第54回全日本大学選手権 準決勝 駒澤大学 1 - 0 関西大学(観戦121試合目)

日時:2006年1月8日(日)13:20キックオフ
会場:西が丘サッカー場
観衆:800人近くいたのでは?
主審:名前が聞き取れませんでしたが、神経質な人でした。
得点:宮崎(駒大、47分)
警告:阿部琢(駒大、6分)、桑原(駒大、24分)、赤嶺(駒大、36分)、
   桑原(駒大、62分)、大屋(関大、77分)、原(駒大、79分)
退場:桑原(駒大、62分)

準々決勝とはうってかわって快晴の西が丘。少々風がきついが、お日様があたるバックスタンドの快適さは二日前とは大違い。膝掛け毛布を座布団として使うぐらいの余裕があったし、手袋不要。バック中央、やや駒澤より最上段を確保。「いやー、メインは寒そうだねえ」などと一人ごちながら、当然のようによい子の飲み物に手を伸ばす。
本日の有名人は、中野監督ときょーかぶちょーを確認(追記:「巧」堀池もいたそうな)。後藤さんは見あたらなかったな(凍っちゃったかね?)。それに、なんか、青赤な人が多いんですが、気のせいでしょうか。Jリーグオンリーという方はそろそろ禁断症状が出てるのかもしれない。ごく一部の人たちは疲労と寒さに耐えつつサッカーシーズン終盤の追い込み中なんですけど。



駒澤大のスタメン。

    11原   9赤嶺
      10鈴木亮
  7宮崎       6最上
      16八角
 3築城 2桑原 5廣井 15阿部琢
      1牧野

リザーブ:21三栗、4石井、17塚本、13菊池、27島田、12巻、30東平
選手交代:6最上→4石井(67分)、10鈴木亮→12巻(87分)
中盤のバランスを改善するためか、メンバーをいじってきた。中盤の底は13菊池に代わって16八角、右SHは負傷した25田谷の代わりに6最上が入る。


関西大のスタメン。

      30阪本   9櫻田
  8木本         7古橋
    10安藤    5亀ヶ渕
 31大屋 19松田 4門田 2野村
       21森田

リザープ:41片岡、23嶋田、17北橋、6吉村勇、11吉村修、18板倉、36池田
選手交代:7古橋→6吉村勇(76分)、9櫻田→18板倉(76分)
準々決勝では累積警告で出場停止だったキャプテン亀ヶ渕がスタメン復帰。どこでもできるらしいがボランチ起用になった。余談だが手袋の色は、7古橋が緑、8木本が赤、31大屋が紫。わかりやすくて非常によろしい。


前半の試合展開は以下。

0分、関大:駒大陣内に攻め込み、亀ヶ渕→安藤と繋いで、最後は櫻田が反転しながらボレーシュート。駒大GK牧野は動けなかったが、シュートはバーを叩く。
1分、関大:8木本がドリブルシュート(バー上)。
6分、駒大:自身のロングスローのクリアを拾った原が遠目からシュート(GKキャッチ)。
10分、駒大:桑原がゴール前にフィード、これを受けた原がゴールエリア近く至近距離でシュートするがGKがブロック。
15分、駒大:ロングフィード。赤嶺が右オープンスペースで受けて裏へ流し、原が突っ込むがGKが先んじてキャッチ。
19分、駒大:鈴木亮が左コーナー付近でキープ、築城のオーバーラップを引き出してクロス、ファーで赤嶺がDFに競り勝ってヘディングシュートを放つがGKキャッチ。
21分、関大:ボックス左角ちょい外でFKゲット。安藤がカーブのかかったボールをゴール正面に入れるが赤嶺が頭でクリア。
22分、駒大:築城のアーリークロスに最上が飛び込むがDFがしっかりマークについてシュートを打たせず。
24分、関大:カウンターで木本が突進するが、相対した駒大右SB阿部琢がオブストラクションで止め、警告。
27分、駒大:赤嶺クロスのクリアボールを鈴木亮平ループシュート。GKが後ずさりしながら腕一本ではじき出すファインセーブ。
28分、関大:カウンターからFW阪本が前進、ペナルティアーク付近でコースを探して横移動から右へ流れた木本にパス、木本のクロスをFW櫻田がシュートもDFブロック。
30分、駒大:FKから赤嶺ヘディングシュートもネット上。
31分、関大:2トップのコンビネーションでチャンスをつくる。ワンツーでDFをかわし、最後は櫻田のクロスに阪本が飛び込むがわずかに届かず。
34分、関大:カウンター。木本がマークについた最上と競り合いながら中央を前進、追走してきた亀ヶ渕にパス。亀ヶ渕が右サイドを上がってきた古橋へサイドチェンジを通し、そのまま前進してゴール前に進出してきた木本へラストクロス。しかし最後のシュートが浮いてしまう。
39分、駒大:原一樹の右ロングスロー、クリアを拾った宮崎がシュート、DFがブロック。
40分、駒大:原が左に流れクロス。鈴木亮平が中央に飛び込んでシュートするが、DFがブロック。
42分、駒大:赤嶺が頭でクサビを裏へ流し、原が走り込むが追いつけない。

