第88回全国高校サッカー選手権 2回戦 武相高校 2 - 4 日章学園高校

第二試合は地元・神奈川の武相高校が登場。第一試合の後半あたりからスタンドが埋まり始め、階段を上がったあたりは人が鈴なり状態。ゴール裏にも学生諸君が目立ち始める。
男くせー(笑)。


ちなみに、「武相戦線」てのはゼルビアのダンマクからパクらせていただきました。



武相は4-4-2フォーメーション。前評判によれば反転速攻が持ち味、ということでそのへんに期待。横浜FC下部組織の出身者が多い。
日章も4-4-2。こちらは中高一貫で強化をしている学校で、メンバーは日章学園中の出身者が大半を占める。一見さんのスタンド雀としては、とりあえずU-18代表候補の伊勢あたりに注目。


スタンドが地元の皆さんでいっぱいになったところで試合開始。
3分、武相の右MF山田がドリブルで仕掛け、ファウルを誘ってFKゲット。FKキッカーは秋山。武相はトリックプレーを発動。グラウンダーで壁の横へボールを流し、そこへ黄色いユニホームがなだれ込む。あわや、という場面だったが日章が防ぎきる。
7分、日章は前線で構えるFW尾方へロングフィード。尾方がフリックオンして伊勢が裏へ抜け、シュートを決めるがオフサイドの判定。正直、微妙なタイミングだった。


日章は尾方のフリックオンから裏をねらうという攻撃をしつこく繰り返す。
10分、同じく尾方が流したボールに反応して伊勢が裏へ飛び出す。同じく裏へ動いていた福満にいったん預けてから伊勢がクロス。ファーサイドに飛び込んだ選手(誰?)がこれに合わせてシュートを放つが、武相DFが体を張ってブロックする。
日章学園は猛烈なフォアチェックで武相を押し込み、攻勢を継続。
17分に左CKを得ると、井上のキックは大きなカーブを描いてファーサイドへ。助走をつけて飛んだCB園田が頭で折り返し、これに串間が飛び込んでゴールゲット。日章学園が先制した。園田の折り返したボールが山なりで、ニアを固めていたGKの上を越されたかたちになってしまった。
先制後も日章学園は手をゆるめない。21分、裏を取ったFW伊勢がペナルティエリアへ侵入、角度のないところから強引に打っていくが、これは武相GK大滝がナイスセーブ。


ここまで日章学園のプレスがはまっていた。とにかく、ボールホルダーへの寄せが早くかつタイトに付かれるため、武相は思うようにパスを繋げない状況だった。FW三堀へのクサビも押さえられ、耐える時間帯が続いた。


25分すぎから、日章学園のプレスがさすがに鈍り始め、徐々に武相の時間帯へ。
29分、縦パスを受けた三堀がターンしてドリブルで前進、ペナルティエリアまで持ち上がるが、日章DF長友が体を入れてシュートを阻止する。続く31分、日章のCKから武相のカウンター。クリアを拾った平塚からのパスを受けて、柿崎がドリブルで前進、左サイドを駆け上がる友澤へパスを送る。通れば決定機だったが、これは日章DFにカットされる。


32分、日章はまたも尾方のフリックオンから伊勢の抜けだし。しかし武相DFが体を寄せたため、伊勢のシュートはジャストミートせず、GKが難なくキャッチ。


33分、武相の右SB藤戸が長めの距離を狙っていくが、シュートは大きく枠をそれる。手元記録ではこれが武相のファーストシュート。続く34分、左クロスを中央で柿崎が受ける。ターンできればシュートまで持ち込める状況だったが、トラップミスでチャンスを失う。さらに36分、柿崎のスルーパスに三堀が抜け出し、GKと一対一のチャンス。俄然盛り上がるスタンド。しかし三堀の選択は横パス。ゴール正面に一人走り込んでいたが、このパスは通らず。メインの観客はほぼ全員orz。確かに、GKが前へ出てきてコースを塞がれた格好だったが、打って欲しかった・・・・
37分には、友沢の左クロスからゴール前の混戦。柿崎が難しい体勢から打っていくが、クロスバーの上。


38分、武相DFのパスをカットし、日章FW伊勢が突進、GKと一対一になる。決定的なチャンスだったが、GK大滝が前へ飛び出してシュートブロック。これはビッグセーブだった。こぼれ球を拾った澤山がシュートを打つが、ゴール右に外れて、日章学園が追加点の絶好のチャンスを逃した。


39分、武相は平塚が左サイドを突破、クロスに秋山真がボレーで合わせるが枠を捉えられず。


日章学園1点リードで前半を終了した。
手元記録を見ると、前半、日章はシュート9本(枠内5本)。そのうち伊勢が6本を放っている。長身の尾方に当てて伊勢が裏をとる、という形がはまっていた。
一方、武相はシュート3本で枠内ゼロ。25分すぎまで日章のプレスに圧倒され、その後も園田を中心とする日章DF陣に押さえ込まれた。ただし、クロスは日章の倍の6本と、サイドからゴール前の勝負に持ち込む形はできていた。


ハーフタイム、コンコースは大混雑。うどん屋の前には長蛇の列。後ろのほうの人、ちゃんと食べられたのかな。


後半開始直後の41分、武相はいきなりのビッグチャンス。柿崎が完全に裏を取り、キーパーの頭上を越すループシュート無人のゴールへ向かう。しかし、ボールの勢いが弱く、必死で駆け戻った日章DFにゴールイン寸前でクリアされる。


