関東大学リーグ1部 第14節 筑波大学 4 - 3 流通経済大学(観戦92試合目)

長かったシーズンも今日でおしまい。西が丘は最終戦を見ようとする人と、この試合後に行われる閉会式に出席するために集まった1部2部全16校の選手・関係者でいつもの2倍ぐらいは来ているのでは? 売店のおばちゃんはここぞとばかりに大はりきりである。記者席にはまたもゴタケさん発見。代表がひとまず片付いたのをいい事に、国内のいろんな試合を見まくっているらしい。ああ、うらやまし。


第1試合は駒澤対国士舘。両校とも前節で優勝の可能性が無くなっているので、インカレに向けた調整試合という位置づけか。駒澤が中盤での崩しやサイドを使った攻撃を仕掛けており、ここ数試合とはちょっと違ったサッカーをしている。やればできるじゃねえか。国士舘はシーズン最後まで試行錯誤を繰り返した。試合は2-1で駒澤の勝ち。


次の試合が始まるまで、関東大学リーグに関するアンケートとやらに記入していた。「あえて膿を出すため、関東大学リーグで問題と考えられる項目すべてに○を付けてください」という趣旨の質問があり、選択肢に「応援団がウザい」というのがあったのには笑った。いや、別に居たっていいよ。関係者は人気のなさに危機感を感じているようだけど、一時の平山フィーバーみたいにわけのわからんのがぞろぞろやってくるのはいやだなあ。それよりもっとサッカー好きにアピールすべし。上位校同士の対戦なら結構面白いし、中下位同士の試合でもサプライズ(鴨川の一試合4得点、しかも2回とか)があったりする。


バックスタンドに陣取る応援団には、控え部員総動員(筑波、RKU、駒澤)、むしろOBぽい人が主力(国士舘)、応援団らしい人が誰もいない(中央とか)など、各校でかなり差がある。ガラの悪さなら国士舘、人数なら筑波or駒沢、ダンマクの多さならRKU、誰もいない系の筆頭は中央といったところ。亜細亜大あたりはときどきチアガールが来ます。それから筑波あたりは地元少年サッカーチームを招待している。そういえば、昔バモバモで戸田が筑波在学中に少年サッカーのコーチをしていたって言ってたっけ。


そして第2試合。リーグ戦の優勝が決まる大事な試合である。筑波、流通経済(以下RKU)両校とも勝ち点では並んでいるが、得失点差で筑波が首位にいる。つまり筑波は引き分けでも優勝できるが、RKUは勝たねばならない、そういう状況にある。スタンドには栗澤目当てか、青赤な人が数名。私はバック中央ややRKU寄りに座る。この時間になると、続々と選手関係者が集まってきて、スタンドは結構一杯になる。


筑波のスタメンは攻撃的MFが左右に開く4-4-2。

   11平山 7鈴木達(c)
 8藤本         9秋田 
   13岡田  10兵働
14阿部翔 22石井 5秋葉 2川端
       1来栖

本来のキャプテン"ソルジャー"植松は欠場。右SBは2川端が埋める。前節は負傷で後半のみの出場となった10兵働が復帰。


RKUのスタメン。あえていうなら、中盤がダイヤモンド型の4-4-2フォーメーション。

  8船山    11杉本
     10栗澤
 23瀧原     5阿部嵩
     6中島
4小沼 2鎌田 26飯田 25赤井
     21飯塚

最近スタメンで出ているFW24”REAL”難波が警告累積のため出場停止。代わりに右MFの8船山がトップに上がり、空いたポジションに本来左SBの5阿部嵩が、左SBには控えだった4小沼が入った。船山と阿部は、元々やっているポジションから一つ前の、それも逆サイドにポジションを代えている。このへん、選手のどのあたりの特徴を引き出そうとしているのだろうか、考えると結構面白い。


筑波、RKU両校とも応援団は多い。筑波はいつもの少年サッカーチームの面々、おじさんおばさんが多いのはRKU。マスコミが多いのは平山出場のためか。盛り上がったところで14時10分、キックオフ。


開始1分、筑波の右MF秋田がまず挨拶がわりのミドルシュート。お返しとばかりに、3分には栗澤のFKからFW杉本がヘディングシュートを放つ。両チームともバランスを重視した慎重な立ち上がりの中で、ジャブの応酬。しかし、次第に筑波が優位に立ち始める。


