J2第42節 大宮アルディージャ 3 - 0 水戸ホーリーホック(観戦96試合目)

今日は「さいたまの日」になるかもしれない日。
この試合を見れば、今年度J全28クラブを観戦したことになるため、以前から観戦予定に入れておいたのだが、まさか昇格決定がかかった試合になるとは思わなかった。


京浜東北線の車中には赤とオレンジ・・・ではなくて、異様に気合いの入った赤服の人たちが目立つ。中にはもう、テンパって目を吊り上げているような人もいる。「は〜い、僕FC東京のファンなんですよ〜」なんて声をかけたらまず殴られることは間違いない(笑)。ちょっとリラックスしたら、と言いたくなる。U・R・A・W・Aってやってごらん(笑)。


大宮で降り、スタジアムに向かう道をたどると、さすがにオレンジな人が増えてくる。普段の大宮と比較すると、キックオフ1時間前にしては異常に多い。悪い予感を抱きつつスタジアムに着くと、案の定、もう千客万来。メインはほとんど埋まり、バックもアウェイ寄りの一角を除いてほぼ満席状態である。ホームゴール裏はいわずもがな。アウェイゴール裏だけまだスペースがあった。メインアウェイ寄り階段上にかろうじて席を見つけた。売店に行って帰ってくると、すでに通路にも人が座り始めている。こんな大宮サッカー場は初めて。かつての対レッズ戦のとき以来の入りらしい。キックオフ前にはなんと迷子まで出た。アナウンスが「オレンジのTシャツを着た○○ちゃんが・・・」って、そういう子、いっぱいいると思うけど。


試合前から気合いの入る大宮サポーター。手に手にバルーンスティックを持つメイン・バックの観客。アルディも必勝ハチマキと肩タスキで客に気合いを入れて・・・ではなく、いつものように愛嬌を振りまいていた。水戸サポがふざけて「浦和レッズ」コールをすると、本気で怒りだす人がちらほら。うーん、やっぱり微妙な問題なのかしらん。


大宮のスタメン。フォーメーションはいつもの中盤がフラットな4-4-2。

    森田  トゥット

久永  金澤 純マーカス 安藤正

冨田  奥野 トニーニョ 西村

      荒谷

控えは安藤智、平岡、斉藤、島田、バレー。攻撃時の中盤センターは、金澤が前に出て2トップをサポートし、純マーカスがいわゆるホールディング・ロールの選手で中盤の底に位置し、DFライン前のお掃除やサイドへの展開を担う。左サイドは久永・冨田の連携攻撃、右サイドは安藤正の正確な右足が武器。


水戸は4-3-3風。

    小林
伊藤        関
 北嶋    永井
    栗田
磯崎 森 柴小屋 小椋
    武田

控えは鏑木、川前、吉田、松浦、樹森。FWは両サイドがウイング風に位置し、中盤は栗田を底にした3ボランチ。FW登録の磯崎がなんと左SB。水戸はたしか負傷者続出だったはずで、苦しい台所事情がうかがえる。

大宮といえば、「ポゼッションサッカー」という看板を掲げている(いた?)が、テレビ中継を見ている限りは、しっかり守ってバレー・トゥットのスピードを生かしてカウンター、というサッカーをしているように見えた(現実路線?)。
ところが、水戸がDF4人とボランチ3人である程度引いてがっちりと守っている。したがって後ろにスペースが無く、大宮の攻撃は後方でボールを回して揺さぶりをかけつつ、機を見てサイドに振ったり、森田にくさびを入れたり、あるいはトゥットが単独ドリブルで勝負する、といった感じになる。


対する水戸だが、大宮が例によって中盤とDFがコンパクトな2列のラインをつくり、組織的にプレスをかけてくるため、そこをパスワークで抜いていくのは難しい。そこでボールを奪ったら手数をかけずに大宮の高いラインの裏、とくに両サイドの裏へロブを送りウイングを走らせるという手に出た。


このやり方はある程度当たって、戦力的には水戸が劣っているものの、前半15分ぐらいまでは一進一退の展開が続く。
5分、ゴール正面35mほどの位置で得たFKを柴小屋が蹴るがトニーニョがクリアしCKに逃げる。
7分には大宮がエリアのすぐ外でFKをゲット、トゥットのキックは5枚の壁に当たってGKがキャッチ。
12分には左サイド裏へのフィードに伊藤が走り、トニーニョと競ってCKゲット。ここからCK3連発になるが、大宮の集中した守りの前にシュートが打てなかった。


