J1 2nd 第11節 アルビレックス新潟 1 - 3 柏レイソル(観戦93試合目)

中越地震のため、延期されていた試合が開催された。しかし、新潟県内の交通網が寸断されており、おまけにビッグスワンの駐車場が陸自炊き出し部隊の駐屯地と化しているため、場所を東京・国立競技場に代えての開催となった。客はやっぱり少なくて一万人強ぐらいか。しかも1/3は柏サポーターであろう。ただ新潟サポーターの中にはシーズンパスを持っている人(それも家族連れ)が多く見られた。この状況のなか、新潟からきたのだろうか。すごい。スタンドには震災がらみのバナーが目立つ。笑ったのは柏サポが掲げていた角栄フラッグ。キックオフ前にミキタニがなんと5800万円を義援金として寄付するというアナウンスあり。うーん、しない善よりする偽善とはこのことか。


新潟は3-4-3フォーメーション。

       オゼアス
 ファビーニョ   エジミウソン
鈴木慎            寺川
    本間     山口
  松尾   喜多   丸山
        木寺

控えは野沢、鈴木健、梅山、安、上野。


柏は4-4-2フォーメーション。

     玉田  宇野沢
 大野          増田
    明神(c)  大谷
近藤 永田 パラシオス 波戸
       南

控えはノグチピント、薩川、小林、谷沢、矢野。

序盤から柏がラッシュをかける。ラインを押し上げコンパクトな陣形を保ち、かつ2トップが前線からボールを追いかけ回す。柏はポジションチェンジも活発で両SBも積極的な攻め上がりを見せる。例えば右サイドなら増田がキープして波戸がオーバーラップするのはもちろん、増田がサイドに流れて波戸が内側に切れ込んでいくパターンもある。左サイドでも同様で大野のキープから近藤が中に入ってきてゴール前に飛び出すシーンも見られた。その他にも玉田が引いてきて、代わりに大野が上がったり、大谷がゴール前に飛び出したりと積極的に主導権を握ろうとする。


そして早くも開始5分、柏が先制点を上げる。右サイドをオーバーラップした波戸がゴール前にグラウンダーのクロスを入れる。新潟DFのクリアボールが中に入ってきた波戸のところに戻ってしまい、波戸は横にいた大野に渡してそのまま前進する。大野がちょっとためて玉田に縦パスを送ると、玉田がスルー、ボールはゴール前に走り込んだ波戸に届く。新潟守備陣は完全にボールウォッチャーとなってしまい、きれいな縦のワンツーパスで抜け出た波戸のシュートで柏がまず先制する。
続く6分には玉田が頭で落としたところに大野が飛び込むがわずかにタイミングが合わずシュートを打てない。15分には玉田が中盤でパスカットからミドルシュート、17分には増田がバックパスをかっさらってドリブルシュートを放つが、どちらも枠を捉えられない。
22分には明神のパスカットから大谷を経由してオーバーラップした波戸につながり、波戸のクロスに大野が頭で合わせるがシュートは惜しくもネットの上に落ちる。


一方の新潟は、柏の出足の速いプレスに苦しみ、なかなか攻撃の形を作れない。トップに張るオゼアスにいったん預けてサイドの鈴木慎吾・寺川への展開やファビーニョエジミウソンが裏への抜けだしをはかるという狙いがかろうじて見えるものの、パスの出所が押さえられている上に、パラシオスを中心とする柏DF陣の早い潰しの前に肝心のオゼアスがボールをキープできない。柏に押し込まれて5バック状態になり、サイド攻撃もままならない。


25分すぎになると、柏のプレッシングが一段落し、なぜかDFラインも下がり気味になったため中盤にスペースができはじめる。するとオゼアスにボールが収まるようになり、新潟の攻撃にリズムが出てくる。25分にはオゼアスのキープからファビーニョを経由して鈴木慎がオーバーラップしクロスを上げるがDFにクリアされる。その流れからのスルーパスファビーニョが走り込むがGKが先にクリア。30分にはようやく攻撃参加した寺川がサイドを突進してファウルで止められ、FKからオゼアスがシュートを放つ。


しかし、柏は永田を中心とした最終ラインの守りで新潟の攻撃をしのぎ、カウンターを狙う。そして38分、右サイド35mの位置から、玉田の低く早いFKがニアサイドに入る。これを近藤が頭で触って微妙に方向の変わったボールがゴールに吸い込まれ、柏はいい時間帯に追加点をあげる。その後も、42分にカウンターから玉田がシュートを放つが木寺がなんとかクリア。柏2点リードで前半を終える。