兵働・今田を中心としたプレスでボールを奪い、藤本・秋田の両サイドに展開、平山がポストに、鈴木達がスピードを生かした裏への抜け出しを狙う。そして兵働が攻め上がってきて攻撃に絡む。この日の兵働は出色の出来で、ピッチの中央を広範囲に動き回り、セントラル・ミッドフィールダーという言葉そのもののような働きをしている。スコールズを彷彿とさせる、といったらほめすぎか。サイドバックも積極的に攻撃参加する。そして、ポゼッションで上回りゲームの主導権を握る。4分にはFKから平山が頭でゴール前に流し秋田が飛び込むがGKがキャッチ。9分には右サイドに流れた鈴木達がゴール前の平山にクロスを入れるが打ち切れず。


一方のRKUは押されながらもなるべくラインを下げず、中盤も早めのチェックで筑波の攻撃を制限する。そして杉本のスピードを生かしたカウンター気味の攻撃を狙う。16分にはオーバーラップしてきた筑波左SB阿部翔のパスミスからカウンターになり杉本がCK獲得。CKの流れからゴール前に上がっていた長身DF飯田が胸で落としたところに左MF瀧原が飛び込みシュートを打つがバーを越える。20分にはロングフィードから杉本が抜け出し、飛び出したGKを体勢を崩しながらかわしグラウンダーでゴールに流し込もうとするが、球足が弱くDFにクリアされる。


23分にはミドルシュートを筑波13今田が体を張ってブロックするが、球がタマに当たったらしく、レフェリーが「落ちたか?落ちたか?」と腰骨あたりを叩いて治療。これがきっかけというわけではないが、25分過ぎから筑波の攻勢が一段落する。序盤をしのいだRKUは守備が安定する。コンパクトな陣形を保ち、筑波MF陣の動きを規制する。FW鈴木達がいつものようにスピードでかき回そうにも、DFラインのバランスが保たれているためスペースが見つからない。平山へのロングボールは長身DF26飯田が体を張って防ぐ。というか前半はむしろヘディングの競り合いで平山に勝っていた。


26分には筑波CB22石井が無念の負傷退場。担がれながらロッカールームへ下がる。代わりに3高山がCBに入る。30分過ぎからは中盤のパス回しにリズムが出てきたRKUが主導権を握る。快足FW杉本が右サイドに流れ、起点となる。2トップがつくったスペースに阿部嵩・瀧原の両サイドMFが入り込み、ゴールを脅かす。組み立ての中心となるのはもちろん栗澤。
RKU最初の決定機は36分。右に流れた杉本が高速ドリブルでエリア内に侵入、筑波DFを振り切ってゴールライン近くまでえぐってマイナスの折り返し。2トップの片割れ8船山が左に流れてDFを引きつけて空いたスペースに上がってきた左MF瀧原が折り返しに合わせるがポスト直撃。この跳ね返りを船山がなんとか押し込もうとするがゴール左にそれる。
しかし38分、FKからの流れでエリア左サイドへのグラウンダーのパスに飛び込んだ6中島を交代で入ってきた筑波CB3高山が足をひっかけて倒してしまいPKとなる。栗澤がこれを落ち着いて決めてRKUが先制する。


ハーフタイムになると、各大学の選手・関係者・先輩後輩・その彼女たち?が続々と集まってきてスタンドが結構埋まってくる。隣に座っていた兄ちゃんの携帯の会話が耳に入る。RKUのFW杉本の高校の後輩らしい。


後半開始直後にRKUがビッグチャンスを得る。46分、カウンターになり栗澤がドリブルで前進する。中盤の戻りは間に合わず、筑波DFラインはズルズル下がる。さらに栗澤は前進し、ゴール前、ミドルが打てるレンジに侵入。栗澤に引きつけられる筑波DF陣。左には23瀧原が上がってくる。しかし栗澤の選択は右へのパス。そこには栗澤がDFを引きつけたおかげで杉本がフリーになっていた(これ、栗澤の得意のかたち)。杉本はスピードを生かして一気にエリア内に侵入しGKと一対一でシュートを打つが、おそらく逆サイドのサイドネットを狙ったシュートはゴール左にそれてしまう。


