インカレ準決勝第2試合 筑波大学 0 - 2 駒澤大学(観戦114試合目)

冬の日だまりのなか、第2試合が始まる。
筑波vs駒澤。関東大学リーグの看板カードがこの準決勝で実現した。


リーグ戦では2戦2敗の駒澤は、この対戦にチームも関係者一同も期するものがあったらしい。ゲートのすぐ外では、駒大ファンクラブ?の皆さんがチームカラーの赤でスタンドを染めようと赤いTシャツ貸し出しキャンペーン中。いや、別に駒澤は嫌いじゃないんだけど、赤い色には抵抗感があるのよね(笑)。


筑波のスタメンはいつもの4-4-2。

    7鈴木 11平山
 8藤本        9秋田
   10兵働   12今田
14阿部翔 5秋葉 4石井 6植松(c)
       1来栖

これはいつもの黄金メンバー。今ひとつ切れのない平山だが、ほかにポスト役がいないのか、今日もフェイスガードをつけて強行出場している。


駒澤は中盤がダイヤモンドの4-4-2。

   9赤嶺   11原一樹
      6中後
 7鈴木亮       8中嶋
      12菊池
13筑城 15廣井 3大澤 4小林亮(c)
       21太

サプライズは中後のトップ下。代わりに長身ストロングヘッダー菊池が中盤の底をつとめる。本来のDFリーダー鈴木祐輔はケガで欠場のため、大澤-廣井のCBコンビになった。注目は左サイドに入った鈴木亮平の働き。サイドを制圧できるかどうかが、この試合のカギだ。


キックオフは13:30。負けた方にはその場で年末が訪れる。寒さしのぎのホットウイスキーを大して寒くもないのに飲んだくれていた私の気持ちをしゃんとさせる、好試合が展開される。

  • 1分、まず筑波FW鈴木達也が右サイドに流れてファーの平山を狙ってクロスを入れるが、GK太が飛び出してキャッチ。直後に、今度は右MF秋田が同じく右からクロスを入れる。敵味方の選手がゴール前で交錯しボールがこぼれるが、太が押さえる。
  • 2分、今度は駒澤。菊池が左サイドへフィードを送る。これを受けた左MF鈴木亮がクロスを入れ、味方には合わなかったがCKを得る。CKのクリアボールを拾った右MF中嶋がドリブルで前進するが、DFとの競り合いの際にファウルをおかす。
  • 3分、駒澤は向かって左サイド約25mの地点でFKを得る。中後の右足から放たれたボールはカーブしてゴールマウスへの軌道をとる。その軌道上でボールとのランデヴーを果たそうと殺到する駒澤の選手たち。それに注意を削がれたのか、ボールの曲がりが予想以上だったのか、筑波GK来栖がこのボールを取り損ねる。お手玉して左手の手のひらに乗ったボールがこぼれ、ゴールの中に転がり込む。誰も予想していなかった好GK来栖のミスから、駒澤が幸運な先制点をあげる。


意外な形で先制点を上げた駒澤が、優位に試合を進める。

  • 5分、筑波左MF藤本が左サイドでキープし、兵働の上がりを引き出す。ボールを受けた兵働は左サイドをえぐってクロス、駒澤DFはCKに逃げる。藤本がファーの平山を狙ってCKを蹴るが、流れてラインを割る。
  • 7分、右サイドに流れた中後が真ん中の原を狙ってクロスを入れるが、筑波DFがCKに逃げる。
  • 8分、フリーキックのセカンドボールを拾った鈴木亮がシュートを打つがゴール右へ。
  • 10分、中後が右サイドにいた原へ展開、原が素早く裏へ走り込む中嶋へ短い浮き球パスを送るが、DFの寄せが早くクリアされる。
  • 11分、筑波は植松?のロングフィードのクリアボールを拾い、今田がミドルで狙うが宇宙開発。

