全日本大学選手権 Dグループ第1戦 筑波大学 2 - 1 仙台大学(観戦101試合目)

日時:2005年12月21日(水)13:50キックオフ
会場:多摩市立陸上競技場
観客:200人ぐらいですかね(関係者込み)
得点:麻生(筑波、16分)、三澤(筑波、21分)、金子(仙台、47分)


筑波大のスタメン。

    木島  富岡
  麻生      三澤
    岡田  今田
 中野 石井  秋葉 野本
      山田

淳吾タン(結局清水入り)と阿部翔(名古屋入り)はベンチスタート。
この二人がいないと筑波という感じがしない。


仙台大のスタメン。

    増嶋  濱田
      金子
 柿沼        工藤
    大橋  池上
   根本 阿部 細川
      中野

増嶋は東京のまっすうと兄弟らしい(顔がよく似ている)。こっちが1号、東京にいるのは2号とのこと。トップ下に入っている金子はドリブル能力を生かしたシャドウ・ストライカーとして振舞う。大橋・池上の両ボランチが攻守にわたって文字とおりの舵取り役をこなす。


前半の試合経過。

1分、仙台:筑波ボランチにプレス、金子がボールを奪いそのままドリブル、シュートを放つが浮いてしまう。初シュート。
9分、仙台:左WB柿沼のクロスがクリアされ左スローイン。そこからまた柿沼クロスもクリアされる。
10分、仙台:金子がドリブルでつっかけエリアに侵入するが筑波DFがボールを奪う。
11分、仙台:筑波DFラインでのボール回しにプレスをかける。池上がボールを奪いミドルシュートもGKキャッチ。
13分、仙台:池上が左オープンスペースへ展開。WB柿沼がゴールライン際までえぐって折り返し、中央で金子がキープ、シュートを試みるが筑波DFが阻止。
19分、筑波:左サイド、ゴールまで30mほどの位置で得たFKを左MF麻生が直接決める。筑波先制。
20分、仙台:池上がゴール前へロングボールを入れる。これをFW濱田がダイレクトで打っていくが枠外。
23分、仙台:筑波のパスを柿沼がインターセプト。そのまま持ち込んでクロスを入れる。ファーで濱田が待ちかまえるが筑波DFがクリア。
24分、筑波:ボランチから右サイドへ展開。右MF三澤が一気にドリブル突破。マーカーを振り切ってカットイン、角度の無いところから強引に放ったシュートがバーに当たってゴールイン。筑波2点目。
29分、筑波:右サイドからの崩しで再三ゴール前にボールを入れていく。波状攻撃で仙台DFのクリアミスを誘い、これを左SB野本(居たのはゴール前)がどフリーでシュートするが枠を捉えられない。決定的だったのだが・・・
31分、仙台:FW濱田が裏へ抜けてシュート、GKがブロックして右CK。ボランチ大橋のCKは筑波DFがはじき返す。これを大橋が拾って柿沼がクロスを入れるがGKキャッチ。
37分、仙台:フィードに合わせて濱田が裏へのすり抜けを試みる。併走する筑波DFと競り合いながらシュートを試みるがボディコンタクトがファウル判定。
41分、仙台:左サイドへの展開パスをうけた柿沼がクロス、クリアボールがラインを割ってCKゲット。CKのクリアボールを金子がミドルシュート、しかしバーの上。
43分、筑波:カウンターからFW富岡がドリブルシュート、外れ。
43分、仙台:ゴールキックを池上が頭で裏へ流し、走り込んだ濱田がシュートするがGKが飛び出してパンチング。

