全日本大学選手権決勝 駒澤大学 2 - 1 順天堂大学(観戦124試合目)

日時:2006年1月15日14:40キックオフ
会場:国立霞ヶ丘競技場
観衆:7110人
主審:扇谷、副審:宮島、唐木田、第4審:小田倉
得点:原(駒大、48分)、田谷(駒大、51分)、谷内(順大、54分、PK)
警告:巻(駒大、19分)、菊池(駒大、18分)、菊池(駒大、42分)
   築城(駒大、53分)、八角(駒大、54分、*PKになったやつ、録画で確認)
退場:菊池(駒大、42分、警告2枚)


駒大のスタメン。

    12巻   11原
      10鈴木亮
   7宮崎     25田谷
      16八角
 3築城 13菊池 5廣井 4石井
       1牧野(c)

リザーブ:21三栗、17塚本、18小椋、6最上、27島田、8赤尾、24印出
選手交代:原→最上(86分)、鈴木亮→印出(89分)
フォーメーションはいつもの中盤ダイヤモンド4-4-2。
桑原が退場、赤嶺が累積警告で出場停止。赤嶺の穴は巻が、桑原の穴は準々決勝でボランチをやっていた菊池が入る。懸案の右SHは同じく準々決勝で負傷退場した田谷が間に合ったようだ。攻撃陣はともかく、不動のCB桑原が抜けたDFラインの連携はどうだろうか。
もう一つの注目は応援席での活躍で我々を楽しませてくれた印出のベンチ入り。晴れの舞台で出場なるか?


順大のスタメン。

        13福士
  11渡邊哲 10佐藤健 9多田
    14島嵜    6飯島
 3小宮山 2谷内(c) 4村上  28森
       1佐々木

リザーブ:21渡辺彰、8中村、12竹岡、16高石、20慶田、15青木、22深井
選手交代:多田→中村(59分)、飯島→青木(78分)
4年生はキャプテン谷内だけ、3年6名(佐々木、小宮山、飯島、渡邊哲、佐藤健、多田)、2年2名(島嵜、村上)、1年2名(福士、森)という若いチーム。
準決勝までは3-5-2だったが、さすがに小宮山をオーバーラップの機会が少ない3バックの左で使っちゃもったいないよ、つーことで4バックにしてきた。一応、福士(おっ、盛岡商のエースじゃないか、順大に来てたんだ)を1トップに置いた4-5-1だが、攻撃時にはかなり流動的。とくに多田は福士のすぐ近くに位置することが多く、2トップに見える場面も多々あり。守備時は渡邊哲と多田が味方SBと連携して駒大SHをケアし、佐藤健八角をマークしてロングパスを封じる。


試合が始まってみると、その順大の守備が機能した。駒大の攻撃はまずFWにボールを入れるところから始まるのだが、クサビのパスを徹底的にマークし、潰していた。駒大2トップに対し必ず一枚がタイトにマークし、周りの選手はこぼれ球にターゲットを定める。その徹底ぶりたるや、原も巻も中央に張ろうが、サイドに流れようが、中盤に下がろうが、必ず密着マークが出現してほとんど仕事をさせてもらえなかった(二人とも前半はシュートゼロ)。で、何度も書いているけど、FWにボールが収まらないと駒大の攻撃が機能しなくなる。次の攻め手に乏しいのだ。鈴木亮平がドリブル突破を仕掛けたり、SHを使ってサイドから崩そうとしたり、意図は感じるのだが有効な形は出てこない。結局、FWヘ長いボールを入れては潰されるを繰り返す。川淵カピタンは「蹴ってるだけじゃねえか(怒)」とおかんむりだったらしい。ほんとはただの放り込みじゃなくてダイレクトプレイを意図しているのだが、まあ、そういわれても仕方ないか。前半、駒大のシュートは鈴木亮の2本のみ。クロスらしいクロスも宮崎・田谷がそれぞれ1本ずつ(いずれも手元集計)。機能不全は、明らかだった。


順大は堅い守備からカウンターを狙う。ボールを奪ったら福士がラインの裏へ走り、2列目の三人が続く。この四人が繰り出すスピード豊かなカウンターに駒大守備陣がかなり手こずっており、主審の神経質な笛も相まって何度もファウルを取られ、FKの山を献上してしまう。順大は、左サイドのFKなら飯島が、右サイドなら小宮山が、それぞれカーブのかかったボールをゴール前に入れていく。特に、小宮山の速くて正確なFKから何度もチャンスをつくり出す。
そして、18分から20分にかけて、順大が立て続けに決定機を迎える。まず、佐藤健が右サイドから入れたグラウンダーのクロスに渡邊哲がニアで潰れ、ファーに抜けたボールを福士がゴールエリア内からシュート(DFに当たってCK)。そのCKに渡邊哲が飛び込んで、ヘディングシュートがGKが飛び出して不在のゴールを襲うが(順大から見て)左ポストに構えたDFがライン上ではじき返す(こぼれ球の奪い合いで駒大菊池がファウル、警告)。


その後は、疲れが出たのか順大のカウンターも次第にスピードを欠き、参加人数も少なくなっていく。しかし、堅い守備は前半を通じて機能していた。
順大応援団もチームの勢いに比例するように、元気いっぱいだった。普段は集団応援なんてしないチームなのだが、さすが決勝、部員やらOBらしき人やら同級生(女子多し。うらやましー)らしいのやらでかなり賑やか。ハーフタイムにはマツケン(の格好をした人)のサンバもあって、ずいぶんと盛り上がっていた。