目の前では意外な、といっては失礼だが、秋季リーグの駒澤では見られなかった光景が展開される。FWへのロングボール一辺倒の単調な攻撃(精度は高かったけど)は陰も形も見えず、左は鈴木亮と筑城がガンガンと前へ出てくる。右では中嶋が小林亮のサポートを受けてサイドをえぐる。原一樹のドリブルは信じられないぐらい冴えており、中後が生き生きと攻撃陣をコントロールする。やっぱり、長いパスが上手な人は短いパスもうまい。まるで、本職の攻撃的MFみたいな振る舞いである。で、赤嶺は・・・・あんまり流れに乗れていなかった(笑)。もっともクロスやセットプレーのターゲットとしての役は果たしており(囮だったけど)、筑波DFの注意を引きつけていた。
そして、一つ気づいたことは、プレスの速さ。第1試合の流経vs立命館より1ランク速いのである。とくに駒澤中盤の寄せは速かった。筑波が中盤でボールを持つと、中後、サイドMF、菊池が素早く囲い込み、パス・ドリブルのコースを遮断して自由を奪う。それでもある程度パスを回せるところはさすが筑波だが、2トップにいい形でボールが渡らない。こんなときに頼みとなるはずの平山は、大澤・廣井の駒大CBコンビによって制圧されていた。


筑波も黙ってやられてはいない。リーグ戦MVP・兵働が状況を打開しようと積極的に前へ出る。

  • 19分、左SB阿部翔のサポートを受けて兵働が前進、左サイドに流れて起点を作ろうとするが対応した駒澤右SB小林亮がファウルで止める。小林は警告。
  • 21分、植松が平山を狙ってアーリークロスを送る。これは廣井?にクリアされるが、セカンドボールを拾った阿部翔がミドルシュートを打つ。しかし枠に行かない。
  • 23分、ドリブルで突進する原と阿部翔のマッチアップ(市船の歴代10番対決ですな)。本日キレキレの原が一瞬先んじてシュートするが、阿部翔がすかさず足を出してCKに逃れる。このCKに赤嶺が頭で合わせるが、ゴール左にはずれる。
  • 24分、赤嶺が前線でキープして左の鈴木亮へ。鈴木のクロスを、反転して真ん中に走り込んだ赤嶺が触れるが、筑波DFにブロックされてシュートを打てず。このあとCK×2。2回目で上がっていたCB大澤が触るが、ボテボテのボールをGKが押さえる。
  • 27分、エリア内でシュートを打てない筑波は、FW鈴木達也がミドルを放つがゴール左へ。
  • 28分、藤本-鈴木達也のコンビで左サイドを崩し、CKゲット。藤本が平山を狙ってCKを蹴るがクリアされる。セカンドボールを拾った藤本がクロスを上げるが、これは流れてしまう。
  • 29分、中盤の底で奮戦していた菊池が、2列目から突破を図った兵働に後ろからタックルをかけてしまい、警告を受ける(これが伏線?)。


駒澤のプレスが速い。ボールを奪うと中後に預け、その中後が素早く両サイドや原につなぐ。前線では原一樹がドリブル勝負を仕掛け、エリア内に切り込んでいく。両サイドの動きが活発で、とくに左サイドは鈴木亮平に加えてSBの築城が積極的なオーバーラップを見せる。
筑波の両翼・秋田と藤本は高めの位置取りをする駒澤両サイドMFをケアするためか、なかなか攻撃に絡めない。しかし、ボランチと中嶋の間に生じたギャップを兵働が突きつづけ、なんどもチャンスを作っていた。駒澤ボランチ菊地がその対応に苦労していた。

  • 30分、ロングボールにGK来栖が飛び出す。クリアが短く、こぼれ球を拾った右MF中嶋が(あわてた感じで)ループシュートを鬱が、筑波DFがマウスに立ちふさがりクリア。
  • 32分、右サイドに侵入した原がファウルを受ける。エリア外3mの角度のない位置から中後のFK。選択はトリックプレー。いち早く動き出した廣井に短いグラウンダーが送られる。しかし筑波DFの反応も素早く、廣井はシュートを打てない。こぼれたところを大澤がシュート、しかしゴール左に外れる。
  • 33分、スルーパス(送ったのは誰だろう?)に反応し、エリア内に侵入した中後が筑波CB石井によって派手に倒されPKとなる(石井は警告)。中後が自ら蹴ったPKはゴール右へ収まる。駒澤が追加点。


