチで右の駒野にはたき、フリーでオーバーラップ。阿部が戻ってくるが間に合わず、サイドをえぐった駒野がマイナスの折り返し。ニアに前田、その前田とクロスしながら大木が中に入ってくるが合わず。ファーに流れたボールを佐藤寿人が拾ってもう一回入れていくが、クリア。
  • 43分、広島:クリアボールを拾って二次攻撃。右に流れてきた茂原がキープ、前方の前田へフィードを送る。ペナルティアークのやや右で前田が足元にボールを収め、シュートチャンスをうかがうが茂庭・ジャーンがコースをふさぐ。いったん右の佐藤寿人に預けて揺さぶり、リターンをもらいフェイントを入れてやや不十分な体勢ながらも(利き足とは逆の)右足でCBの間を抜いてシュート、しかし枠をはずす。
  • ロスタイムなし。前半終了。

東京は最後まで左サイドのポジションバランスを修正できず、そこを駒野に使われて危ない形を作られ続けた(いちおう、前半途中からは阿部やルーカスがケアしようとしてはいたが)。
駒野のクロスは精度もありパターンも多彩だった(アーリーあり、低いのあり、えぐってマイナスのグラウンダあり)。これに対応する広島FW陣のゴール前に入っていく動きも鋭く、脅威を与えていた。しかし東京DFがしっかりとマークしていたため、シュートに持って行くにはクロスにピンポイントの精度が要求されたため、得点にはいたらなかった。


この前半、両チームとも慎重な中にチャンスをうかがうというか、お互い神妙な顔で見つめ合いつつテーブルの下では針でチクチクつつきあっているような、極めて陰険な展開が続いた。これに対して、あちこちのブログをみると不評、というか見ていて非常につらかったという感想が多かったのが、私は結構楽しめた。なぜならば、広島に関していえば小野監督の作り上げた精緻な組織サッカーが堪能できたし、かたや東京はこの日の急造フォーメーションの利点欠点を見て取ることができ、非常に考えることの多い(妄想ともいう)だったからだ。
まあ、前半を通じて重苦しい雰囲気がただよっていたのは確かだし、こんな状況にある意味興奮していた自分はおかしいのかしらん、とも思う。春先をのぞいて苦しい試合ばかり見てきたためか、マゾっぽくなっちゃったのかもしれない(きゃあ)。


ハーフタイムのメンバーチェンジはなし。後半開始。

  • 47分、東京:馬場が左サイド裏にスルーパス、ルーカスが走るが駒野がクリア、しかし左CKを得る。キッカー馬場はファーサイドにゆるやかな弾道で送り、そこにフリーで待ちかまえた今野がダイレクトボレー、これは下田がキャッチ。
  • 同47分、東京:栗澤・今野のコンビで右サイドへ侵入、栗澤がニアに走り込むルーカスにクロスを入れていくが、ジニーニョがクリア。
  • 50分、広島:ルーカスのパスミスをかっさらい、茂原が左サイドへ侵入、梶山が対応するがCKを取られる。李の左CKに対しニアやや下がり目に位置した小村が頭で合わせるが枠に行かず、クリア。それを拾った茂原がシュートにいくがルーカスがブロック、さらに拾って攻撃を継続しようとした広島だが、サイドチェンジがミスとなり、カットした栗澤がゴール前に走り込むルーカスに向けて早めに入れていくがGKキャッチ。
  • 52分、東京:中盤のパス回し。馬場が動いてボールを引き出し、周囲の選手も連動するが広島のプレスにあってルーカスがいったん後方に戻す。そのとき裏へ動きだした阿部に向けて宮沢がロングフィード、一瞬フリーズした小村を抜いた阿部が胸で落としてシュートを狙うが、トラップがやや長くなり飛び出した下田がブロック、ボールはラインを割る。このとき阿部・下田・カバーリングに走った小村が交錯、下田が膝を痛め、しばらく治療のためゲームが止まる。

東京はポジションバランスを修正し、前半にさんざん利用された左サイドをケアする。それでもなおかつ上がろうとする駒野を藤山が早めに前に出て対応する。東京は全体に前がかりになっていて、DFラインの位置も少し上がっていたように見えた。おかげで停滞していた前半とはうってかわって試合が動き出す。馬場が試合を仕切り始め、阿部があくまでゴールをねらって勝負を続ける。すこしずつ得点の気配がただよいだしたのだが・・・