前半は、お互いに攻守の切り替えが速く、スピーディな攻撃がピッチを往復する展開が続いた。
前半20分ぐらいまでは駒大のペースだったが、以後は関大も盛り返し、ボール保持ではむしろ上回っていった。


関大は快速FW30阪本やサイドMF7古橋・8木本の推進力を軸に、ボランチが交互に上がり、SBもオーバーラップして分厚い攻め。選手間の距離が近く、パス交換が小気味よい。詰まったらサイドを変えてドリブルでつっかける。ボランチ亀ヶ渕が要所要所でツボをついたパスを送り、攻撃に変化を作り出していた。特に、古橋・木本の両サイドMFの動きが良く、とくに左の木本はスピードに乗った突破で対面の駒大阿部琢を翻弄していた。


駒大はあいかわらずダイレクトプレー志向でFWに向けて長いパスを入れていく。ただし、前の試合では中央にデンと構える赤嶺に放り込んでは潰されるだけだったが、今日はサイドのスペースを使おうとする意識が見えた。赤嶺・原の両FWがサイドのスペースに流れてボールを受ける。二人がそれぞれ逆のサイドに流れたり、中央で近い位置にいて一人がいきなりサイドに動いたりと、マークを分散させるうまい動きが目に付いた。FWがサイドに流れてボールを引き出すと、鈴木亮平が秀逸な動きで中央へ入りこみシュートを狙う。最上・宮崎の両SHはセカンドボール狙い。左SB築城が再三のオーバーラップを見せ、攻撃に厚みを作る。アタッキングサードスローインはすべて原一樹のロングスローで、力攻めも試みる。


組織力の点で優位に立っていたのは関大だった。FW、中盤、SBの連携がよく、ドリブルとパスの選択も的確。基本的には縦に早い攻撃だが、詰まったら素早くサイドを変えたり、FWがマークをはずす動きを見せてパスを引き出したり、サイドMFが中へ入っていってマークを混乱させたりと工夫も見せていた。
一方の駒大は、桑原・廣井の両CBとアンカー八角が集中を保って中央を固め、最後のところでシュートを打たせなかった。ただし、右SB阿部琢が木本を止めきれないのと、相変わらずSHのポジショニングが良くない。最上・宮崎ともに、サイドのスペースをケアするのか、八角をサポートして中盤の底を固めるのか、という判断が悪く、関大に翻弄されていた。攻めではセカンドボールをよく拾っていたが、自分でサイドを崩していくような動きに乏しかった。


ただ、シュート数で上回ったのはFWの能力に勝る駒大だった。前半、駒大のシュート数は7本(赤嶺・原・鈴木亮平が2本ずつ、宮崎が1本)、うち枠内は計4本。一方、関大はあれほど工夫を凝らしていながらシュート4本、枠内はなし(櫻田がバーに当てたのが1つ)。駒大の手数をかけずにシュートまで持って行く攻めが機能した、という言い方も出来るが、最後のところで相手DFに勝てるかどうか、という個の資質の問題のほうが大きいと思う。


気になったのは主審の神経質な判定。大一番で両チームとも気合いが入っており、とくに中盤では激しい当たりが続いたが、その状況をコントロールしようとしてか、警告の基準が厳しかったように思う。そのわりにゲームをコントロールできたようには見えなかった。厳しめのジャッジの結果は駒大に不利と出た。前半のみで阿部琢・桑原・赤嶺が警告を受けた。赤嶺って累積2枚目じゃなかったっけ?


