緑 0 - 1 FC東京 (観戦64試合目)

試合は膠着したまま終盤に入った。東京は圧倒的に攻めるが、どうしてもネットを揺らせない。クロスははじき返され、ドリブル突破は阻止され、シュートは枠をとらえられない。カウンターからGKと1対1の絶好機もボールをゴールに流し込めない。ここで自慢じゃないが私は思ったのだ。ここは梶山しかない。奴のミドルシュートしかない、と(ほんとだよ)。その矢先だった。ルーカスの落としたボールが背番号23に渡る。予感がした。奴は決める(ほんとにほんとだよ)。私は叫ぶ。「打て〜!」。ワントラップの後、梶山のインパクトを見た瞬間に腰を浮かす。確信が走った。これなら決まる。どうだ、誰よりも早く飛び上がってやったぜ(ほんとにほんとにほんと)。しかし私の予想が当たったのはそこまでだった。彼のシュートは想像を遥かに超えるスピードでネットに突き刺さった。DFは誰も反応できなかった。高木義成はネットが揺れてから手を伸ばし、そしてやめた。飛び上がったまま固まる私。静まりかえるスタンド。誰もが事実を認識するのに一瞬を要した。そして歓喜の爆発。87分の出来事だった。


雨の国立。キックオフ直前に雨が激しくなる。慌ててポンチョを羽織る。わびしさのつのる緑のホームゲーム。ホーム側メインスタンドに3人だけいるチアガールは何なのか?ガラガラのメインスタンド。自分も含めて雨で縮こまっているバックスタンド。ただただ、ゴール裏だけが熱気を保っている。お約束の「川崎帰れ」コール(フロンターレが迷惑だろうw)。ゲーフラは「雨の日は味スタで」(ごもっとも)、「川崎はあちらです→」(正しい方位です)、「いまだ消えぬナベツネのかほり」(妙な経緯で退場しちゃったけど)。緑のほうは「マサにガスだね」「幕府の狗がっ」(これ好き)。東京の選手紹介のときに「聞こえない!」コール。しょっぱなからかましてくれるね(笑)。でもなんだか、ゴール裏が無理矢理盛り上げようとしている感じの東京ダービー。でも負ける訳にはいかないぞ。


東京はオリンピック組が復帰。GK土肥、DFが加持・ジャーン・茂庭・金沢、ボランチが三浦文・今野、右MF栗澤、左MF馬場、トップ下ケリー、1トップがルーカス。石川は練習試合で負ったケガが回復せず、ベンチにも入っていない。
一方、緑はGK高木、DFは米山・戸川・ウベタ、ボランチが林・小林大、右WBが山田、左WBが三浦淳、トップ下が小林慶、そして桜井・平本の2トップという3-5-2の布陣。ただし小林大は上がり目の位置でプレーする時間がおおく、トップ下なのかボランチなのか正直いって微妙な感じ(よくわからんかった)。


かたや連敗スタート、かたや前節7失点というチーム同士の対戦であるためか、静かな立ち上がり。緑はいつものように足元でパスをつないで機をうかがうが攻撃のテンポアップが乏しい。東京も前の4人がワンツーで崩しにかかるが緑の両サイドが下がり気味で5バック状態であるため崩しきれない。けが人続出で仕方のない状況なのだが、いまの東京には攻撃のアクセント、つまりスピードの変化をつけられる選手にとぼしい。今日のスタメンでは思い切りのいいオーバーラップを見せる加持ぐらいのもの(しかも前半はケリーや栗澤に無視されること多し^^;)。今野も守備はそつなくこなしていたし、マルセイユルーレットという意外な隠し芸を見せてくれたりして楽しかったのだが、五輪の疲れが抜けきれないのか、コンビネーションが微妙に合わないのか、いつものボール奪取即前進というプレーがみられない。つまり持ち前のスピードで右サイドを切り裂く石川や、パワーにものをいわせてゴール前に突進する戸田のように、強引に敵陣に切り込んでいくプレーをする者がいないのだ。


ペースをつかめないでいるうちに緑が徐々に攻勢に転移する。桜井・平本・小林慶+小林大が前からプレスをかけ高い位置でのボール奪取を狙い始める。これに左は三浦淳がからんで崩しにかかる。右は米山が効果的なフィードを送る。桜井のドリブルがとくに厄介でなかなか止められない。その桜井のドリブルをジャーンが止めにかかる。ジャーンの足がかかったように見えたが、桜井の過剰演技(笑)に主審が落第判定を下し、めでたく一発目の黄紙が進呈される。もっとも桜井と平本にてこずるのはあいかわらずで、とうとうで左サイドでFK献上。三浦淳がいいコースに蹴るが誰も反応できないままゴール左に外れる。


