2006J1第16節 FC東京 0 - 2 サンフレッチェ広島(観戦53試合目)

日時:2006年7月29日(土)18:30キックオフ
会場:味の素スタジアム
観衆:31684人
主審:片山、副審:山崎、安元、第4審:下村
得点:佐藤寿2(広島、20分、48分)
警告:栗澤(東京、19分)、茂庭(東京、26分)、森崎浩(広島、36分)、戸田(広島、37分)、
   青山(広島、55分)、徳永(東京、77分)、ジャーン(東京、89分)
退場:なし

花火にビールに浴衣とイベント満載だった夏休み最初の味スタ。いや、花火、よかったねえ。打ち上げたのは広島のほうだったけど。


FC東京のスターティングラインナップおよびサブスティテューション。

      馬場
    栗澤  梶山
 川口        石川
    今野  三浦
  茂庭 ジャーン 徳永
      土肥

SUB:塩田、中澤、宮沢、小澤、戸田、阿部、リチェーリ
選手交代:栗澤→リチェーリ(33分)、三浦→阿部(HT)、川口→戸田(56分)
鹿島戦から採用した馬場1トップの3-6-1フォーメーション。奇策といえば奇策だが、ここ2試合、それなりに機能していた。しかし、今節はルーカスと伊野波が累積警告で出場停止。ルーカスの代役は栗澤、伊野波の代わりが川口。右足首痛が伝えられていた梶山が強行出場。大丈夫か?(大丈夫じゃなかったね)。


サンフレッチェ広島のスターティングラインナップおよびサブスティテューション。

   ウェズレイ   佐藤寿
     森崎浩  森崎和
  服部          駒野
        青山
    盛田  戸田  中里
        下田

SUB:木寺、八田、入船、李、柏木、高柳、上野
選手交代:森崎和→高柳(HT)、佐藤寿→上野(85分)、ウェズレイ→李(89分)
中断明けから負けが込んでいたが、今節は2試合のお休みから戸田が復帰(前半戦だけで黄紙8枚もらったんだって。すげー)。盛田(!)、中里と3バックを組む。守備の立て直しなるか? 2トップは・・・怖そう。
フォーメーションは1ボランチの3-5-2。


で、結局、あーなってこーなって、今季最多の観客の前で最低の試合をしてしまい、ゴール裏からいいように言われる始末になっちまったよ、ガーロたんorz。


気を取り直して、まずは試合から。
最初の5分をみて、こりゃまずいなと思った。


広島は8人でがっちり守りを固め、攻撃は2トップにお任せというサッカーで来た。負けが込んでいるとはいえ、もともと組織的守備の遺伝子を持つチーム、がっちりと自陣を固め、東京の中盤を消しにきた。
今シーズンの東京は、みなさんご存知のとおり、中盤できっちりプレスをかけてくるチームに苦戦している。ましてや、急造の3-6-1がようやく機能してきたかも?という状態。本来ならメンバーを固定して熟成を図らねばならないのに、累積警告でルーカス、伊野波が抜け、梶山も右足首を痛めいつものパフォーマンスが発揮できそうにない。


苦戦は必至、そう思った。守備も最初のCK時から守備がバタバタしていたし、これじゃ寿人とウェズレイは止められんな、と。あんなにきれいに決められるとは思わなかったけどね。