チャンスのあとにはピンチあり、ではないが直後に日章学園のカウンター。伊勢がドリブルで攻め上がる。武相のディフェンス(菊池?)がチャージをかけるが、伊勢はボールをキープしたままペナルティエリア右へ侵入、ゴールライン近くまでえぐって折り返す。これに福満が飛び込み、日章学園が2点目をゲットした。ここは福満の動きがうまかった。武相DFの意識がボールを持つ伊勢に注がれている隙に、福満は逆サイドからダイアゴナルの動きで武相DFの背後からゴール正面に飛び込んできた。武相DFにとっては、いきなり目の前に現れた、という印象だっただろう。


武相も反撃。43分には藤戸が攻め上がってシュートを放つが、GK正面。


48分、日章は武相DFのパスミスからチャンス。尾方が左サイドからシュートを狙うが、枠をはずす。


当然、前ががりになる武相に対し、日章はカウンターを狙う。52分、伊勢がドリブルで攻め上がってCKゲット。CKのクリアボールからミドルを狙うが、GKがセーブ。
続く53分、左サイドを尾方が攻め上がってクロスを上げる。これに右サイドからダイアゴナルの動きで入り込んできた鳥原が左足で合わせて、日章学園が3点目をゲットする。2点目と同様、DFの背後からその眼前に飛び込んでいくプレーだった。


いよいよ後がなくなった武相は、58分に選手交代。左MF平塚に替え、DF藤井を投入。藤井をCBに入れ、いい左足キックを持つ秋山拓ボランチに、運動量のある秋山真を左MFに、と攻撃力のある(と思う。なにしろ初見なんで)選手のポジションを玉突き的に前へ上げる。また、先立つ52分に交代で入ってきた田村(山田out)は右MFに入っている。従って、DFラインが左から友澤・藤井・藤原・藤戸(藤ばっかりだ)、ボランチが秋山拓と菊池、OMFが右に田村、左に秋山真、2トップは変わらず三堀と柿崎、という布陣になる。


62分、裏へのフィードに武相FW三堀が飛び込むが日章DF陣に阻まれ、シュートならず。66分、菊池のクロスに対し、オフサイドぎりぎりで抜け出した三堀がGKとの一対一からニアサイドを破るヘッダーを放ち、武相が一点を返す。これは抜けだしのタイミングが絶妙だった。


俄然盛り上がるスタジアム。もう一点とれれば、「ホームの力」で武相がもしかして、と思ったが、日章学園はしたたかだった。直後のプレー、ゴール前に放り込まれたボールを武相DFがクリアしようとするが、詰めてきた日章の選手に当たってしまい、ボールはペナルティエリアへ転がる。これを収めた伊勢がエリア右からマイナスの折り返しを入れると、中央に走り込んできた途中出場の山田が蹴りこんだ。武相の、というより会場全体の雰囲気をくじく一撃だった。この場面、日章学園の超ショートカウンターのような形になって、武相DFが切り替えできずに棒立ち、山田はノーマークだった。


しかし、武相は意地を見せる。73分、日章・尾方の放った決定的なシュートをGK大滝が腕一本で弾き出す。74分には、柿崎のサイドチェンジで揺さぶって、最後はクロスからゴール前の混戦に持ち込むがシュート打てず。
武相の意地が実を結んだのはロスタイムに入ってから。左クロスに対し、柿崎が鋭いの動き出しで日章CBの真ん中を割って、ヘディングシュート。これがネットを揺らしてスコアは4-2。


武相の反撃はここまでで、タイムアップ。会場は最後まであきらめなかった武相イレブンに対し拍手を送る。


やはり日章学園が一枚上手だったな、というのが感想。まず、ゲームプランがしたたかだった。前半は猛烈なプレッシングによるボール奪取から、速めに裏を狙っていくやり方で先制点を狙っていた。尾方のフリックオンが有効と分かるとそれを徹底的に使っていた。結果的にはセットプレーからの先制点だったが、裏狙いへの対応で武相がなかなか押し上げられなかったという部分で、日章学園のやり方がはまっていた。後半は一転して、カウンター調のサイドアタックで3点を奪取。それも、1点目でクロスに対して2列目から入り込む選手への対応が甘いと見れば、徹底的に2列目の飛び込みを使っていく。前後半でのゲームプランの切り替えも的確だと思ったが、さらにゲームの中で有効な攻め手が見つかれば、それを徹底的に使うというチームとしての戦術眼の共有ができていた。
点をとる形にしても、磨き上げられたパターンをいくつも持ってるという印象を受けた。尾方のフリックオンプレーについては、裏へ流すボールの質も、飛び出すタイミングも絶妙。2点目・3点目のダイアゴナルランからのゴールも、普段からの意識付けがあればこそ。セットプレーに関してはいわずもがなです。


武相のほうは、反転速攻が武器、という前評判から見れば、持ち味を発揮できなかった印象がある。前半の頭、日章が前から来ている時間帯でカウンターが炸裂するか、と思ってみていたが、日章のプレスに押さえ込まれちまったね。三堀は前を向けば迫力のあるFWだし、相方の柿崎も走れるテクニシャンである。あと、印象に残ったのは右SB藤戸のダイナミックなオーバーラップ。
後知恵でいうと、勝負の綾は後半冒頭の柿崎のシュートがDFにクリアされたところだったかと。あれが決まっていれば、「ホームの力」を味方に付けて優位に立つことも可能だったかと(希望的観測)。
あとは守りが・・・・ね。セットプレーは仕方がないとして、同じパターンで3点取られたのは悔しいだろうな。クロスに対して視野の外から飛び込んでくる選手への対応というのは難しく、本来は中盤の選手のサポートが欲しいのですが、なにせ逆転しなければならない状況でチーム全体が前がかりになってたわけだから・・・・まあ、練習だ、練習。
それから、切り替えの速さが身上のチームというのは、リードしているか、がっぷり四つに組んで攻め合うときにその持ち味を発揮するのであって、常に先行されている展開では苦しかったと思います。
最後まで粘って2点を返したファイトは見事でした。