前半終了間際、42分に駒大が敵陣内でスローインのチャンスを得る。当然、原がロングスローをゴール前に放り込むが、順大DFがカットし、こぼれ球をクリアにかかる。そこに駒大・菊池が後ろからスライディングタックルをかけて倒してしまう。この危険なプレーは当然警告、2枚目をもらった菊池が早くも退場となる。これは、あまりにも軽率なプレーだった。
早くも厳しい状態に陥った駒大は、とりあえず(と、その時は思った)、巻をCBに下げて残り時間をしのいだ。


さて、後半。驚いたことに駒大は菊池退場を補う選手交代を行わず、巻がCBに入ったままだった。たしかに、ハイボールには強いだろうし、終盤になったら前線に上げてパワープレーもできるし、意外と名案かも、と思った(実は、国見高時代DFだったそうだ。知らんかった)。
後半の見所は、駒大が順大の猛攻をいかにしのいで終盤勝負に持ち込めるかだな、と考えていた矢先、一瞬の隙を突いて駒大が先制する。
48分、田谷が宮崎からのアーリークロスをエリアやや右で受け、うまく体を入れ替えて小宮山をかわす。順大CB谷内がカバーリングに走るが間に合わず、田谷はゴール前に走り込む原へパスを送る。谷内が空けたスペースに入り込んだ原がこれを流し込んで10人の駒大が先制する。
さらに51分、順大DF村上は駒大が単純に蹴り返したボールの処理をもたついてしまう。まず鈴木亮平がチャージをかけ、村上はこれをかわしたが、原一樹が第二波をかけ今度はボールをかっさらわれてしまう(自陣でボールリフティングなんてやってんじゃねえよ)。原は得意のドリブルで突進、順大DFの注意を引きつける(5人ぐらい原に行っていた)。そして順大DFは背後からゴール前に入ってくる田谷を全くノーマークにしてしまった。原が囲まれるまえに田谷へはたき、これをどフリーの田谷が落ち着いて決めて駒大が2点目をゲットする。
この辺、順大は鷹揚というか、駒大が10人になったことでちょっと油断してましたね。


その後は、さすがに順大も目を覚まし、猛攻を開始する。必死に攻める順大、こちらも必死に守る駒大、という図式になる。54分、セットプレーの守備時に駒大がエリア内でファウルを犯し、PK。キッカーはキャプテン谷内。向かって右隅を狙ったキックは牧野の右手を弾いてゴールインし、順大が1点を返した。
スタジアムで見ていた時はよくわからなかったが(主審のゼスチャーから密集の中で誰かが誰かを抱えこんだのは想像がついた)、録画を見ると八角が渡邊哲にタックルかけてましたね。


その後、順大は小宮山と村上のポジションを上げて3-5-2とし、完全に引いてゴール前を固める駒大に対し猛攻を掛ける。ボランチ島嵜が右へ左へと素晴らしい展開パスを送り、それを受けた小宮山・村上の両WBが雨あられのようにクロスを叩き込み、それにFW陣がしゃにむに飛び込む。
しかし、駒大も最近のお家芸となった鉄壁ディフェンスでボールをはじき返し続ける。原を残してフィールドプレーヤー8人でペナルティボックスを固め、スペースもシュートコースも与えない。廣井がDFを統率し、巻がFWをやっているときよりも高く飛んでハイボールをはじき返し津図蹴る。
順大の決定機は64分、佐藤健のシュート(というかスルーパスを狙ったんだと思う)をGK牧野がキャッチしきれず、こぼれたボールに渡邊哲が飛び込んでシュート、しかしこれが枠に当たってしまい、得点ならず。


そして、駒大は守りきった。



後半の立ち上がり、順大は明らかに集中力を欠いていた。順大にしてみりゃ、相手は10人だ、さあてじっくり攻めてやろうぜ、てな具合に余裕を持っていたつもりなのかもしれないが、それが油断になってしまったように思える。相手は関東最強チーム、それも縦に早く一瞬の隙をついて点を取れるチームである。戦力に劣るチームがカップ戦を勝ち上がるのに必要なのは勢いなのだ。決勝まで来た勢いそのままに、最初から猛攻をかけて駒大を押し込んでしまえばよかったのだ。だが、なんかしらんがのんびりと構えているうちに2点を奪われてしまった。


逆に、駒大は縦に早い攻めで一瞬の隙を突き、1点をとるしかなかった。そして、思惑どおりの形をつくって2点も奪った。この辺が常に優勝争いをしているチームと、中位で強いのか弱いのか良くわからない戦いをしているチームの差なんだろうな。


確かに勝負の綾はあった。インカレにおける順大の勢いというのが試合終盤に発揮される類のものだったし、菊池の退場がなければ順大も集中力を保っていただろう。前半に何度かあったチャンスを決めていれば、64分のシュートが枠内に行っていれば、というのはいうまでもない。


それでも、勝負を分けたのは、やはり試合の流れを読む力、ゲームの流れの中でチームとして的確なプレーを選択できるという知性だろう。その点、駒大と順大には明らかな差があった。順大も将来性を十分に感じさせるチームだった。だが、端的に言えば甘かったのだ。
やはり、王者にふさわしい者に栄冠が与えられるのだろう。


この試合、いかにもファイナルらしい堅い試合で、表面的にはロングボールの蹴り合いが多かったし、一見さんにとってはあまりエキサイティングじゃなかったかもしれない。でもね、普段から大学リーグに足を運んでいる人間にとってはそれなりに楽しめるものだったと思うよ。


だって、あの印出が、ピッチよりスタンドでの活躍が目立っていた彼が、大学最後の試合のそのまた最後の30秒だけ出場し、ボールタッチ1回、ファウルを一つ取られて、見事に優勝メダルをかっさらっていったんだぜ。
その事実を見ることができただけで、この試合は観戦に値する。


サッカーの本当の面白さは、それを日常とする者に与えられるのだ。