後半立ち上がり、駒大が高い位置でボールを奪おうと、関大ボランチとDFに激しくプレッシャーをかける。開始直後こそ関大の速攻を浴びてしまうが、その後はプレスが機能して立て続けにチャンスを迎える。高い位置でボールを奪ったら、早いタイミングで裏へ走るFWへパスを送る。FWがDFと併走しながらゴール前に入っていく動きが目立つ。

45分、関大:右SB2野村がオーバーラップし低いクロス、エリア右で古橋がボレー、GKキャッチ。
46分、駒大:原左クロスを関大DFがクリア。これが短く、赤嶺が拾って中央の鈴木亮平に送ってシュート。
47分、駒大:関大ボランチ亀ヶ渕にプレスをかけボールを奪って速攻。原がシュート(ゴール左に外れ)。
48分、駒大:ゴール前にフィード、原が関大DFと併走しながら足元に収めてシュート。GK森田がなんとか弾くがクリアは短く。ゴールやや左から宮崎がダイレクトでシュート、これがクロスバーに当たって直下に跳ね返り、バウンドしたボールがゴールイン。

猛攻が実って駒大が先制。幸運も味方した。


その後、しばらくは追加点を奪おうとする駒大と、反撃を試みる関大とのせめぎ合いが続く。

50分、駒大:再び赤嶺のポストプレーから鈴木亮平ミドルシュート(ゴール右外れ)。
54分、駒大:築城のクロスに原が飛び込むがボールにさわれず。
56分、駒大:赤嶺が倒されて得たFKから廣井がヘディングシュート(ポスト右)。
58分、駒大:原が得意のドリブルで右サイドを突破、最後は最上がシュート(GKキャッチ)。
59分、関大:木本が左サイドへ侵入、DFを振り切ってゴールライン沿いをえぐり折り返し。これに亀ヶ渕が飛び込んでシュートもGK牧野がキャッチ。
60分、関大:右MF古橋が強烈ミドルも枠にいかない。
62分、駒大:桑原が2枚目の警告を受け、退場。

駒大は、赤嶺・原がスペースに流れてボールを受け、少ない手数でゴールを狙っていく。徐々にボールを持てるようになった関大も、両サイドMFの突破力を軸に反撃するが、縦へ急ぎすぎて単調な攻撃になってしまい、駒大DFに跳ね返される場面が目立つ。


しかし、関大はあくまで縦への突破にこだわった。とくに、左MF木本のスピードには駒大ディフェンスが相当手を焼いていた。そして62分、その木本を駒大CB桑原が止めようとして体が当たってしまい、警告2枚目で退場。これは実に不運な判定だった。今日の判定基準、というより混乱基準に照らせば警告が出ても不思議ではないが、あれは意図的なファウルではなく、スピードに乗った相手を止めに行って結果的に倒してしまったプレーに見えた。このレフェリー、前半はゲームをコントロールしようとしてカードを乱発したり意図的に基準を厳しくしようとして、自分で混乱してしまうという良くある亜ターンに嵌ってしまったようだ。最近の穴沢さんみたいに、明々白々なファウル以外は極力流した方が結果的にうまくいくんじゃないだろうか(高校選手権SFの多々良学園vs野洲が面白かったのは、穴沢さんの流れを切らないジャッジが大きく貢献していたと思う)。

桑原退場後は、右SH最上がDFラインに下がって応急処置。67分には最上に代わって本職のDF4石井を投入した。右SHにはFW原一樹が下がり、前線は赤嶺のワントップ。