ゲーム開始時から仙台が積極的にプレスを掛けていく。特にDF〜ボランチあたりでのパスやボールキープを狙っており、高い位置でボールを奪いそのままフィニッシュに持ち込もうと試みる。このやり方では、トップ下に入った金子のドリブル勝負が効果的。詰まったらボランチに戻してサイドへ展開からクロス、あるいは裏へのフィードに合わせてFWが走りこむ。池上の展開パスから(いやー、よく見えてるし、球質も柔らかくてトラップしやすいし)左WB片岡が再三クロスを入れていくが、秋葉・石井の両CBにはじき返される。むしろ、FWの裏へ抜けようとする動きのほうが可能性を感じさせた。FWが動き出すタイミングとボランチからフィードが出るタイミングがぴったり合っていて、かつそのフィードの精度がいい。FWの走るスピードにあわせた、かつ筑波DFの頭にひっかからないような程よい高さで柔らかいタッチのフィードが送られてくる。まっすう1号・濱田の仙台2トップは、筑波DFを抜いて飛び出すことこそできなかったものの、ほぼ並走するような形で裏へと走る。このやり方、FWにとってもボールテクニックが要求される(手間をかければ隣にいるDFにクリアされる)ものの、相手DFが処理を誤れば決定機に直結する怖さもあり、もしかしたらと思ったのだが、そこはテクニックを誇る筑波、危ない場面もあったが全般には無難に処理されてしまった。


仙台大やや攻めあぐみ、という雰囲気が漂いはじめたとき、筑波MF陣の個人技が炸裂した。13分、麻生の左サイドFKが直接ゴールイン。仙台GK中野は堅かったというか、集中力を欠いていたというか、やや動きが鈍かった。もしかしたら、直接狙ってくるとは考えておらず、意表をつかれたのかもしれない。
そして、25分、三澤が高速&キュンキュンドリブルでマーカーをぶっちぎって強引にゴールを決めた。これはお見事としかいいようがない。いったんスピードに乗せてしまったら、ファウルでしか止められないぐらいの切れっぷりだった。スピードを生かして少しマーカーの前へ出たら、すばやい方向転換をしつつ体でボールをスクリーンしてDFを背後に置き去りにしてしまうという、駆け引きもうまかった。
仙台大のプレスの前に受け気味だった筑波だが、二発芸であっさり2点、あとは自慢のDF陣が守り倒す体制に入る。


以後も、運動量で上回る仙台がボール支配では優勢でチャンスを作るが、筑波DFの前にエリア内で仕事をさせてもらえない。苦し紛れに放ったミドルはいずれも見え見えで大して脅威にならず。決定機といえるのはまっすう1号が反転してDFをかわした一撃(時間帯をメモし忘れた)ぐらいではなかったか。



後半の試合展開。

1分、仙台:右CKから混戦となり、金子が押し込んで1点を返す。
6分、仙台:FKからフワリとしたボールをラインの裏に送る。池上、角田が筑波DFと併走しながら走り込む。池上がいったん足元に収めるが筑波DFに阻まれ打てず。こぼれたところを角田が強引に打っていくがDFがブロック。
9分、仙台:池上が左に流れてクロス。中央で増嶋が待ちかまえるがDFがクリア。
11分、仙台:右スローインを受けた角田が切り込んでDFをかわしシュート、DFがブロック。セカンドボールを拾って攻撃を続け、最後はスルーパスに誰かが走り込むがGKが飛び出してキャッチ。
13分、筑波:右CKから秋葉がヘディングシュート、ゴール右にそれる。
15分、筑波:オフサイド崩れで木島が裏へ抜け、クロスを入れるが仙台DFがスローインに逃げる。
21分、仙台:角田が右サイドからドリブルで切り込み、DF2枚をかわしてシュートするが浮いてしまう。
22分、仙台:柿沼が左クロス、そのまま右サイドに抜けて今度は角田がクロス、しかし筑波DFがクリア。
25分、筑波:仙台のパスをカット、カウンターから右SB野本がクロス、しかし中が1枚だけで仙台DFがクリア。
34分、筑波:左MF麻生がフェイントでDFをかわしシュートするが、右ポストをわずかに外れる。

仙台がFW濱田に代えて角田を投入、フォーメーションを3-3-3-1に変更する。増嶋がワントップ、右ウィングに角田、左ウィングに金子を配し、池上がトップ下。ボランチは右から工藤、大橋、柿沼。こんな感じになった↓