馬場1トップの3-6-1という一見奇妙なシステムが機能していたのは、下がってボールを捌きたがる馬場と1.5列目から前に出て行くルーカスが入れ替わり、これに梶山が加わって前線の3人がポジションチェンジを繰り返しながら高い位置でポゼッションを行い、後列の押し上げやボランチの攻め上がり、サイドがオーバーラップするスペースを作り出していた。つまり、東京で上手い方から数えて3番目までの選手たちがそのテクニックを存分に発揮することでチーム全体に流動性をもたらしていたのだ(余談だが、どんなチームでも中盤のコアユニットとでもいうべき選手のセットは存在する。ただし、ポゼッション用のコアユニットを一番前に持ってくるところがガーロサッカーの面白いところ。普通はトップ下とボランチあたりでコアをつくるんだけどな)。
その中心となっていたのがルーカス。卓越したキープ力でどんなDFを相手にしても一定時間のボール保持が期待できる選手。それだけではなく、時には複数の相手守備者をひきつけ、他の選手たちのマークを手薄にさせていた。ルーカスが時間とスペースを稼いでくれるおかげで、他の選手たちが状況を判断し、プレーを選択し、ボールを扱うことができた。そして、1.5列目に下がったことによって前を向いて持ち前のテクニックを発揮することができるようになり、いまやゴールランキング首位に立つ活躍ぶりである(ルーカスの再生は明らかにガーロたんの功績。さすがに、ブラジル人のことはよくわかっている)。
この試合にいなかったもう一人の選手・伊野波も、判断の面で拙さは残るものの、その対人能力とフィジカルを生かした広範な動きで攻守に欠かせない存在になっていた。また、そのポリバレント性によって選手交代の采配に柔軟性をもたらしていた(まったく、使える新入りだ)。
いわばキーパースンだった二人の欠場。加えて、ケガの梶山低調なパフォーマンスに終始した。
ようやく機能しはじめたばかりの脆弱なシステムは、カギとなる選手たちの欠場・不調によって崩壊してしまったのだ。


そしてスタメン選択のミスが崩壊に拍車をかけた。
そもそもスタメンに文丈を使ってる。文丈は経験に裏打ちされたプレーでチームに落ち着きをもたらすことができる。しかし、寄る年波(涙)で90分持たないため、デフォルトで交代枠が一つ必要なわけだよね。つまりスタメン選択にミスは許されないわけだ。ところが、ルーカスの代わりに栗澤を起用し、その栗澤が代役をこなせなかったため(そもそも適性の問題が・・・)リチェーリに交代(こういう小手先の修正は早い)。次にハーフタイムで文丈から阿部。さらに、これまた絶不調の川口から戸田。本来は宮沢あたりをいれて放り込みをやればと思ったが、もう枠がない。おまけにコンディション不良の梶山が後半は消えてしまったがこっちも交代枠はない。結局、憂太が孤軍奮闘で玉砕。
最初から馬場を1.5列目にしてリチェーリ(もしくは阿部)の1トップにすりゃ良かったじゃん、というのが私の考え。川口の左は妥当だし、ここまでの流れの継承を考えるなら梶山の強行出場はやむを得ない、といったところか。


とにかく、最悪のパフォーマンスで敗戦後はお定まりのブーイングに辞めろコール、さらにサッサーとハラトーキョーまで発展してしまったわけです。いやー、相変わらずえげつないね、うちのゴール裏。まあ、念願かなってよかったね。連中、春先から「辞めろコール」したくて仕方なかったものな。なんつーか、彼らに限らず、ガーロ否定派・懐疑派の面々って最初から底意地の悪い態度を取っていて、それこそ原さんが首になった腹いせをしてるんじゃないかと邪推したくなるくらい、ガーロに理由のはっきりしない悪意を持ってた。おいらが一応擁護派を気取ってるのも、そんなイケズな連中への反感が半分あったと思う(もともと、へそ曲がりなもので)。もっとも、いまや理由のある悪意に変わっちゃった訳ですが。シーズン半分使ってこの内容ではブーイングも辞めろコールも仕方のないところである。


次に、ガーロたんの指向するサッカーについて考えてみる。
よく「ガーロは何をしたいかわからん」っていう人がいるけど、やりたいサッカーははっきりしている。ボールを保持し、自らが試合の流れをコントロールするサッカー。パスを繋ぎながら相手の様子を伺い、隙を見つけると一気にスピードアップしてゴールを陥れるサッカーを指向している。具体的には、中盤でのパス交換によって相手守備陣を引きつけ、薄くなったサイドに展開、一気に崩しにかかる形を考えている。このあたりのコンセプトは首尾一貫してるんだよね。
問題は、コンセプトを実現するための方法論において、試行錯誤を繰り返していること。マンマーク騒動とか、3バックになったり4バックにしたり、1ボランチ気味にしたり、あげくのはての3-6-1だったりとあっちこっちブレまくって各方面の不興を買っているのはご存じの通りである。


