第83回高校選手権 2回戦 修徳 0 - 3 鹿児島実業(観戦119試合目)
三田線に乗ったとき、ちょっといやな気がした。
というのも、サッカー観戦風の人がやけに多いのだ。そういえば、地元代表と優勝候補の対戦だもんな、と納得しつつ11時半頃に本蓮沼駅着。すでに都営地下鉄は万全の迎撃準備を整えており、待ちかまえた駅員が帰りの乗車券を今のうちに買うよう呼びかけている。
そして地上に出ると、人・人・人。駅からサッカー場まで人の列が途切れない・・・。これはやばいとコンビニ(満員状態)に寄らず、早足で雪が凍り付いた歩道を進む。西が丘に着くとチケット売り場に長蛇の列。すごい。待機列が折り返してる・・・
どう見ても15分ぐらいはかかりそうだったので、反対側のチケット売り場に向かうと、こちらは少しましだった。それでも10分近くは並んだだろうか。
臨時のチケット売り場は設けられておらず、常設チケットボックス2カ所併せて4つの窓口であの人数をさばくしかないのである。おまけに今日は1〜3回戦共通チケットが使用不可(西が丘専用のチケットを買わなければならない)ため、間違った人もいたかと思われる(事前告知したのかね)。それからキックオフまでに入場できなかった人もかなりいたらしい。
なんとかキックオフに間に合うようには入場できたが、場内は大混雑。売店も大行列。おばちゃんは一族郎党?総動員+バイトで対応していたが、なにせ忙しいのに慣れていない(笑)。極めて不器用な商売ぶりで、なんか微笑ましかった。
で、当然ながら席はないorz。メイン・バックでは通路の手すりのところに人が3列ぐらいになっていた。アウェイゴール裏でなんとか手すりにもたれられるところを見つけて落ち着く。私の知っている中では一番の混雑ぶりだろう。おそらく選手権東京都決勝よりも混んでいる。
そんなこんなで、すでにへとへとになったところでキックオフ。
修徳のスタメン。
9成毛 11新保 10伊賀 7今井 8篠崎 6長崎 4藤村 5尾形 3石川 2荒川 1山下
3-3-3-1というべきか、3-6-1というべきか、「オランダ流」なんてキーワードでくくられるフォーメーションである。9成毛と10伊賀が縦の関係の2トップ。ボールを奪ったらまずこの二人に預ける。そしてサイドへ展開。サイドは右が今井と長崎、左は新保と篠崎が2段アタックをかける。藤村は中盤の底を支える。オランダから定期的にコーチを招いて指導を受けているそうで、ピッチをワイドに使ったパスワークとサイドアタックが特徴のチームである。ちなみに伊賀と藤村は東京U-15出身なのであった。
鹿実のスタメン。
10山下 15大脇 7坪内 6上村 11渡邊 4三代 20西岡 2伊集院 5岩下(c) 3重富 17片渕
坪内が高い位置で2トップをサポートすることが多かったため、こんな感じにしてみた。
本来は3バックのチームらしいが、修徳のサイド攻撃対策のためか、西岡を左SBに入れて4バックにしてきた。岩下(清水内定)が統率するこの4バックは極めて堅固。
攻撃面では右サイド渡邊の突進力とFW山下の決定力が特徴。とにかく極めてパワフルでアグレッシブなチームなのであった。
試合は地力に勝る鹿実が優位に進める。強烈な中盤プレスでボールを奪い、パワフルな両サイドに展開、そしてクロスに山下が合わせる。そしてセットプレーになればDF陣が攻撃参加してくる。とにかく強い。ヘディングの競り合いではほとんど勝っていたように思う。それでも修徳はボールに対する集中力を保ってなんとかしのいでいた。
しかし24分、坪内のクロスに山下がDFを振り切って合わせ、先制点。続く26分にはセットプレーからゴール前の混戦になり、再び山下が押し込んで2点目。
このあたり、力で押し切ったという感じだった。
