東京電力の電力供給力推移試算

東京電力5月13日付プレスリリースで、今夏の供給力が5,520万kW(7月末)〜5,620万kW(8月末)に達する見込みとなり、今夏の予想最大需要5,500万kWを上回り、計画停電を原則的には回避できるという見通しが得られました。


でも、にわか電力マニア兼瓦斯クラスタとしては「もっと詳しく教えてよ」という気持ちを抑えられません。火力の復旧状況は? 水力の運用はどうするの? 50Hz圏からの電力融通はどのくらい? 俺の住んでいる東北電力管内へはどのくらい電力を回してもらえるの?


というわけで(どんなわけだ?)、自分で供給力を試算し、グラフを書いてみることにしました。


データは公開情報(東電HP、電気新聞web版など)のみ。
火力の復旧時期や緊急設置電源の稼働時期は、実際に運転を開始するまでは、「7月頃」とか「8月」という表現でしかリリースされていないので、具体的な日時は仮定しました。
水力の発電可能な電力は河川流量に左右されるので、季節によって変わります。ここは、資源エネルギー庁電力統計から、昨年の実績をもとに算出しました。


完成したグラフは以下。



5月末までの最大需要(青)と供給の実績(ピンク)、試算した供給力を黄色で示しました。
(高解像度イメージは、画像をクリックして"オリジナルサイズを表示"を選択)



こっちは積み上げグラフ(ちょっと改変。火力を石油・LNG・石炭に分けて表示してみた)。
(高解像度イメージは、画像をクリックして"オリジナルサイズを表示"を選択)


結果、7月末には予想最大需要5,500万kWを上回る供給力になるという結論になり、ほぼ東電の発表に近い結果が得られました(ただし、8月末に5,620万kWという東電発表の数字には達しない・・・まだ、なにか見落としている要素があるな・・・)


ただし、7月末の予備供給力は、私の試算でも、東電発表値の20万kWにほぼ近い数字になりました。これは極めて危ない領域です。
気温が1℃上昇しただけで吹っ飛びます。また、中規模の火力発電所にトラブルが起きたら、また渇水で水力の稼働率が下がったら、制御不能のブラックアウトが起こりかねません。


現時点で、我々一般人にできることは節電のみです。
我が家では、スイッチ付きの電源タップを導入し、ブルーレイレコーダーと冷蔵庫以外の電源を切ることで、不在時の電力消費を半分以下にすることに成功しました。
出勤などで家を留守にするときは、不要不急の電気製品のスイッチを切るなど、節電に努めましょう。


以下、解説。


3月(実績)
・3月11日、東日本大震災発生。福島第一・第二・東海第二原発、および太平洋岸の火力発電所が被災し、供給力は約4,700万kWから約3,000万kWに急減。
・直ちに北海道電力および60Hz圏から電力融通開始。周波数変換所100万kW、北海道からの直流送電線60万kW(北本連系)、加えて60Hzの水力発電所を50Hzに変更して発電するという裏技まで使用。
・週明けから計画停電開始。
東京湾の火力発電所が定期検査を短縮して順次運転再開。


4月(実績)
・4月上旬に鹿島火力が復旧。
・暖房需要が減り、需給に余裕ができる。


5月(実績)
常陸那珂火力が復旧。
・緊急設置電源の一部が稼働開始。
浜岡原発運転停止により、中部電力からの電力融通が中止(関電から"玉突き"で融通?)。


6月(推定)
・緊急設置電源の稼働開始。


7月(推定)
・緊急設置電源が次々と稼働開始(稼働開始日は推定)。
・横須賀火力が運転再開(稼働開始日は推定)。
揚水発電の最大600万kW運用開始(ピーク時のみ)


8月(推定)
柏崎刈羽原発1・7号機が定期検査入り。
・広野火力が復旧。
・緊急設置電源がさらに稼働開始。


こんな感じです。
細かい仮定は別エントリでアップ予定。