新潟は後半開始からボランチを本間から安英学へ代え、いるのかいないのかわからなかった寺川を下げて鈴木健太郎を入れて4バックに変更する。こんな感じ↓

       オゼアス
   ファビーニョ
鈴木慎      エジミウソン
    山口   安
鈴木健 喜多 丸山 松尾
       木寺


オゼアスがトップに構え、その周りをファビーニョが動き周り、スピードでかき回す。エジミウソンが前半よりも右サイドを攻略するという意識が強くなり、ここを起点に攻撃を組み立てる。47分にはそのエジミウソンが近藤を振りきってクロスを送り、これにオゼアスが合わせるがヘディングが滑ってしまい、ボールはあらぬ方向に流れてしまう。49分、エジミウソンと山口のワンツーからオーバーラップした松尾がクロスを上げるが柏DFがクリア。51分には中盤まで下がったオゼアスが、体躯の強さを生かして明神との競り合いに勝ちボールを奪取、右サイドのエジミウソンにパスを送る。これを受けたエジミウソンが一気にゴール前に走り込んだオゼアスに早めのタイミングでクロスを送るが惜しくもオフサイド。55分にはエジミウソンがクサビとなり、上がってきた松尾がミドルシュートを放つがポストを直撃する。


なかなか主導権を取り戻せない柏だが、玉田を中心としたカウンターを狙う。そして57分、新潟バックラインの緩慢なパス回しを玉田がかっさらう(このとき、宇野沢や大野もまるではかったかのように連動してプレスをかけていた)。玉田はDF3人を前にしながらドリブルで持ち込み、ペナルティアーク付近から得意の左足シュート、これがゴール右に決まる。


追い込まれた新潟は攻勢を強めるが、なかなか決定的な形をつくれない。65分にはファビーニョゴールライン近くまでえぐって折りかえすがオゼアスが打ち切れない。
柏は66分に増田から谷澤にチェンジするが、谷澤は独りよがりなドリブルに終始し新潟守備陣に止められ、しだいに流れから消えていく。
69分には新潟のカウンターから鈴木慎吾がシュートを打つがDFにブロックされる。


71分、攻め込んでいながら得点が生まれない新潟はオゼアスを下げ、切り札?上野を投入する。直後、エリア内でエジミウソンの浮き球パスをファビーニョと永田?が競る。永田が先に頭に当てたように見えたが、ボールはファビーニョの足元にこぼれ、これを収めたファビーニョの反転シュートがゴール左に決まり、新潟がようやく1点を返した。
この後も新潟が上野とファビーニョを中心に攻め込む。77分にはスローインを上野が落としてファビーニョがシュート。直後にはファビーニョがドリブルで突進するが止められる。が、焦りからか次第に強引なプレーが多くなり、逆に玉田を中心とした柏のカウンター攻撃を浴び、宇野沢に決定的なシュートを打たれる(木寺がCKに逃げる)。
この後、柏は交替(近藤→小林、パラシオス→薩川)やボールキープでうまく時間を使い、ロスタイムも危なげなく乗り切って、タイムアップとなった。

新潟は守備面での集中力を欠いたことが全てではないだろうか。
とくに前半は柏のポジションチェンジを織りまぜた速いパス回しに付いていけず、ボールウオッチャーとなってしまう場面が目立っていた。攻め込まれたとき、鈴木慎・寺川の両WBが内に絞らずそのままズルズルと下がって5バックになってしまうので、山口の奮戦にもかかわらず中盤でのプレスも効かず、柏の蹂躙を許す結果となってしまった。攻撃面では、オゼアスを意識しすぎる場面が多かったので、もっとサイドを使いエジミウソン・寺川とファビーニョ鈴木慎吾で崩していくことを意図してもよかったのではないだろうか。
後半、4バックにしてからは守備のバランスが良くなり、サイドの崩しとファビーニョの飛び出しがうまく機能し始めていただけに、3失点目の原因となったパスカットはあまりにも痛かった。


柏は貴重な勝利で残留に一歩前進した。これでC大阪に3試合を残して勝ち点5差がついたため、早ければ次節にも残留決定となる。序盤にラッシュをかけて先制、前半のうちに追加点、後半の早い内にだめ押しと、得点経過だけを見れば理想的なゲーム運びだった。さらに試合内容を見ても、守りではコンパクトに保たれた陣形で統制のとれたプレスをかけ、攻撃ではテンポ良くパスを繋ぎポジションチェンジも織り交ぜるなど、現在15位にいるのが不思議なくらいのいいサッカーをしていた。優勢だったのにもかかわらず、前半途中から妙にラインが下がってしまったり、後半はだいぶバタバタしたりと不安定さをのぞかせるシーンもあったが、永田を中心にうまくしのいでいた。なによりも局面局面でのプレーぶりにチームとしての意思が感じられ(3点目のきっかけとなったパスカットが典型)、今季見たなかではダントツのできだった(なぜか9試合も柏をみている・・・)。


試合中から、前節、客席に挨拶に行くのをいやがった玉田とパラシオスに対して声援が送られていたし、選手の側も波戸が全員を促して客席の近くまで行って挨拶するなど、ぎくしゃくしてしまった雰囲気をなんとかしようとする場面がみられた。
この後は、清水・浦和・大分という対戦になるが、今日のサッカーができれば入れ替え戦行きは回避できるのではないだろうか。