筑波は前線に近い位置でプレーする中後に戸惑っているように見えた。ボランチが中後を捕まえきれず、左右自在の展開を許してしまう。
前線では相変わらず平山にボールが収まらない。鈴木達也が左右に流れてチャンスを作ろうとするが、小林亮・築城の両SBに阻止される。

  • 35分、ライン裏スペースへのパスに反応した平山がゴールライン近くの角度の無いところからシュートするが、狙いすぎたかバーの上。
  • 37分、藤本が左サイド深いところから斜め前へ大きなサイドチェンジを送る。これを受けた秋田がクロスを入れるが、駒澤DFがカットする。
  • 38分、小林亮がゴール前へ放り込む。このセカンドボールを拾った右MF中嶋がクロスを入れるがクリアされる。
  • 41分、原がドリブルでエリア内に侵入、倒されるがノーファウル。
  • 42分、平山がロングボールをトラップし、反転シュートでネットを揺らす。しかしトラップ時にハンドをおかしたという判定でノーゴール。
  • 45分、ゴール前の競り合いで平山、廣井、太が交錯。平山ファウルの判定。
  • ロスタイム、駒澤が頭でつないで左サイドへ展開。突撃する鈴木亮平と守るソルジャー植松が激突。二人とも倒れる。

二人が痛みから復活したころ、前半が終了する。


後半開始時に、筑波は右MFを秋田から三澤に交代。スーパーサブを早めに投入し、流れを変えようとする。三澤は得意のドリブルで右サイドをかき回す。

  • 47分、駒澤左サイドの2段アタック。まずMF鈴木亮がクロス、クリアボールを今度はSB筑城がファーの赤嶺を狙う。この流れで得たスローイン原一樹が投げるが、力みすぎたかファウルスロー。
  • 49分、今度は右から中嶋がミドルシュート。わずかに枠をはずす。
  • 50分、左SB阿部翔からの長いサイドチェンジを受けた三澤がドリブルでカットインするが、DFとの競り合いの際にファウル。
  • 51分、兵働が中後を倒し、警告。

次第に激しいプレーが目立ち始める。それに比例(反比例?)して、レフェリーの判定が神経質になり始める。


前半から積極的にドリブル勝負を仕掛けていた原一樹だが、このあたりからどうもネジが外れてきたらしく(笑)、もうどうにも止まらないといった状況になる。被害者は赤嶺(笑)。わき目も振らずにドリブルする相方を見て途方に暮れているような、単に楽しんでいるような、なんともいえない雰囲気をかもし出す。
今日の原一樹は体が勝手に動くという感じで、何をするか自分でもよくわかっていないようだ。
筑波DF陣はそのキレキレドリブルに翻弄され、駒澤応援団は無邪気に楽しむ。原がドリブルを始めると「チャカチャーンチャカチャーンチャカチャカチャン、チャッ、チャチャチャッチャ、チャ、チャ、チャーン(運動会で走って入退場するときに流れるあの曲)」とテーマ曲を歌いだし、まあ1フレーズ歌いきるぐらいはドリブルを続けている。
持ち前の鋭い方向転換だけでなく、ボールを縦にまたぐような、あるいは引きずるような、独特のタッチで筑波陣内を駆ける。

  • 53分、左コーナー付近まで侵入した原が、素早く方向転換してゴールライン沿いを中に切れ込もうとする。対応した筑波CB石井がファウルで止めてしまい、警告。これで2枚目の警告となった石井が退場。
  • 55分、2列目からの飛び出しを図る兵働を、菊地がファウルで止める。その後、菊池が何かしたらしく警告され累積2枚で退場となる(公式記録では遅延行為による警告となっているので、ボールを蹴りだしてしまったのかもしれない。確かに少し離れたところに転がっていったように見えたけど・・・)。
  • 56分、筑波はゴール正面やや左25m位置でFKのチャンス。藤本が左足で直接狙うが、ボールは曲がりきらずゴール左へ。このあと、退場した石井に代わるCBとして3高山が投入される(今田out)。


双方10人ずつになり、中盤にスペースが出来る。駒澤は中盤の底で渋い働きをしていた菊地がいなくなり、中後が下がらざるを得なくなる。弱くなったプレスを突いて、筑波の攻撃が機能し始める。

