第83回 天皇杯 5回戦 ベガルタ仙台 0 - 1 FC東京(観戦94試合目)

正直に告白しよう。私がここに来た理由。その半分以上は「牛タン」である。
前日夜から食餌制限!をして体調を整え、職場の東北大OGに事前取材までして万全の準備で望む仙台遠征。


彼女曰く、

  • 老舗系あるいは個人商店系は固めに焼く傾向あり。嫌う人もいる。
  • 比較的新興のチェーン店系はジューシー柔らか目の仕上がり。一般向け。
  • ボリュームは東京では考えられない量。
  • 芯タンはうまいが、量が限られていてすぐなくなる。
  • 塩味もいいけど、味噌味もなかなかいける。
  • もう寒いから着込んでいきなさい。
  • おみやげはわすれないでね。

ということであった。


11時過ぎに仙台駅着。牛タン通りなる牛タン屋が5軒ぐらい並んでいる一角に行くと、やはり青赤な人たちがぞろぞろと並んでいる。早めにスタジアム入りしたかったので、すぐ入れそうな店を探す。「たん助」なる店で牛タン定食を注文した。牛タン焼き(塩味)、麦飯、スープ、漬け物、とろろで1260円なり。これは固め系の焼き方で、個人的にはご飯のお供というより酒のつまみによさそうな感じだった。


満腹になったところで、仙台スタジアムへ。ここへ来るのは3度目だが、アクセスの良さといい、見やすさといい、やはりいいスタジアムである。さすがに11月になると気温が低く、アウェイの自由席は風が吹きつけてかなり寒い。しかし、地元の人は結構ビールを買っていくんだよね。


仙台サポーターはリーグ戦とは違ってゴール裏に陣取る。選手入場時にはたすきが列をなしビッグフラッグが出てきてビジュアル効果満点である。ただ、メイン・バックの指定席は空席が目立ち、トータルでは半分ぐらいの入りか(公式発表は10586人)。


仙台のスタメンはこんな感じ。

  大柴   佐藤寿人
梁  シルビーニョ(c) 中田洋介
    菅井  熊谷
 小原   根引 セドロスキー
      高桑

控えは、小針、千葉、石井俊也、関口、萬代。
3バックの中央で起用されていたセドロスキーが右ストッパーにコンバートされている。


東京はいつものメンバー。

    ルーカス
戸田  ケリー   石川
  今野    三浦
金沢 茂庭  藤山 加地
     土肥(c)

控えは、塩田、増嶋、梶山、阿部、鈴木規郎
ギックリ腰のジャーン、ひざ痛の馬場が欠場。


予想通り、東京がボールを支配し、仙台は守りを固めてカウンターを狙う、という展開になる。


仙台の守りは、まずセドロスキーがルーカスにある程度マンマークで付き、根引が余るかたちで最終ラインを構成する。
ケリーに対しては、菅井・熊谷の守備的MF二人がしっかりマーク。サイドに流れたら中田・梁が付く。いったんマークに付いたらある程度追っかけるという約束でもあるのか、とくに中田は逆サイドまで追っかけていくストーカーぶりを見せた。
また、梁・中田の両WBがサイドのケアだけではなく、状況によっては中にも絞ったポジショニングを見せ、中盤でのプレス網を維持している。
もちろん、前の3人もパスコースの限定などで積極的にディフェンスに参加する。
この策が大当たりで、ルーカスはいつものようにタメをつくれず、ケリーはボールこそ持てるものの、徹底的にまとわりつかれて効果的なパスが出せない。


仙台はだいぶ気合いが入っている感じで、集中力がとぎれず、マークについたらファウルも辞さず、かなりガチガチと当たってくる。しかし、これが主審の松尾さんの神経質なジャッジとミスマッチで、実によく笛がなり、仙台イレブン(とサポーター)はかなりいらついていた。


序盤から東京は右サイドの石川・加地を中心として仙台陣内に侵入する。しかし、仙台守備陣は、石川のスピードに手こずりながらも何とか対応し、クロスに対してはセドロスキーが制空権を維持し、安易にシュートを打たせない。


開始5分、まず今野が挨拶がわりのミドルシュートを放つ。続く6分、ルーカスが角度のない位置からシュートするが高桑にクリアされる。


仙台は速いカウンター攻撃を見せる。カウンターといっても単なる放り込みは少なく、システマチックに動きながらパスをつないで攻め上がる。起点となるのはシルビーニョ。例えば、