15分以降は、地力に勝る大宮が優位に立つ。
16分にはルーズボールを拾ったトゥットがドリブルでDFをかわしながらゴールライン付近までえぐってからマイナスの折り返しを入れるが水戸DFがカットする。
17分にはロングボールに森田が反応するが水戸DFがCKに逃げる。ニアにトニーニョ、ファーにトゥット、森田・冨田・奥野がゴール前へなだれ込む役回りで、久永が少し離れた位置からこぼれ球のミドルを狙うのが大宮の基本布陣。安藤正の蹴った左CKをファーに走り込んだ冨田が頭で折り返し、奥野がヘディングシュートを放つが水戸DFがCKに逃げる。今度は右CKをトニーニョが頭で合わせるがこんどはスローインへ。


23分にはロングボールに走り込んだ水戸CF小林がヘディングシュート、これはGK荒谷の正面だった。前半、水戸のシュートらしいシュートはこれだけだった。大宮はCBコンビが堅く、素直なクロスはことごとく跳ね返す。サイドの裏を突かれてCBが出て行ったときは確実に止めているし、中盤では純マーカスが効いていて水戸のパス回しを寸断する。水戸はちょっと点が取れそうもない雰囲気で、ゴール裏中央に押し込まれたサポーターは声援を送るが(ところで水戸のチャントはRain drops keep fallin' on my head なのね)、繋ぎのパスにしろクリアにしろ精度を欠いていてボールを持てず、しだいに押し込まれてしまう。


大宮の両翼・安藤正と久永はサイドに張っているばかりではなく、積極的に中へも入ってきてゴールを狙う。
27分には右サイドから安藤正の蹴ったFKのクリアボールを久永が拾いミドルを狙うがふかしてしまう。
28分、安藤正がスルーパスに抜け出て右45度ぐらいからグラウンダーのシュートを打つがGKがキャッチ。
30分には水戸のミスパスを拾ったトゥットがドリブルで持ち上がりサイドのスペースへパス、これを受けた久永のクロスに森田が合わせるがこれも宇宙開発。


このあともCKから奥野のヘディングなどチャンスはあったがシュートは枠を捉えられず。40分、オーバーラップした冨田のクロスをトゥットがシュートするがサイドネット。44分には焦れた森田がロビングをキャッチしたGKにアフターチャージをかけてしまい、警告を受ける。
大宮はやはり少し堅くなっているのか、ラストパスのところでコンビネーションが合わず、フィニッシュそのものも精度を欠き、一方的に攻めながらも無得点のまま前半を終える。


ハーフタイムには他会場の途中経過がアナウンスされる。場内がもっとも湧いたのは山形がリードされていることが知らされたときだった。J1の経過はまったく放送されなかった。浦和のウの字も出さないところが潔い。


後半は、水戸がどこまで持ちこたえるかが見どころかな、と思っていたらあっさり大宮が先制した。
開始直後の45分、安藤正の左CKにファーサイドへ飛び込んだ森田が頭で合わせ、この日初めてネットが揺れる。


直後、攻めるしか無くなった水戸は左FWの伊藤へサイドチェンジが送られる。このとき、競りにいったトニーニョが足を痛め、以後のプレーに精彩を欠くことになる。
54分、水戸は中盤の底の栗田を下げ、FW松浦を投入する。ボランチを1枚削って小林・松浦の2トップ+関・伊藤の攻撃的MF2枚という攻撃的布陣にシフトチェンジ。


しかし、これは大宮の思うツボ。その裏に広がるスペースをトゥットが駆ける。59分、左サイドへ単騎ドリブルで突進、DFをかわしながらゴールライン近くでカットインし角度の無い位置から放ったシュートがゴール右サイドに突き刺さる。トゥットが懐かしの「股開き正座エビぞり」ポーズで喜びをあらわす。


直後の60分、大宮は右SBを西村から斉藤に交代。
水戸は62分、右MFを関から吉田に代えて反撃を継続する。この時間帯、水戸はFW松浦を使ってなんどもチャンスをつくりかける。67分にはパスセンスを生かして攻撃の起点となっていた永井のスルーパスに松浦が走り込むが間一髪GKが先んじてキャッチする。70分には永井のCKに松浦が頭で合わせるがシュートはネットの上に落ちた。


水戸が前がかりで必死の反撃を試みているが、その裏のスペースを大宮はスピードを生かして攻略する。
73分、浮き球の処理にもたついているのをトゥットがかっさらい、投入されていたバレー(68分、森田と交替)と二人だけで一気に裏のスペースに突進する。高い位置でフラットに並んでいた水戸DFラインは完全に裏をとられ、大宮2トップのスピードの前に、完全に置き去りにされる。まずトゥットがGKと一対一になり引きつけてからバレーにチョンと横パス、水戸GK武田が横っ飛びするが全く及ばず、バレーがごっつあんゴールを決める。