このあと、RKUのリズムが徐々におかしくなる。
そして筑波はこの機会を見逃さなかった。選手の動きが突如として活性化し、RKUは中盤でもDFラインでも対応が後手後手に回り始める。そして51分。中央サークル付近で得たFKを9秋田が左サイドの藤本へフィード、藤本がドリブルでマークを外したあとニアサイドにクロスを入れる。これに飛び込んだ左SB阿部翔のシュートはGK飯塚がブロックするが、跳ね返った先には中央に陣取る平山が・・・。平山は右足で蹴り込み、筑波が同点に追いつく。
筑波はたたみかける。直後の52分、左サイドから阿部翔がアーリークロスを送ると、中央で平山がヘッドで落とす。ぴったりのタイミングで走り込んだ兵働が決めてあっという間に逆転。
続く55分、RKUはなんとか筑波の勢いを止めようと中盤が走り回るが、タイミングの良い動きにあっぷあっぷの状態で、とうとう瀧原がゴール前25mほどの地点でファウルを犯す。絶好の地点で得たFKを藤本が左足で蹴ったボールは綺麗なカーブを描いてゴール右隅に吸い込まれた。
パニックに陥いるRKU。無慈悲に畳み掛ける筑波。58分、藤本の左CKに平山がヘッドで合わせ、4点目。
7分で4点。ゲームの流れというものを知り尽くしたような、怒濤の攻撃だった。


勝つことでしか優勝できないRKUは窮地におちいった。
63分には一気に2枚を交替する(左MF瀧原out9岡本in、右SB赤井out18藤村in)。
18藤村が左MFに、栗澤が右MFの位置に、玉突きで阿部嵩が赤井が抜けた右SBへ下がる。岡本がFWに入って3トップ気味になり、なりふりかまわず点をとるシフトを引いた。しかし筑波は守備陣のバランスが良く、またたとえゴール前に迫られてもDF陣がいつもの集中力を見せ、チャンスらしいチャンスをつくらせない。筑波は75分にフォアチェックに走り回ったFW鈴木達を下げて18富岡を投入、前からのプレッシャーを継続すると同時にカウンターを狙う姿勢を崩さない。


焦るRKU。両SBはもちろん、CBまでが機を見て攻め上がってくる。彼らは4点取らねばならないのだ。79分にスルーパスに反応してシュートを放ったのはなんとCB2鎌田だった。
83分にはこの日の殊勲者平山が下がり、17佐々木が入る。この時間帯になるとさすがに筑波も引き気味となり、RKUが攻撃を継続するが、どうしても筑波守備陣を崩せない。残り時間も5分を切り、誰もがこのまま筑波が勝つだろうと思った終盤、RKUがほとんど意地だけで反撃にでる。


88分、直前に交替で入ってきた28武田(8船山out)が一瞬の隙をついてDFの間を抜けエリア内に侵入、これを阿部翔が後ろから足を引っかけて倒し、一発退場となる。これで得たPKを再び栗澤が決めて2点差。
続いてロスタイムに入った直後、一人少なくなって珍しくばたばたし始めた筑波DFラインの裏へ栗澤がスルーパス、これに走り込んだ9岡本がけり込んで3点目。バックスタンドの応援団は俄然盛り上がったが、とき既に遅し。タイムアップの笛がなる。


筑波、3年ぶりの優勝となった。歓喜する筑波イレブン。笛と同時にボールを蹴り上げるキャプテン中島。憮然とする栗澤。すでに敗色濃厚だっただけに、RKUで泣く者はいなかった。同時に納得した表情を浮かべている者はいなかった。
バックスタンドの応援団に駆け寄る筑波の選手たち。群がる平山目当てのマスコミ。一方のRKUイレブンは栗澤がリードして応援団に挨拶。みんな、大人に押さえつけられたやんちゃ坊主のような、怒りを含んだ表情を浮かべていた。さばさばしているのは監督ぐらいか。