シルビーニョがサイドに流れた大柴にくさびのパス→大柴がオーバーラップしてきた左WB梁に落とす→梁がある程度サイドをえぐってクロス→真ん中に佐藤寿人!(ある程度タメをつくれれば、ボランチシルビーニョもゴール前に入ってくる)

という感じなのである。


東京が前がかりでスペースがあるせいもあり、仙台はわりとチャンスをつくれていたが、東京は茂庭・藤山を中心にゴール前の選手をしっかりマークしてシュートを打たせなかった。
前半、仙台のシュートらしいシュートは10分、大柴がサイドに流れて折り返し、真ん中で佐藤寿人が合わせたものだけだった(これは土肥の正面)。


東京は前半の間、一方的に攻め込む。
11分、石川の右CKにルーカスが頭で叩き付けるが、叩き付け過ぎでバウンドしたボールはバーの上へ。
17分には、石川が小原を振り切って右サイドをゴールライン際までえぐりグラウンダーの折り返しを送る。これにゴール前に走り込んだケリーが合わせるが高桑がクリア。
18分、エリア内でだめならばと、加地のクロスのクリアボール(またもセドロスキー!)を拾った金沢がミドルシュートを狙うが枠に飛ばない。
30分、ルーカスが倒されて得たFKを石川が直接狙うがゴール右上に外れる。
33分、石川の右サイドからのFKをエリア内ファーサイドにいた今野が胸トラップしてシュートするが、高桑がCKに逃げる。


という感じにチャンスはつくっているが、結果がでない。
前半ロスタイムにはロングパスに戸田が抜け出すが、放ったシュートは宇宙開発。
無得点のまま前半が終了した。


後半開始時のメンバーチェンジはなし。
しばらくは東京の攻勢が続くがあいかわらず決定機をつくれない。
46分、金沢のクロスが宇宙開発。47分、金沢とのワンツーで抜け出た戸田のクロスは直接GKへ。
50分には、ルーカス得意の「DFが伸ばした足に当たって戻ってくるドリブル」からシュートを放つが枠をとらえられない。


後半になっても仙台は集中力を保ち、全員の戻りが早く、守りに人数をかけてタイトなマークを崩さない。いつまでたっても点が入りそうにない雰囲気がただよっている。こりゃ、パスを回して仙台の足が止まるのを待つしか無いなと思っていたら、ここでハラヒロミが動く。


53分、なんと三浦文丈に代わって早くも阿部投入。まずは阿部が左サイドにまわって、戸田がFWの位置へ、そして中盤の底は今野が一人で支えるかたちになった。
まさか仙台にカウンターさせておいてクロスカウンターで得点を狙う算段かよ、と思ったらその通りの展開になった。それもスリルたっぷりのかたちで。


早速、地元サポーターの大声援を受けて仙台の攻勢開始。サイドに振って今野を引きずり出せば真ん中のスペースが空くため、どんどん東京ゴール前に進出できるのである。
55分には右ショートコーナーからのクロスに根引が頭で合わせるが土肥がキャッチ。
続く56分は本日最大のピンチ。左CKに土肥が飛び出してしまうが、仙台の誰かの枠内シュート(わからんかったorz)を戸田がクリアー!ナビスコ決勝再びという感じである。


東京もクロスカウンターで反撃する。
59分には戸田の落としから金沢がミドルシュートを打つがおしくもゴール左にそれる。
(62分には、どこか痛めたのか茂庭が増嶋と交代)
63分、再び金沢がミドルを狙うが高桑がキャッチする。
続く64分にはケリーが入れたボールにルーカスが合わせるが高桑がCKに逃げる。
65分、三たびの金沢がミドルを放つが高桑ががっちりキャッチ。


連続するチャンスをものに出来ないうちに、次第に主導権は仙台に移っていく。
66分、大柴のパスを受けた中田洋介が右サイドをえぐってクロスを入れるが、これには誰も合わせることができない。
72分には大柴のクロスを佐藤寿人がシュートするが枠に飛ばず。
直後、菅井に代わって新人FW関口を投入し3トップに変更する。シルビーニョボランチの位置まで下がる。その関口は入ってくるなり、スピードドリブルでゴール前に突進し、対応した金沢がなんとかCKに逃れる。
77分、左サイド梁がゴール前を横切るようなクロスを入れるが、シュートを打てず。
この時間帯になると、カウンターの打ち合いというより東京が一方的に攻め込まれている感があった。とにかく、ケリーもルーカスもボールをもらいに下がってしまっていて攻撃開始点が後ろになり、なかなか敵陣にボールを持ち込めない。両サイドMFも今野一枚の真ん中をケアするため、下がり気味になる。クリアボールも仙台に拾われ、そこから二次攻撃を浴びてしまう。