  • 57分、ラインの裏へ抜けようとする赤嶺を入ったばかりの高山が倒し、警告。中後のFKに廣井が飛び込むが、クリアされる。
  • 59分、安部翔?からの長いサイドチェンジを受けた三澤がエリア内にカットインしてくるが、駒澤CBが落ち着いてクリア。
  • 60分、三澤がパスカットしてそのままドリブルで前進、中盤からあがってきた兵働へパスを送る。兵働のシュートは枠を捉えていたが、GKがブロックする。
  • 61分、鈴木達也のパスを受けた平山がシュート、しかしGK太がキャッチ。直後の接触プレーで筑波CB高山が痛み、一時ピッチ外へ。
  • 65分、高山が自陣内で倒れる。もともと痛めていてテーピングで固めていた膝が悪化したらしく、プレー続行不可能になる。交代で20中野が入る。

この試合、初めてといっていいほど平山のマークが甘くなり、枠内シュートを放つ。ようやく平山の動きにダイナミックさが出てくる。


今日の駒澤のセットプレーは、赤嶺をおとりにして廣井の高さを使う場合が多かった。中後がポジションを下げたことによって前半のようなFWとの短いパス交換はなくなったが、サイド攻撃は健在。原は唯我独尊ドリブルでさらに暴走する。
筑波は交代で入ってきた右MF三澤の動きがよく、その突破力を発揮して起点となっていた。しかし駒澤の最終ラインが固く、なかなかシュートまで持っていけない。
駒澤DF陣は、大澤・廣井のCBコンビが集中力を保っている。左SB筑城が積極的な攻めあがりを仕掛けるかわりに、右SB小林亮が巧みなポジショニングとカバーリングで安定感を作り出していた。

  • 69分、中後がFKをゴール前に入れるが、植松がCKに逃げる。そのCKにファーサイドにいた廣井が触れるが、ボールはラインを割る。
  • 71分、原がドリブルで突進し、DFと絡んで倒れながら放ったシュートは外れる。ノーファウルの判定。
  • 72分、筑波は三澤のドリブル突破からCKを得るが、駒澤DF陣にはじき返される。
  • 74分、駒澤右MF中嶋のクロスがゴール前を抜け、ファーサイド鈴木亮平にわたる。鈴木亮平は角度のないところからヘディングシュートを放つが、GK来栖が押さえる。
  • 75分、筑波左SB阿部翔がサイドをえぐり、中の平山を狙って折り返すが、GKが飛び出してキャッチ。
  • 77分、赤嶺がキープして左SB筑城のオーバーラップを引き出す。裏へ抜ける築城に赤嶺が反転して筑波右SB植松?の股を抜くスルーパスを送る。築城がゴールライン際から送った速いクロスに原が飛び込むが触れず、ボールは逆サイドに抜ける。
  • 80分、筑波は左CKのクリアボールを拾って三澤がミドルを狙うが、駒澤DFが身体を張ってブロックする。


しだいに時がすぎていく。駒澤は次第に中盤でのつなぎが減っていき、安全第一の大きなクリアが目立つようになる。攻撃は原一樹の個人能力頼りだが、2点リードなのでこれでよい。
筑波に焦りが出始めるが、交代枠は使い切ってしまっている。流れを変えることができない。

  • 81分、駒澤は鈴木亮平→19塚本の選手交代。直後、原がテーマ曲とともにドリブルで前進、カットインしてシュートを放つ。惜しくもゴールわずかに左。
  • 86分、三澤がドリブルで突っかけ、DFタックルのこぼれ球を鈴木達也がシュート、しかしゴール左へ。
  • 88分、平山がエリア内を大きく横移動してボールを受け、右45度の位置から反転してシュートするがGK太がはじき出す。
  • 89分、駒澤は原を下げ、巻を投入する。ロスタイムは3分。
  • ロス1分、三澤がドリブルで突進するが、築城に止められる。
  • ロス2分、駒澤はゴール正面20mの位置でFKを得る。中後は当然狙うが、外れ。