対する東京は、前半半ばから前節に見えた栗澤キープ・加持オーバーラップという形が出始め、加持のクロスから馬場がヘディングシュートを放つも外れ。
その後、緑がこの試合最大の決定機をつかむ。右サイドから米山が上げたアーリークロスに対し、平本がうまい動きでマークについていたジャーンの前に出てニアサイドでヘディングシュートを放つ。が、ポストにはじかれる(危ない危ない)。
東京は文丈が攻守に獅子奮迅の活躍をみせ、しばしばチャンスの起点になるも、ルーカス・ケリーはしっかりマークされ、馬場のシュートは力なく、結局無得点のまま、前半が終わる。


後半になると東京がペースをつかみ始める。前のブラジル人二人が積極的にプレスをかけ、緑のボール回しを妨害しにかかる。決定的に流れが変わったのが54分の阿部投入(栗澤out)。左サイドに入る(馬場が右サイドに回る)。阿部がこのチームに欠けていたもの、つまり強引にでも仕掛けていく姿勢を見せ、左サイドを崩し始める。前半はおとなしかった金沢も再三のオーバーラップをかけ、阿部を支援する。同時に右サイドからは加持が上がり始め(というよりようやく使ってもらい始め)、クロスから阿部がヘッド、わずかにタイミングが合わない。今度はルーカスのポストから馬場がシュート、GKがはじいたボールを阿部が詰めるがDFにブロックされる。
前線の動き出しが乏しく、マイボールになっても足元でボールを回し続けることが目立ってきた緑は、58分に平本out、森本in。続いて64分には桜井に代え平野を投入し運動量のてこ入れをはかる。しかし、東京はプレスを緩めず、ボランチ陣が的確なパスインターセプトを行い、主導権を渡さない。71分には馬場に代えて近藤を投入、攻勢を継続する。そして訪れたビッグチャンス。緑のセットプレーからのカウンターで3対3の状況をつくる。戸川が足を滑らせてもたついている間にケリーが近藤にスルーパス。これを受けた近藤が高木をかわして「ゴールへのパス」。しかし近藤のガッツポーズは猛然と突っ込んできた小林大の執念のクリアに凍り付く。


これ以後、東京の攻撃からリズムが失われる。一方の緑も、森本は茂庭の前に仕事をさせてもらえず、ロングボールはジャーンにはじきかえされ、決定機をつくれないまま、いつもの運動量皆無足元パスサッカーの悪癖にはまりこんでいく。なんとなく引き分けの気配が漂い始めた84分、疲れが見え始めた三浦文に代え梶山投入。投入直後は慎重にプレーしていた梶山だが、機をみて前に出始める。87分、ルーカスがボールを送る。そしてワントラップ後、右足が一閃、ボールは一条の白い線を描いてネットに突き刺さった。あれはレーザービームか、電磁レールガンか、それとも漸減口径式重高角砲であろうか。いや、曲がるボール(デポル戦のドライブシュート)も打てるのだから、サイコガン(古い)か。とにかく、ありえないスピードだった(俺キンスピードキング再開希望)。


そのあと、東京はゲームを壊しにかかる。前線のブラジル人ふたりが本領発揮(笑)。とにかくキープ、キープで緑をいなす。後方では茂庭が周囲の声をかけ、集中を保たせようとする(成長したなあ)。そしてめでたく試合終了。梶山がいまいちハジけてないガッツポーズで声援に応える。アウェイなのにフルコーラスのYou'll never walk alone。夏の終わりのプレゼントを堪能した。


来週はナビスコ準々決勝でふたたび国立。それまでに石川のケガが完治することを祈ろう。左足クロスも使えるようになった加持とのコンビネーション・アタックが、今の東京に欠けている緩急の「急」を与えてくれるはず。そうすれば、ルーカス・ケリー・馬場のテクニックも生きるはず。

追記
加地はジーコさんに拉致られてインドへ修行の旅に出ました_| ̄|○
土肥ちゃんも)


それかから、石川不在をこれまで良く埋めてくれた栗澤は、リーグ戦が再開するためこの試合の後、大学に返却ということで、少なくともシーズン終盤までは青赤ユニホーム姿をみることができない。流通経済大はインカレ出場権をゲットする可能性大なので再会は天皇杯までおあずけかもしれない。もっとも再来週開幕の関東大学リーグ(後期)ではチームの王様として君臨する彼を見ることができる。流通経済大の開幕戦は9月12日14:10、西が丘でキックオフ。相手は中央大。近年レベルが上がっている関東大学リーグも面白いですよ。志のある者よ、集え。


最後にひとつだけ。梶山のシュートをみてイチローバックホームを連想してしまったw自分に、日本人であることを強く感じた。