85分、今日は力を出し切れなかったケリーに代わり、やっとこさ梶山投入。いつの間にか戸田が左サイドに戻っていて、阿部とルーカスの2トップになっていた。


梶山はボランチに入るものだと思っていたら、わりと前目のポジションを取る。これが効いた。梶山が入った直後、仙台が再び攻め上がろうとするが、なんだかわからないがセンターサークル付近から仙台ゴールに向けてふわりとロビングが飛ぶ(大柴がバックパスをミスったらしい)。このボールがそのままいい具合に裏へのフィードになった。このときルーカスと梶山がサイドに開こうとしていて、仙台3バックの間隔が空いたところに阿部が走り込む。難なくボールに追いついた阿部が勢いをそのままに高速ドリブルでゴール前に進出する。根引の対応が後手に回り、高桑の飛び出しをかわした阿部のシュートがゴールに吸い込まれた。86分、ようやくの先制点だった。そのままゴール裏に駆け寄る阿部。なんか、その脇で戸田が転げていたがなにがあったのか?

追記:スーパーサッカーのリプレイでは、阿部のドリブルに対応した根引が足を出してボールに当てているが、それがそのまま阿部に戻ってしまったようにも見える。


こうなれば、やることは一つ、時間稼ぎ(笑)。必殺ルーカスキープは不発に終わったが、セドロスキーを前線に上げてパワープレーに出た仙台に対し、東京は困ったらクリア戦法でしのいでタイムアップ。


東京はここ数年恒例の苦しい天皇杯初戦だったが(またPKになるかと思ったよ)、なんとか結果をだした。選手交代であえてバランスを崩して打ち合いに(一方的に攻め込まれた時間帯もあったような)もちこんだハラヒロミの賭けが見事に当たった。ただ相手に引かれると手詰まりになるところはいっこうに改善されない。石川・加地のクロスは本数こそ多かったが、狙いどころが素直すぎてセドロスキーにあっさりクリアされる場面が目立った。相手の枚数が多くて難しいところはあっただろうが、ニアとファーに蹴り分けたり、グラウンダを使ったり、後方に戻して今野あたりにミドルを狙わせたりといった工夫が欲しかった。そうやって揺さぶっているうちに、相手ディフェンスにもほころびがでてくるだろうし。
ケリーは持ち過ぎでリズムを壊していた。どうも、本人のケガがあったりオリンピックでメンバーがそろわなかったりで周囲とのコンビネーションが合わず、なかなか速い攻撃に結びつけられないところは相変わらず。
5回戦は堅守を誇る大宮が相手だけに、ひと工夫しないと今日と同じような展開に持ち込まれてしまうだろう。


仙台はゲームプラン通りの戦いができたが、結果が伴わなかったというところか。セドロスキーでルーカスを、ボランチ陣でケリーを封じることによってサイドへの速い展開を防ぎ、
石川・加地あたりが力づくでサイドを攻略してくれば、WB・ストッパー・ボランチが連携してボールを奪えないまでもディレイをかけ、その間にゴール前を固める、という見事な組織的守備を見せた。
攻撃でもシステマティックな速いパス回しでマークをはがしながら前進する場面がたびたび見られ、ベルデニック・テイストを満喫させられてしまった。
あえていえば、交代策に積極性があっても良かったのでは。後半、攻め込んだ時間帯に高さのない東京CB陣に対し萬代を投入しても面白かった(怖かった)と思う(単に萬代を見たかったということもあるけど)。
今季は序盤のつまづきとここ一番の勝負弱さが出て昇格ならなかったが、有望な新人が経験を積んでいるし、このまま組織が整備されていけば来期は昇格の有力候補になると思う。あとは佐藤寿人の大ブレイクに期待。