勝敗を分けたものは、やはり経験としかいいようの無い、形のないものだった。筑波は関東大学リーグで最多優勝を誇る名門であるにも関わらず、ここ2年間は駒澤の前に悔しい思いをしてきた。その思い全てをはき出すかのように7分間で4点を強奪し、試合を決めてしまった。彼らはどこかで感じていたのだろう、今がチャンスだということを、ここが勝負どころだということを、今ならRKUが支えきれないということを。思えば、3点差というのは安全圏だった。RKUの攻撃力を考えれば後半1失点は覚悟のうち、プラス交通事故で1点、百歩譲って奇跡が起こっても計3失点、それでも同点で引き分け。つまり筑波は優勝できる。結果を出すために必要な点数を取りきってしまう、その力が筑波にはあった。


RKUはそのナイーブさをさらけだしてしまった。創設以来初の一部昇格、そして勢いのままに突っ走って優勝まであと一歩のところまで来た。しかし、それまでに少なくとも2度あった決定機を決められず、魔の7分間へ。あの7分間だけ、すべてが乱れていた。そして流れを変えられる、あるいは流れを壊すプレーヤーがいなかった。ただ大きくクリアし、相手陣内でキープを試みる、奪い返されてもなるべくゴールから遠い位置でファールでもいいから止める。それだけでもだいぶ違ったはず。そうしていれば、少なくとも4点立て続けに取られることは無かったのでは。極論すれば、兵働なり藤本なり筑波のキープレーヤーを削ってしまっても良かったのだ。だが、できなかった。気づいた者はいたかもしれないが(マーキングのズレを埋めるべく奔走していた中島とか)、チームの意思として行うことはできなかった。


2点を返し意地を見せたものの、それは終盤になって筑波の集中力が切れた結果であって、点差がもっと小さいなら最後まで筑波は集中力を保っただろう。RKUがパスやシュート、ドリブルのテクニックやフィジカルで筑波に劣っていたとは思わない。むしろ勝っていたかもしれない(守備はちょっとあれですが)。だが結果は完敗。思えば前節、国士舘に引き分けてしまい筑波に勝ち点で並ばれてしまったことも痛かった。引き分けでも優勝できるなら、終盤の反撃も意味を持ったのに。一つの取りこぼし、一つの失点が勝負どころで決定的に効いてくるリーグ戦の恐ろしさ・難しさをRKUは感じたのではないだろうか(私のような野次馬にはビールの肴なのだけれど。1000円でここまで楽しめちゃうのだから関東大学リーグはえらい)。大半の時間を互角に渡り合っていながら、ほんの数分、訳のわからないものに押し流されて、栄冠を失ったのだから、栗澤が憮然としているのもわかるような気がする。ともあれ、彼らの冒険は終わった。


最後の表彰式。スタジアムはまるで卒業式のような雰囲気である(1部所属の選手たちはまだインカレが残っているが)。スタンドで選手たちの会話を小耳に挟んでいても、進路(4年生)や来年の抱負(下級生)、どんな新人が入ってくるかの噂話が聞こえてくる。裏方に徹した運営委員の学生と選手たちが語らう。「4年やってて今日、初めてスタンドで見た」という女子学生も。スタンド越しに選手と握手するものもいる。
1部2部全16校の選手たちが入場し、成績が発表される。来年から12チーム制になるため、悲喜こもごもの入れ替え戦は今年はなし。2部から4校が昇格する。T・O・K・A・Iの東海大は勝ち点1差で惜しくも昇格を逃した。ベストイレブンに各賞の表彰。得点王は順大の鴨川。1試合4得点2回!にくわえ、なんと最終節でもハットトリックを決め、計14点でダントツである。MVPは筑波の兵働が選ばれた。J入りが噂されるが、どこへ行くことやら。


彼らのとってJとは夢の舞台なのだろうか。今年、夢を叶えJ入りした選手を上げれば、わが東京の塩田はカップ戦要員としてナビスコ決勝進出に貢献したが、おいしいところを土肥にさらわれた(笑)。駒澤のサイドアタッカー中田洋介は仙台入りし、試合出場を果たしたが高卒ルーキーにポジションを脅かされていると聞く。同じ駒澤から大宮入りした橋本早十はいまだ出場がかなわない。来季、東京入りする栗澤も、ライバルは目白押し。そう、夢を叶えた瞬間、現実との戦いが待っているのだ。


ともあれ、サッカーは続く(ば〜いFootball Anticlimax)。