  • 55分、広島:自陣右サイド深いところまで入ってきた阿部に駒野が出て行って進路をふさぐ。阿部はやむなくバックパスするが、これを森崎和がインターセプト、前からプレスをかけて奪いにきた宮沢と馬場をかわしてドリブルで持ち出し、ハーフウェイ付近にいた大木にパス、大木はちょっとドリブルしたあと簡単な切り返しでマーカーの梶山をあっさりはずし(orz)、ボールをキープ。そして戻ってくる東京の選手たちの間を上手く抜いて前線の佐藤寿人へくさびを入れる。これを迎え撃とうとジャーンが飛び出すが、佐藤寿人はチャージを受けながらもパス&ゴーで上がってきた森崎和にチョンと戻す。森崎和が上がってきた勢いのままジャーンを置き去りにしてペナルティアーク付近まで持ち込む。ここで茂庭が対応するが、森崎和は右サイドから入ってきた前田に渡し、前田がそのまま中へ切れ込んで茂庭と今野の間を抜いてシュート、土肥が飛びつくも届かず、ゴール左に決まる。
  • 56分、東京:栗澤→規郎に交代。その直後、今野が中央に流れながら長いドリブルで持ち上がり、ルーカスを使ってマークをかわし、敵陣内に侵入、最後は左サイドの規郎にパス、そのまま早いクロスを入れるがカットされる。
  • 57分、広島:下田が結局ダメ(靱帯断裂とのこと。鶴)で、佐藤昭に交代。あなた誰?(ユース出身だそうです)。

絵に描いたようなカウンターから広島の先制ゴール。森崎和が巧みな持ち出しでフォアチェックを掛けた馬場と宮沢を交かわす(これ、「巧」ですよ)。そして大木を経由して前線へ、佐藤寿人がジャーンのアタックに耐えてポストプレーをやりきった時点で勝負あり、だった。
東京が前がかりになっていたのは勝ち点3が欲しい以上仕方がないし、試合を通じて何回かカウンターを受けるのも覚悟の上。問題なのは中盤の底でカウンターに対する防波堤となるべき梶山がここでアリバイディフェンスをやっちまったこと(アリバイだという意識が本人にあるかどうか?)。まず、状況から考えてしっかりマークにつくべき大木にあっさりかわされた時点で×なのだが、その後に再チャレンジせず、大木の横をオーバーラップした李に気をとられてか、ふらふらと左サイド後方に流れていってしまった。まだ、宮沢が戻っていないのにもかかわらず。ここは徹底的にまとわりついてディレイを掛けるべき場面だ。それができないならファウルしてでも止めるべきだった。せめてパスコースぐらい切れよ(怒)。


失点直後、規郎がIN。規郎は左MFの位置に入り、阿部が右に回って3トップ気味の布陣になる。

  • 59分、広島:李がエリア中央に飛び込んだ佐藤寿人へ低いクロスを入れる。ワンバウンドしたボールを寿人が頭で合わせるが、ジャーンが体でブロック、CKに逃れる。右CKクリアボールを拾って左サイドに繋ぎ、佐藤寿人がクロスをいれて反対側で待っていた小村がゴールに蹴りこむが、オフサイド判定。
  • 61分、広島:またもや李が飛び込む佐藤寿人を狙ってクロスを入れるが、合わずに土肥がキャッチ。
  • 62分、東京:馬場がドリブルでエリア左側に侵入、中のルーカスを狙ってクロスを入れるがDFがブロック。クリアボールを拾った藤山がドリブルで突っかけ、依然として中央に構えていたルーカスとのワンツーで裏へ抜けようとするが、ルーカスからのリターンをカットされる。
  • 63分、東京:梶山がワンタッチで前線右サイドに張った阿部へ送る。阿部がスルーして裏へ抜けたボールを今野が追い、低いクロスを入れる。中にルーカス、馬場、ファーには規郎が走り込んだがDFがブロック、スローイン。馬場が頭を抱えて悔しがる。
  • 64分、東京:規郎が左タッチライン際をドリブル突破。李と駒野が対応するが、エリア横まで持ち込んで早いクロスを入れるが、クリアされる。
  • 66分、東京:宮沢→金沢に交代。

広島は、あいかわらず鋭い飛び出しを見せる佐藤寿人を中心に追加点をねらう。
東京は、規郎がそのスピードで代表様の駒野と李をぶっちぎり、クロスを入れる。サイドを攻めるという本来の形が出始める。ここで金沢がIN、左SBに入る。そして藤山が右SB、今野がボランチへ。