以下、東京の採点

  • 土肥 6.0:堅実なセーブを見せた。三人目にもチャレンジしてね。
  • 茂庭 5.5:まだ体調が戻っていないのか、いつものスピードがなかった。ケガが心配。
  • 藤山 6.0:いつも通り、読みの良いカバーリング振り。安心してみていられる。
  • 加地 6.0:今日は攻撃に大活躍。クロスの狙いどころに工夫がほしい。
  • 金沢 6.0:シュートは枠に飛んだがクロスが宇宙開発。守備面は普通の出来。
  • 今野 6.5:中盤を支えた。ファウルの仕方・もらい方がうまく、仙台のリズムを断ち切っていた。
  • 三浦 6.0:豊富な運動量で攻守に活躍。
  • 戸田 5.5:ゴール前の競り合いに勝てず、FWとしては寂しい結果に。守備では再びスーパークリアをするなど貢献大。だからといって後輩の曽田(大学リーグ得点王@筑波大→札幌)みたいにDF転向はしないでね。
  • ケリー 5.0:徹底マークされて持ち味を発揮できず。持ち過ぎで攻撃をスローダウンさせてしまう場面が目立った。
  • 石川 6.0:スピードを生かして攻撃の軸になった。クロス・プレースキックの狙いどころを工夫してほしい。
  • ルーカス 5.0:セドロスキーに押さえ込まれた。シュートの精度も低かった。
  • 増嶋 5.5:まだ危なっかしい場面がある。
  • 阿部 7.0:シュートはこれ一本なんだが、FWは決めてナンボ。J最強ジョーカーは伊達じゃない。
  • 梶山 5.5:彼の力はこんなものじゃない。
  • ハラヒロミ 6.0:ボランチを削ってFWを増やした事によって、試合を活性化させた。勝負勘が的中した。


仙台の採点。

  • 高桑 6.0:反応の良さが戻ってきた感じ。
  • セドロスキー 6.5:ルーカスを封じ込んだのは見事。
  • 根引 6.0:なかなかのカバーリングぶりを見せていたが、失点時に集中力が集中が切れ、対応が遅れたことが悔やまれる。
  • 小原 5.5:前半は石川のスピードに付いていけず。後半は安定。
  • 菅井 6.0:ハードなマークでケリー封じ。
  • 熊谷 6.0:相変わらずスペースを埋めるのがうまい。
  • 中田 5.5:守備面では貢献大だが、攻撃では見せ場をつくれず。
  • 梁 6.0:石川・加地コンビに苦しみつつも奮闘。いいクロスを上げるシーンもあり。
  • シルビーニョ 6.5:攻守に奮闘。やはり仙台の中心選手はこの人。
  • 佐藤寿人 5.5:やっぱり決めないと。
  • 大柴 5.0:カウンターの先鋒として、サイドに流れてチャンスメーク。しかし、失点に直結したミスはあまりにも痛い。
  • 関口 5.5:快足ぶりを見せつけた。
  • ベルデニック 6.0:ここまで守備組織を整えた手腕は見事。ただし積極的に交代枠をつかっても良かったのでは?


試合後、仙台の選手たちはバックアウェイ寄り・中央・バックホーム寄り・ゴール裏と次々挨拶。仙台サポーターは「ダービー勝つぞ」コールで送る。


一方の東京側は土肥が主役。選手全員でのゆりかごダンスに「おめでとう」コール。これに土肥が応えると、すかさず「三人目!」コールがかかる。これには両手でバッテンをつくって拒否(笑)。


さて、試合後のお楽しみはやっぱり牛タン(またかい)。今度はチェーン店おしゃれ系にしようと、仙台駅地下の「伊達の牛たん」に入る。牛タン定食1.5人前塩・味噌ミックス(麦飯、テールスープ、白菜漬け物)+ととろ+ビールで2362円なり(食べ過ぎです)。ビールにはスモークタンの付け合わせがついていて、ちょっとうれしい。大きな角皿に盛られた牛タンは厚くてジューシー。うーん、やっぱりご飯にはこっちのほうが合う。味噌味もなかなかいける。やっぱり、量がね○しあたりとは大違いで、ご飯を食べ終わってもタン焼きが余ってしまった。それからテールスープ。ちょっととろみがある感じで、非常にいける。


ところで、この店、夕方の時間帯は1/4ぐらいが青赤な人で占められていた。
みんな、正直に告白しよう。今日は牛タン目当てだったとw。


お土産もしっかり牛タン。ちょっと高かったが今日は売り切れだった芯タンを買った。
というわけで、大満足・大満腹の仙台遠征だった。また行きたいので、仙台は早くJ1に上がってきてね。