67分、関大:木本の左クロスを前線に上がっていたボランチ10安藤が落とし、FW9櫻田がシュート(GKキャッチ)。
68分、駒大:宮崎のクロスを原がはたいて赤嶺が突っ込むも打てず。
69分、関大:エリア左のスペースに侵入した櫻田が角度の無いところからシュート性のクロス、しかし誰も反応できずボールはむなしくゴール前を横断。
76分、関大:一気に2枚をスイッチ。左SB大屋も上がりっぱなしになる。

その後は、完全に関大ペース。
数的不利の中、駒大イレブンも守備に奮闘。しゃにむにゴールに突進する関大をDF陣が必死の守り。前方では原一樹が猛烈なフォアチェックをかける。
前線に一人残った赤嶺が、カウンターの起点になろうとするが、関大DFに潰されてほとんど何もできず。

79分、関大:木本の突破を原がファウルで止め、FK。位置はゴール正面やや、距離30m。大屋が左足で蹴るが、壁に当たってしまう。
82分、関大:FKのクリアボールを拾い、亀ヶ渕が左コーナー付近でキープ。上がってきた2野村に戻す。野村のクロスははじき返されるが、クリアを拾った10安藤がミドルを放つが浮いてしまう。
83分、関大:亀ヶ渕がグラウンダーのミドル。GK牧野がキャッチ。
85分、関大:大屋がドリブルでフィールドを斜めに横断、駒大のチェックをかわしてゴールエリアまで侵入、至近距離からのシュートはGK牧野が体を張って止める。
86分、関大:木本がニアポスト付近に速いクロス、FW阪本?が飛び込むがGK牧野がブロック。
89分、関大:ロスタイム。ゴール前の混戦の中、30阪本が体勢を崩しながらもシュート。しかしクロスバー直撃。バーに跳ね返ったボールがバウンドしゴールエリア上空にふわっと上がる。これを亀ヶ渕?が頭で押し込もうと突進するがGK牧野が飛びついてキャッチ。
89分、関大:ロスタイム2分。木本が倒されてボックス左角ちょい外でFK。10安藤が狙っていくが駒大DFがクリア。
89分、関大:ロスタイム3分。木本がこんどは右サイドから突っかけてCKゲット。しかしこれもものにならず。

桑原退場以後は、関大が一方的に攻撃した。しかし、気迫のこもったドリブル突破も、必死で上げるクロスも、守り倒すことを決意した駒大ディフェンスの前にはじき返される。前へ急ぎすぎてゴール前での工夫に欠けていた。駒大が完全に引いたのでスペースが無くなり、力攻めをするしかなかったのかもしれないが、それでも何か一つ変化をつけられれば良かったのだが・・・シュートがバーに当たってしまったのは完全な運。


試合終了と同時に、関大イレブンは全員突っ伏してしまった。とくに、果敢に勝負を挑み続けた木本は、しばらく立ち上がれなかった。さすがに3位表彰のときはみんなこらえていたが、その後は阪本や大屋といった1年生の動揺が収まらず、上級生やスタッフが肩を抱えながらロッカールームに連れて行った。


勝った駒大のほうも、赤嶺なのか、桑原なのか、一人グラウンドコートのフードを被ったままの選手がいた。


駒大が勝ったのは、必然だったのだろうか。
桑原が退場するまで、有効なシュートの数では駒大のほうが上回っていた。赤嶺の駆け引きのうまさ、原一樹のドリブルによる局面打開、鈴木亮平の1.5列目から打っていくシュート。最上・宮崎のセカンドボールを狙う動き。駒大のほうが、フィニッシュに持ち込む形を持っていた。
関大は、亀ヶ渕以外に変化を演出できる選手がおらず、スピードこそあったものの単調な攻撃になりがちで、駒大にとって読みやすい部分があっただろう。


でもねえ、駒大はバーに当てた一本が跳ね返って入った。関大はバーに当てた二本とも、ゴールの方に跳ね返らなかった。そして、最後の30分、駒大GK牧野が神モードになって関大の運を断ち切った。


ゲームの勝敗を決めるのはなんなのだろう、個の力? 戦術? 運?
こういう試合を見るたびに、考え込んでしまうよ。答えが出ないとは知りつつも。