  • 70分、東京;規郎が左サイドを高速ドリブルで前進、李と駒野の間を抜いて早いグラウンダーでマイナスの折り返しを入れるが、そこには誰もいなかった(ルーカスと阿部はゴールエリア近くまで出ていた)。茂原が拾って前方へパスを出すが、これがミスとなりカットした梶山が右の阿部へ展開、エリア右角付近で阿部が強引にシュートを打っていくが服部がブロック、跳ね返りを拾った阿部が今度は中央のルーカスへクロスを入れるが、広島CBがクリア。クリアボールを佐藤寿人がキープしタメを作ろうとするが、茂庭が出てきて(広島陣内でっせ)ボールをかっさらい、そのままドリブルで持ち込んでクロス、しかしDFに当たって左CKになる。
  • 71分、東京:その後、ルーカス→ササに交代。リスタートはファーサイドの今野が受けて低いクロスを入れていくが、広島が大きくクリアする。
  • 72分、東京:上がって来た駒野を金沢が迎撃、ボールを奪って前線左に張っている阿部にくさびを入れる。マーカーを買わしてターンした阿部がインナーラップしてきた金沢にパス、金沢がさらにドリブルで前進するが広島DFがカットする。しかし中途半端なクリアを中央で馬場が拾い、右サイドへ上がってきた梶山へパス、ゴール前にササ、規郎、阿部、パスを出した馬場もやや遅れて入っていく。広島のマークが整っていないうちに梶山がアーリークロスを入れ、フリーでファーにいた阿部が胸トラップで浮かせて右足ボレーで狙うがなんとかジニーニョが体に当ててクリア。左CK。
  • 73分、東京:その左CKはいったんクリアされるが、馬場がクリアボールを奪い(CK蹴ってから中央に戻ってくるのが早いこと!)、前線のササへスルーパス。ササがペナルティエリアに持ち込んでシュートを狙う。広島DFがなんとか足を出すが、こぼれを拾った今野(CK流れで前に居ました)がシュート、GKが横っ飛びで手に当てるが止められず、しかし左ポスト直撃!こぼれ球はササと規郎が交錯しながらも佐藤昭が押さえる。ササが警告。
  • 73分、広島:治療中に大木→高柳に交代。高柳が左に入り、茂原がトップ下に上がる。
  • 76分、東京:藤山が前線のササへ放り込む。これをササが頭で裏へ流し、オフサイドぎりぎりで走り込んだ阿部が走り込みながら胸で浮かせて反転、左足ダイレクトボレーでたたき込む。金沢とゆりかご。

居るべき人が居るべき場所に入った東京がボールを支配、怒濤の反撃を開始する。金沢が左サイドにがっちりとふたをし(前田も駒野もあっさりと止めていた)、右SBに移った藤山はあいかわらずいぶし銀の守りをみせる。そして今野が中央を固める。守備ブロックの安定が攻勢につながっていた。あとはササの投入時期だけだ。誰と代えるんだろう、と思っていたらなんとルーカスと交代だった。たしかにルーカスは疲れからか動きがやや落ちてきていたけれど、ここで下げるとはずいぶん思い切った采配だな、と思ったがこれが大当たりだった。
とにかく攻めなければならない時間帯、ボールをもらいにあちこち動き回るルーカスとは違い、ササは中央にどっかりと構える。ササをファーストターゲットとしたシンプルな攻撃の形ができる。規郎のサイド突破がいい感じのアクセントとなる。そして阿部。とにかくボールがきたら勝負してきた阿部の、今シーズンJリーグベストゴールに必ずノミネートされるだろう、スーパーゴールで同点に追いついた。

  • 78分、広島:李→ガウボンに交代。前田が1.5列目に下がる。
  • 80分、東京:前田へのくさびを今野が迎撃。奪った勢いで前進し、左の規郎にパス。規郎がファーに入り込む阿部へクロス、阿部がフリーでワントラップ、戻ってきた服部のブロックをかわしてシュートも今度は枠に行かず。
  • 81分、広島:高柳が左サイドで突破を試み、CKゲット。駒野がニアに低いボールを入れていくが誰かに当たり、中央にこぼれたボールを金沢がクリア。ところがこれが戻ってボールに行こうとした規郎に当たって跳ね返る。ゴール左側にふらふらと上がったボールはラインを割るかに見え、ゴール前を固めていた今野、ジャーン、金沢、以外の選手はフリーズしてしまう。たが、ぎりぎりライン際で駒野が折り返し。これを待ちかまえた佐藤寿人が左足で押し込み、広島が勝ち越し。
  • 83分、東京:キックオフから、阿部→ササ→馬場と繋いで左の規郎に展開、規郎が切り返しを入れて駒野をかわし、速いグラウンダーでマイナスの折り返しを入れる、ゴール前に前進する阿部とササに広島DFが釣られ、一人ゴールエリア手前に残っていた馬場がこれを右足で押し込み、東京同点。