修徳は、持ち味のピッチをワイドに使ったパス回しとサイド攻撃で反撃する。ボールの預けどころとなる成毛と伊賀は、中盤では起点となることができていた。そしてサイドに展開している間にゴール前に進出した成毛と伊賀をターゲットにクロスを入れる。とくに右サイドの今井・長崎コンビが好調で、対面の鹿実左SB西岡を翻弄していた。この2段アタックはなかなか有効で、前目に位置する今井をマークしても、すぐ後ろに長崎が控えている。鹿実の左MF上村は攻撃の意識が強いのでどうしても長崎のマークが甘くなるのだった。試合を通じて、右サイドからはいい形のクロスが7、8本上がっていた。反面、左サイドは鹿実右SB重富がいい対応をしていたこと、ウイングの新保が持ちすぎる傾向があり、後ろでサポートする篠崎との連携が今ひとつであったことから、有効な攻撃ができなかった。
ともかく、ピッチ上に選手が均等に散らばってパスコースの選択肢があるために、パスは回る。そして右からならクロスも上がる。しかし、肝心のゴール前では全く勝てないのであった。
岩下の統率する鹿実4バックは対人能力が高くクロスに対するポジショニングも的確で、修徳1トップの成毛も2列目から飛び込んで行く伊賀も決して高さのない選手ではないのだが、全くプレーをさせてもらえない。結局、この二人が先にクロスに触れたのは皆無だった。
前半終了間際、伊賀が初めてヘッドでの競り合いに勝ち、そこからゴール前の混戦に持ち込むが人垣に阻まれて押し込めず。後半終了間際にも長崎のクロスのクリアボールを攻め上がっていた右DF荒川がシュートするがキーパーにキャッチされるなど、修徳にも決定機はあったものの結局得点は奪えなかった。
リードした鹿実は後半やや慎重なゲーム運びになったものの、74分にはカウンターから山下が三たびネットを揺らしてハットトリック達成。守っては修徳を完封して貫禄のゲーム運びで3回戦に駒を進めた。
鹿実は選手個々の力が一枚上手だった。FW山下、CB岩下、右MF渡邊は前評判どおりの実力を見せた。各ポジションともこれといった穴がなく、高いレベルでバランスが取れたチームだった。トーナメントを勝ち抜く上で有利な要素、堅いDFラインとストライカーの両方を備えているチームであり、優勝候補一番手という下馬評もうなずける。
負けはしたものの、修徳のサッカーは面白かった。ピッチをワイドに使ったパスワーク、そしてサイドの2段アタックからのクロス攻撃はなかなか娯楽性に富んでいた。
惜しむらくは、攻撃に工夫がほしかった。FWが競り合いに勝てないことは明白だったにもかかわらず、素直にゴール前にクロスを入れてしまっていた。反対側サイドから斜めに入ってくるウイングを狙うなり、2列目からワンテンポ遅れたタイミングで上がってくる選手を狙うなりといった工夫がほしかった。後半は伊賀のキープからボランチ藤村が攻め上がる、というFC東京U-15コンビの攻撃が見られたけれど、もう少し変化を付けて揺さぶってみればよかったかな。まあ、言うは易しだけど。
で、愚痴ついでに妄想。修徳のサッカーが面白かったんで、これを東京でやったら(やろうとしたら)どうなるか、というのを考えてみた。
ルーカス 鈴木 馬場 石川 (戸田) (栗澤) 金沢(宮沢) 加地 今野(梶山、宮沢) 茂庭 藤山 ジャーン (増嶋) 土肥
ダニーロはまだ居ねーろなのでとりあえず置いておく。基本的に1トップ・トップ下と、左右MFは今のセットを生かす。右はイシカジの2段アタック。加地が前目にいるので切れ味アップ。左は鈴木(戸田)の猪突な突進力と金沢のツボを押さえたプレーをセットにしてバランスを取る(宮沢の展開力を生かす手もあり)。3バックはなんとなく良さそうな感じである。
苦しいのは中盤の底。このフォーメーションでは潰しと展開力の両者を兼ね備えた選手が必要だが、今ちゃんは潰しが一級品でも展開力のあるタイプではないし、宮沢は展開力こそ申し分ないが90分間このポジションを支えきれるかどうかは疑問。ポテンシャルならぶっちぎりの一番手である梶山だが、普段の何ともスローモーなプレーを見ていると任せる気にならない。そもそも梶山の足が速いのか遅いのか未だにわからない(笑)。
まあ、今野に攻撃を潰してもらって金沢あたりが早めに近寄ってボールをもらって展開、ということになるのかな。でも机上の空論っぽい。
やっぱりダビッツが必要だ。ということで妄想はおしまい。