関東大学リーグ1部第8節 駒沢大学 3 - 0 順天堂大学(今季観戦68試合目)

さて、この秋最初の強行軍。本日は駒沢陸上競技場にて関東大学リーグ2試合、そのあと味スタで東京対神戸の計3試合を観戦する。ちなみに明日も西が丘で関東大学リーグ2試合を観戦予定であり、我ながらなんど物好きな・・・。でもね、やっぱりテレビで見る銀河系より目のまえの緑のピッチなのよ。


その第1試合は駒沢大学順天堂大学の対戦。
駒大といえば、前期リーグでの筑波大との試合が鮮烈な記憶として残っている。
大学王者の名をかけたプライドとプライドのぶつかりあい、双方とも最高の技術・戦術を発揮した試合だった。とくに前半30分ぐらいまでの息詰まる展開には興奮させられた。近くで観戦していた国士舘の控え選手たちの、「冗談じゃねえや、レベル高え・・・」というつぶやきが印象に残っている。
日本サッカーはつまらないから見ない、という海外厨の目玉をくりぬいて西が丘のゴール裏に貼り付けてでも見せてやりたい、そんな試合だった。我が日本サッカーは、実質3部リーグでもこれほどの試合が出来るんだ、と誇らしくなった、それほどの試合だった。J SPORTSで放送しているFAカップではD2やD3のチーム同士の試合を見ることができるが、テクニックや戦術という点ではこちらのほうが上だろう。もちろんフィジカルでは負けているけれど。


そんな駒大に期待しつつ、久しぶりの駒沢へ。前回の駒沢開催のときは間違えて西が丘に行くという大ボケをかましたため、心の中で「駒沢、駒沢・・・」と念じながら大手町(そもそも惰性で三田線に乗ってしまったのが運の尽きだった)で半蔵門線に乗り換える。ここに来るのは4月の女子オリンピック予選以来だが、周囲の変わりように驚く。駒沢大学駅前のマルエツは看板が新しくなっているし、駒沢公園の裏には要塞みたいなマンションができてしまったではないか。海外赴任期間を挟んで6年も暮らしていた街だけにちょっと感慨にふけってしまった。


スタメンだが、駒大は原一樹が大熊の穴(U19代表合宿)で修行中。フォーメーションは中盤がダイヤモンド形の4-4-2。GKが1牧野、DFが13筑城-5鈴木祐-15廣井-4小林、中盤の底に6中後、右に8中嶋、左10関、トップ下26竹内、FWは7鈴木と9赤嶺。
順大は中盤をフラットにした4-4-2フォーメーション。DFが4小宮山-2谷内-13藤本-5藤田、MFが20渡邉-14島嵜-7飯島-26川島、FWが10鴨川と16青木。9堀はケガらしい。こちらは中央大戦で1試合4得点の大爆発を見せた鴨川に注目。


駒大の攻撃の組み立て方だが、去年とは明らかに変化している。中田洋介橋本早十がいた昨季は、中後の展開を受けてのサイド攻撃が大きな武器だったが、今年はまずトップの赤嶺へ当てるところから攻撃を始めている。


今日の試合も、やはり赤嶺へのロングボールから始まった。立ち上がり、駒大は激しくプレスをかけてゲームの主導権を握る。ボールを奪うやいなや不安定な順大DFラインの裏を狙う2トップに正確なフィードを送る。この策が当たる。駒大に最初のゴールが生まれたのは開始直後の2分。裏へ走り込む7鈴木へロングフィードが送られる。下がりながらのディフェンスとなった順大DFが対応にまごつき鈴木がボールを確保、少しドリブルしてから待ちかまえる9赤嶺にグラウンダーのパス、赤嶺が左足でシュート、GKがはじくがボールは詰めていた8中嶋の前へ。これを中嶋がダイビングヘッドでゴール。狙い通りの先制点だった。
その後も、順大DFはお互いの連携に乱れがあり、かつ赤嶺の高さへの対応に苦しんでいる。ヘディングでは全く勝てず、落としたボールへの詰めも遅れがちであり、そこから駒大が攻撃を展開することを許してしまう。駒大はその混乱をつき、18分にはボールをうばったDFが素早く前線に浮き球のパスを送り、これを赤嶺がヘディングで決めて2点目。続いて21分には右CKから6中後がいつもの正確なキック。これを7鈴木が合わせて3点目。前半のうちに試合を決定づける。
その後も前へ出るしかなくなった順大に対しカウンター主体の攻撃を仕掛けるも、ややペースダウンしたせいもあり前半のうちに追加点は得られなかった。
一方の順大だが、駒大が手数の少ない攻撃を指向しているのとは対照的に、中盤でショートパスをつないで攻撃を組み立てようとする。しかし前半は駒大のプレスに引っかかって有効な攻撃を行えなかった。エース鴨川もボールをもらうときの動き出しが遅く、いい体勢でパスを受けることができない。


しかし後半は順大がショートパス主体の組み立てで反撃を試みる。2トップにSHとボランチの片割れ、4人ぐらいがからんで攻撃を組み立てる。しかし明らかにプレッシャーが弱くなった中盤ではパスをつなげても、人口密度の高くなるゴール前ではパスをつなぐ際の各人の判断がワンテンポ遅いためにディフェンスに間を詰められてしまい、なかなかシュートチャンスが得られない。鴨川も前半よりずっと動きが良くなったが、ペナルティエリア内でボールを受けても前を向けず、必然的にボールを戻して苦し紛れのミドルシュートになってしまう。こんなときはサイド攻撃かセットプレー、というわけで左SB4小宮山がオーバーラップからクロス、それに鴨川が合わせてヘディングシュートを放ったがバーを越えた。