なんと、ここで交通事故発生。クリアが味方に当たったとき、東京としては大変珍しいことに、大半の選手がボールウォッチャーとなってしまった。これはイケイケ攻撃ムードになっていたことが一因だろう。守る展開だったら、こんなことはなかったはず。集中力不足といわれればそれまでだけれど。
私は、ここで一瞬あきらめかけた。しかし、選手たちは闘志を失っていなかった。今度は、逆に勝ち越しムードに浸った広島の虚をついて、キックオフから一度もボールを下げずに規郎のクロスを馬場が押し込み、あっさり同点に持ち込む。こんなにきれいにサイドを崩したのはいつ以来だろう。ゴールが決まった瞬間、何人かの広島の選手ががっくりと膝をついてしまった。それを見て私は、少なくとも今日負けることはない、と確信した。


このあと、すこしごちゃごちゃとあったが、両チームとも追加点を奪えずに試合終了。
引き分けで終わった。


結局、引き分けとなり勝ち点1ずつを分け合うことになった。3ポイントとれなかったことは確かに残念だが、ここは主力を欠き、慣れないフォーメーションにとまどいながら、先行されても果敢に反撃してドローに持ち込んだことを素直に喜ぶべきだと思う。

広島は、ベットが出場停止、ガウボンがコンディション不良、森崎浩がケガで長期離脱と、主力級3人を欠いていたが、そのことを感じさせない試合運びを見せた。高い位置から仕掛ける組織的プレス、カウンターを受けた時の対応、ともに見事でリーグ最小失点も当然だと感じさせた。そして、佐藤寿人、前田の飛び出しとぴったり呼吸の合った、高精度クロス・フィードが何度も東京ゴールを脅かした。チームとしての完成度が、降格リーグの面々と比べると1ランク、2ランク上で、一時は優勝をねらえる位置にいたのもうなずける。一言で言えば歯車がかみ合ってスムーズに動いている、という感じなのだ。


東京は、主力の負傷・欠場よる台所事情の苦しさがもろに出た試合だった。前半は3ボランチの歪みをつかれ何度もピンチを迎えた。本来、相手右SBの上がりは戸田が第一にケアするところだが、代わりに先発した阿部は2トップということで前線に張り付く。ボランチの癖が抜けない宮沢がどうしても中に絞るため、左サイドはがら空き。これは、煎じ詰めれば不慣れ以外の何ものでもないし、宮沢は攻撃面では何度も効果的なパスを出していたので、あまり責めるもの酷だろう。それに、中央のバイタルエリアを任された梶山をサポートしなければ、という意識があったのかもしれない。
その梶山だが、このポジションを任せることができないことがはっきりした。今野が横にいたからこそ、ボランチがつとまったのだ。彼は、まだ他者の助けがなければ仕事ができない選手なのだ。ポテンシャルは申し分なくとも、ケリーの(馬場に対する)言いぐさを借りれば、「問題はここ(ハート)だ」ということなのだ。原さんの言によれば、展開力を期待して中盤の底に据えたということだが、サイドアタッカーが居ないのに展開もなにもなかろうし、ほかに適当な駒がいないのと、何とかして一人前に育てようとしている部分があるのだろう(それにしても、我慢して使っているよな)。馬場の例を見ても、今日明日一人前になるものでもないだろうが、とりあえず学ラン着た阿部と宮沢に小一時間説教してもらったらいいんじゃないかな(怒)。
DFラインは、茂庭が遠征疲れを感じさせないプレーを見せ、藤山は相変わらずの職人ぶり、今野もそつのない守りを見せた(はっきりいって右SBに使うのはもったいないけど)、ようやく復帰した金沢がテーピングぐるぐるながら格の違いを感じさせる働きぶり、とそれなりに安定していた。
前の選手は、ルーカスと栗澤が不調だったが(阿部栗コンビ不発は残念です)、馬場が前節に続いてチームを引っ張る働きだった。馬場のプレーは、デビュー当時のヘタレぶりを見て怒り狂っていた者にとって、感動以外の何ものでもない。
そして阿部。この試合、ドローに持ち込めた最大の要因は、泥臭くてもなんでもとにかくゴールをねらうことを最優先にプレーした阿部(とササ)のシュートを打つ意志だと思う。
いままで、ルーカスに当てて、中盤に戻して、サイドに展開して、そのあとフィニッシュ、というパターン(これはこれで有効なのだけれど)にこだわっていたのに対し、この二人はシンプルにゴールに迫り、チャンスがあればとにかく打つ、というスタイルで押し通した。阿部なんか、後半だけで6,7本はシュートを、それもかなり強引なやつを打ち続けていた。あのスーパーゴールは、そんな阿部の「打つ意志」が生んだものだ。


まだまだ続く残留争い、まったく気の抜けない試合が続くけれど、チーム一丸となって戦い、そして残留してやろうという意気がこの試合から十分に感じられた。それが、このドロー試合の最大の意味なんだと思う。


そして次は、ダービーですよ、奥さん!