     増嶋
  金子    角田
     池上
 柿沼      工藤
     大橋
  根本 阿部 秋濱
     中野

3-3-3-1。生で見たのは2002年ワールドカップのアルゼンチン代表以来である。
このフォーメーション、見てわかるようにトライアングルがいっぱいできて多くのパスコースが確保できるのが利点である。しかし、多くなったパスコースを使いこなすだけのパスセンスと戦術眼が要求される。まあ、前線に張っていればいい1トップとか、サイドをえぐればいいウィング二人はともかく、個人的に難しいなと思っているのは3ボランチの動き方。中盤の底(ここでは大橋)は実質1ボランチになる局面になるため、バイタルエリアを一人でカバーする運動量とボール奪取力が要求されるし、かつ奪ったボールを的確・正確に展開するパスセンスも求められる。柿沼・今野の両サイドMFは、時に大橋のサポートに、時にはサイドのケアをするためSBのように、さらには両ウイングを支援するためオーバーラップもしなければならない、というように極めて忙しい動きが要求される。まあ、ぶっちゃけ今の東京じゃ無理なやり方ってことで(爆)。大丈夫かなと思ったが、これがちゃんと機能していた。すごい。後半も主導権が取れたという面もあったのだろうが。


主導権を取れた理由のひとつが後半頭から入って右ウィングに入った角田の動きだった。どうもスーパーサブとしての役割が与えられているらしく、最初からしっかりと試合に入ってそのスピードで筑波守備陣を大いにかく乱していた。筑波の立ち上がりを突いたCKからの先制点ののち、角田が冴え渡った。チームとしても角田を生かす形を心得ていて、いったん左サイドに筑波を寄せておいてからサイドチェンジ一発で角田に渡す形や、逆に角田がマークを引き寄せておいて、左から金子や柿沼が出て行く形など、サイドからの崩しでゴールを狙っていた。逆に池上は黒子に徹してか、あまり目立たず。ボランチからサイドへの展開が多かったということは差し引いても、強引にゴール前に入っていく動きを多くしてもよかったのでは? 頭の良さが災いしてというべきか、周りの様子を伺ってから動き出すようなケースもあって、トップ下としては迫力不足でしただよ(以上辛口)。


んでもって、仙台大が攻めるも、前半と同様にエリア内で仕事をさせてもらえない。30分すぎにはしだいに運動量が落ちてきて、結局は守りきられてしまった。


敗れたりとはいえ、仙台大は個々にテクニックがあり、戦術眼もあり、体を張ってファイトすることもできるいいチームだった。チームの心臓は大橋・池上の両ボランチであることはすでに述べた。大橋が闘将タイプで惜しみない走りとファイトでチームを引っ張る(FKをミスった直後、「あー!だめだー」みたいな叫びが聞こえたがご愛嬌)。池上はクレバーなプレーで要所を締める。DF陣も大きなミスはなかった。ドリブラー金子、スーパーサブ角田も効いていた。後は、FWに「才能」がいれば、全国でも上位を狙えるのだが・・・


勝った筑波だが、お膳立てする人いれど決める人がいないorz。まあ、ストライカー日照りはいつものことだが。先発FWの木島・富岡はテクニックもあれば運動量もあり、戦術眼もあるのだが、肝心なところでゴールを脅かせない。要はストライカーじゃないんだよね(逆に、攻撃的MFはあっさりとこなしそうである)。本当の意味でのストライカーがいない(平山除く)傾向はここ数年変わらないのだけれど。リーグ優勝を駒大にかっさらわれたのもこの辺に原因があると思われ。MFなら、本当に人材だらけなんだけどねー。結局、三澤もMFにしちゃったし。まー淳吾タンと阿部翔を温存してさっくり勝ったのだから、今日のところは余裕があったというべきか。


で、青赤野郎(&淑女)ども注目の池上くんですが・・・使えます。つまらないミスパスはほとんどなかった(結果的にミスとなったのは、ぎりぎりを狙った勝負パス)。守備力も上等、ポジショニングも的確、ゴールキックを直接頭で流してあわや決定機、というプレーに代表されるように状況把握も良好、再三の好展開パスに象徴されるように周りがよく見えているし、なんといっても常に落ち着き払ってプレーしているのが印象的だった。隣の大橋が時々あわてたプレーを見せているのと好対照だった。このあたりは、代表で培った経験がものをいったのでは。ロジック以上にがむしゃらさが時に要求される攻撃的ポジションならともかく、ボランチから後ろではいつでも使えそうな感じである。あとは、ガチンコ勝負な状況下での対人能力。今野とまではいかなくても、金沢や浅利、藤山に匹敵するパフォーマンスがあるのかどうか。もしそのレベルの能力を有していたら、この上もなく心強いバックアッププレーヤーになるのだが。乞うご期待。