一方の駒大はペースダウンしていた。いくら前半飛ばしたといっても疲れ切ってしまうような展開ではなかったので、おそらく意識的に流してきたのだろう。中盤高い位置でのボール奪取を狙わず、代わりに自陣深い位置でボールを奪い、前がかりにならざるを得ない順大に対してカウンターで追加点を狙う。このカウンターがまるで教科書に書かれているようなきれいなカウンターで、少ないタッチ数で次々とフリーの選手を経由してオープンスペースに走り込む味方に正確なロングフィードが渡るのだ。これなら追加点が入るのも時間の問題か、と思ったが決めきれないところはやっぱり日本のチーム(笑)。CB二人しか残っていない順大に対し何度も数的優勢をつくったが、こういうときに限ってフィニッシュにもたつく。もっとも順大ディフェンス陣が必死の守りを見せたせいもある。
リードされたことでかえって迷いがなくなったのか、組織で守ることへのこだわり?を捨て、とにかく目の前の相手に食らいつくという泥臭い守備が意外な効果を発揮していた。それに駒大には運がなかった。バーとポストを叩いたシュートが少なくとも2本、このほかにも惜しくも枠をそれたシュートが数本あった。とくに7鈴木は後半に限って言えば完全なNot his dayだった。
結局、後半は双方得点を上げること無く、合計スコア3-0で駒沢大学の勝利となった。


この試合、駒大に関して言えばもくろみ通りのゲーム運びではなかっただろうか。序盤はミッドフィールドで激しくプレッシャーをかけて主導権をにぎり、順大最終ラインの不安定さをついてシンプルな攻撃をしかける。この策が当たって開始早々先制点を得て、その後も立ち直る間を与えず25分までに3点を上げて圧倒的な優位を確保。後半は前に出るしかない順大に対しある程度引いて守り、そこから効果的なカウンター攻撃をしかけた。このカウンターで追加点を奪えれば満点の出来だったのだろうが。後半のペースダウンについては別に悪いことではないとおもう。むしろ駒大の試合巧者ぶりが伺えた。
ただ、逆転優勝のためには筑波・流通経済の上位2校を直接対決で撃破する必要がある。強力な攻撃力をもつ反面もろい部分をあわせもつ流経大はともかく、すべてにわたってハイレベルな筑波を倒すには攻撃のバリエーションを増やすことが必要だと思う。いかに赤嶺・原の2トップが強力でも彼らだけでは前期わずかに4失点の筑波強力DF陣を破るのは難しいだろう(深井・巻の域にまで達すればまた別だろうが。そういえば終盤でてきた31番の巻は弟?顔が似てるし)。展開力ではおそらく大学N0.1の中後を生かして素早くサイドを攻略する形がつくれればよいのだが(この辺、どうしても去年の中田・橋本の印象が強くて・・・)。
あとは下位校との試合でとりこぼしをしないこと。実力差があるとはいえ、相手のペースになる時間帯というのは必ずでてくる。この時間帯をしのぎ、そしてできるだけ早く主導権を奪回できるかどうか。例を上げれば、今日のような点差をつけた試合でも、1点返されたときに、すかさず追加点を奪って相手を沈黙させられる力があるのか、それともズルズルと苦しい展開に甘んじるのか、運が悪ければ引き分けに持ち込まれてしまうのか。こんなところが後半はずっと気になっていて、実は順大が1点返してくれたら面白いな、と思っていた(駒大関係者の皆さんごめんなさい)。
それからこの日、彼らの先輩深井は見事に逆転ゴールを上げ、鹿島を勝利に導きました。


順大は短い距離でパスを繋ぎ、数人の選手が連携して攻撃をつくっていくことにこだわっていたが、これは正しいやり方だと思う。誰かさんのおかげで15秒攻撃だのダイレクトプレイだのというのが一世を風靡しているが、これはどんなチームでも行えるものではない。ダイレクトプレイを成立させるためには、敵の配置の隙を素早く読み取ってそれを利用できる戦術眼、スペースを利用する味方に早い正確なパスを供給できるテクニック(往々にして走り込む選手への長めのパスになりがち)、そして攻撃に参加する数名が一瞬のうちにイメージを共有する必要があるなど、選手に高い能力を要求する。そして選手のテクニック差がもっとも如実に現れるのがこのロングパス能力だと感じている。順大でこの種の資質を有していると思ったのは4小宮山だけだった。対して、テクニックの平均レベルが向上にともない、ショートパスをつないで組み立てるのは十分な練習を積んで連携を高めれば普通のチームでも実践可能なのではないか(選手経験がないため、推測ばかりになるが)。
それから序盤はディフェンスがボロボロで、ラインで守るのではなく、2トップ+トップ下にタイトなマークをつけ、その後ろで一人余らせて泥臭く守った方が良いのではないかと考えたが、あえてその手をとらなかったのはなぜだろうかと考えてみた。そうするとやはり順大は目先の結果にある程度目をつぶって、サッカーの質の向上をはかっているのではないかと思える。とくに今シーズンは降格がないために理想を追求する余裕がある。


コンパクトに、コレクティブに、そしてクリエイティブにプレイするというのは、自分達で思っている以上に日本人のサッカー観に深く染み付いているような気がする。そうでなければ、なでしこJAPAN(この愛称をたいした違和感なく使っている自分が怖い)のサッカーにあれほど多くの人が共感を覚えるはずはないのだから。