これで、ほぼ試合が決まった。大宮は78分、トゥットのシュートがポストを叩くなど、守備のバランスを崩さずにカウンターで追加点を狙う。水戸は意地でせめて一点を返そうと、79分に伊藤に代えスピードのある樹森を投入、松浦にボールを集めて必死の反撃を試みるが、シュートは枠をとらえられない。


しだいに時間が過ぎる。大宮といえば2001年、カリブの怪人バルデスの大活躍で前半戦を独走するが、そのバルデスと相方のジョルジーニョが二人ともケガで離脱し急降下で昇格戦線から離脱したことが頭をよぎる。いつもはほどよい混み具合だった大宮サッカー場が今日は満員で、通路まで人があふれている(観客10546人)。


大宮サポーターがGreat Escapeを歌い、皆がバルーンスティックを叩いて盛り上がる中、ロスタイムに突入する。トニーニョがバックパスをミスってオウンゴールを決めてしまうなどご愛嬌はあったものの、無事にタイムアップ。大宮がめでたくJ1昇格を決めた。ゴール裏からオレンジの紙テープが舞う。選手たちが抱き合うなか、奥野とトニーニョが顔を覆って突っ伏してしまったのが印象的だった。長かったんだよな、彼らにとっては。


そのあとはお決まりの記念Tシャツを着てのウイニングラン。三浦監督の胴上げ(高い!)。アルディを胴上げしてくれなかったのがただ一つの心残りか。


やはり大宮はよく組織されたいいチームだった。印象に残った選手は、冷静にDFラインを統率していた奥野と、中盤の底で効きまくっていたディビッドソン純マーカス。この二人を中心とした組織的守備が大宮の生命線になっている。攻撃面では、安藤正の正確な右足と電柱、じゃない長身選手の組み合わせによるセットプレー、トゥットとバレーのスピード狂カウンターという必殺パターンを持っていて、少ない得点を確実に守りきれる力を持っている。各選手とも相応の技術を持っており、足元でパスを繋いでいる限りではほとんどミスがなかった。


なにしろ、あのフロンターレ相手にを4試合で2勝2敗、6得点4失点!と互角以上に戦っている。先制されて守られたらかなり厄介な相手になることは間違いない。
穴をあげれば、トニーニョか。この日は足を痛めたせいか、精彩を欠いたプレーを見せていたが、もともと時々ポカをやらかす選手なのでクロスの球質を変えたり、ニアとファーに蹴り分けたりして揺さぶってみると隙を見せる可能性がある。あと中盤センターの金澤は後半半ばをすぎると運動量が落ちてくるのでそこも狙い目かと。
トゥット・バレーに関しては、縦に走らせなければそれほど怖い選手ではない。ラインコントロールと中盤のディレイでうまく動きを封じられれば押さえられると思う。それに、シュートの精度がトゥットはいわずもがな、バレーはもっと豪快に(ゴール裏の林を抜けて駐車場まで飛んでいきます!)外す選手なので、シュート体勢に入られても粘り強くコースを限定していけばなんとかなるだろう。なにせ、東京のDF陣はエメルソンだって止めているんだから。あ、茂庭さえ復帰すればね(増嶋!・・・怒)。安藤正は金澤にしっかりマークしてもらえば大丈夫。大宮の右SBはそれほどオーバーラップしてこない。むしろ左サイドをちょろちょろする久永が要注意だろう。


というわけで、期せずして天皇杯5回戦の偵察にみたいになってしまった(あ、なんか行く気になってる)。


対する水戸も、攻守に渡って組織的にプレーしようという意図は感じられたが、守備はともかく攻撃時のミスが多すぎた。要となる選手が何人か負傷で抜けているそうなので、ベストコンディションの時にもう一度見てみたいチームである。


喜ぶ大宮の選手たちとサポーターを横目に帰途につく。氷川神社の参道を歩きながら見やすくていいスタジアムだし、来年はぜひ来たいなと思ったが、大宮サッカー場はJ1規格に合わせるための改修工事に入るそうで、2005年シーズンはしばらくの間、埼玉・熊谷・鴻巣などで分散開催になるらしい。うーん、ちと遠いぞ。
それからオフィシャルショップの横のレストランには、早くも「J1昇格記念生ビール半額!」なる張り紙が出されていた(一瞬引き込まれそうになったw)。


2004年11月20日、大宮。そこには赤い影はみじんもなく、ただオレンジの風だけが吹いていた。
(えっ、レッズってチャンピオンシップへの出場権を手に入れたんですか! おめでとうございます! これからが本番ですね! 岡田さんが待ってますよ!)


とにかく、これで鴨池平日開催は無くなった。めでたし、めでたし(あ、行く気になってる)。
ところで、新潟の試合は? あ、復興支援でしたっけ・・・・