ロスタイムの3分が過ぎる。主審の笛。崩れ落ちる筑波の選手たち。
雄たけびを上げる駒沢GK太。さわやかに喜びをあらわす中後。彼らは、年を越えてプレーする権利を手にいれた。


この試合を決めた要因をいくつか考えた。
まず、駒澤のシステム変更。中後に中盤の底から長いボールでゲームを作らせるのではなく、前に出してボールの預けどころとして機能させる手を使った。
その結果、秋季リーグの駒澤を特徴づけていたロングボール赤嶺大作戦が自動的に変更された。(最も正確なボール供給元がFWに近い位置にいるのだから)
2トップ、特に原が短い距離で正確なボールを受けられ、タイミングがつかみやすくなったためか早い動き出しができるようになり、リズムに乗ったドリブル突破が可能になった(暴走気味だったけどw)。やはり、ロングボールからよーいドンでDFと競走するよりも、持ち前の俊敏さを生かす方が原にはあっているようだ。今日は大熊さんを見かけなかったが、また拉致されてしまわないかちょっと心配である。
また、ようやくサイド攻撃の活性化に成功し、ピッチをワイドに使えるようになった。メモでは、右の中嶋がクロス4本(成功1)、左の鈴木がクロス5本(成功2)、左SBの築城がクロス4本(成功3)。
ターゲットは赤嶺が多く(クロス成功6回のうち4回)、シュートチャンスには恵まれなかったがセットプレーの囮役も含めて役割は果たしていたといえる。
守りでもシステム変更の好影響が出ていた。中後が前からのプレスの起点となり、彼のパフォーマンスの良さもあいまって一段レベルの高いプレッシングを可能としていた。
もう一つはDFラインの固さ。大澤・廣井のCB陣が平山をほとんどの時間帯で押さえていた。そして、小林亮の頭脳的なプレーが光っていた。左の築城が攻めあがるため、攻撃参加は少なかったが、すばらしいポジショニングと自信あふれる対人プレーで
筑波の攻撃を押さえた。FC東京の誘いに乗らず柏入りしてしまうが、今日のプレーを見て逃がした魚は大きかったかな、と残念な気持ちになった。
駒澤応援団がLa Edgawaを歌っていたので、著作権料代わりに請求できないものかw。


筑波は両サイドが押し込まれてしまったのが痛かった。兵働は気を吐いていたものの、藤本は流れから消え、2トップは押さえられた。平山は田島やクマさんがなんといおうが代表へ行かずに筑波でトレーニングに励んだ方がいいのではないか。どうも、試合を重ねるごとに切れが悪くなっていくような気がする。
最終ラインは相変わらず固く、流れの中で失点することはなかったが、来栖の痛恨のミス(信じられない)とPK献上。中後があの位置でプレーすることにずっと戸惑っていたようだった。
そして、赤紙と負傷のために、守備で交代カードを使わなければならなかったのが最後になって響いた。
結局、今日は彼らの日ではなかったのだろう。


翳り行く中、両チームの選手たちがバックスタンドに挨拶にくる。
駒澤イレブンは意気揚々とバックスタンドへ歩み寄り、応援団の歓声に応える。
あるものは顔を覆い、あるものは憮然とした顔をして、筑波イレブンがバックスタンドに挨拶する。痛恨のファンブルをしてしまった来栖は最後まで号泣していた。挨拶を終え、他の選手たちがベンチのほうへもどっていく中で、これが最後の戦いとなったソルジャー植松が顔をぬぐいながら一人スタンドへ歩み寄り、仲間と握手を交わす。


新年に続く扉を開けたものたちと、閉ざされたものたち。そこには、残酷なまでのコントラストがあった。


帰り道、なにを聞こうかと思案して、立命館といえば倉木麻衣だろうと思ったので(いやルックスが好みなもんで←オジサン化)、こういうときに便利なiPodをクリクリと捜すと、あった、「Reach for the sky」。


♪Reach for the golden ring, reach for the sky...いま全て受け止めて、陽の当たる丘で...


さあ、行こう。陽の当たる霞ヶ丘へ。


♪軽く口笛を吹き、思いっきり、アハハと笑ってみようよ...


最後に笑うのは、誰だろう?