なんでこんなに迷っているのか。その理由は、ガーロたん側の問題と選手側の問題に分けられる。
まず、ガーロたん側の問題。こちらは、就任前から危惧されていた経験不足、および指向するサッカーがやや難しいスタイルである、という2点に集約されると思う。
まず、経験不足。監督としての経験不足から(おそらく)適切なコーチングが行えず、いまにいたるまでチームを機能させられない原因となっている。それに、日本サッカーに対する知識が足りないためか(たしか初めての海外指導ですよね)、適材適所とは思えない選手起用をすることが多々ある。
さらに、ちょっと小難しいスタイルのサッカーを指向していることが、チームがなかなか機能しない理由なんだよね。1ボランチにこだわっていたように、ガーロは攻撃側にバランスを傾けたサッカーがお好み(これが理由で監督になったのかな?)。守りはボランチ1枚とCB二枚の3人で、残り7人は攻撃に参加すべし、SBは両方とも上がってOK、というシステムになっている。3バックを採用するときも、DFのうち一人は積極的に攻撃参加し、ボランチ1枚と残ったDFで後方をケアする、というやりかたをしている(広島戦で、ジャーンや茂庭が果敢に攻め上がってたでしょ)。つまりある意味、イケイケなサッカーなわけですよ(苦笑)。
そして、守備はマンマークが基本。マーク対象をしっかり追って、攻撃に切り替わったらマークを捨てて前にでる。あれ、ジェフのサッカーじゃん(笑)。もっとも、いったん中盤でキープしてから攻めるので、ジェフほどのスピードは求められないが。ただ、このやり方、バランスの取り方が難しいんだよね。当然、行っていい場合とだめな場合の判断が的確でなきゃいけないし、中盤での繋ぎでは的確なポジショニングと正確な技術が求められる。相手の隙を見つけたらポゼッションからギアを切り替えて一気にゴールを陥れなきゃならない。攻めから守りに切り替わったときは攻撃参加した選手が空けたスペースを誰かが埋めなきゃならない。1ボランチの左右スペースを突かれたら、DFが前に出るか攻撃的MFが適宜下がるかしてケアしなきゃならない。まあ、あれこれと頭を足元を使った細かい仕事が求められるわけです。


ここで、選手の問題になってくる。東京の選手って、真面目でやる気はあるけど頭使うのは苦手。そもそも、繋げっていわれたらその通り繋ぐ、そして繋ぎだけをやっている連中なわけで。基本的な戦術能力が欠けているんだよね。

例えば栗澤(彼をやり玉に挙げると某方面から怒られそうだが)。流経では中心選手だった彼ですが、東京における役割は馬場やルーカス、石川といった「一発芸」のある選手たちに仕え、その間をつなぐこと。ところがこの試合ではルーカスの代役で起用された。つまり、1.5列目から馬場を追い越していくプレーが要求されるわけです。ところが、栗澤は馬場と梶山の間で横パスの中継点になってるだけで、前へ出るチャレンジが少なすぎた。持ち味じゃないことを要求されてるよ、といえばその通りなのだが、プレーの幅を広げる意味でもチャレンジして欲しかったな。ただでさえ、準レギュラーなんて微妙な立場にいるんだからさ。東京の選手たちのなかでは頭がいい方の栗澤にしてこうなのだから、他の連中に至っては、ダメモードの梶山、なぜかオフザボールの動きを忘れてしまった川口、個人突破しか考えないリチェーリ、身体能力に頼りすぎな徳永、と散々なでき。

かろうじて、石川が積極的にミドルを狙ったり(後半の、少し下がった位置でクロスを受けてミドルを狙う試みなんていままでなかった)、戸田がサイドを塞がれているとみるや中に入ってワンツーを試みたりと、少しは工夫をする選手が出てきたことが救いかな。
こういう選手たちなんで、小難しいガーロサッカーに適応できないんだよね。ガーロもガーロで、基本的な個人戦術から教えなきゃならないってことが理解できてないみたい。

元々、大熊時代の堅守速攻カウンター路線に始まり、それを引き継いだ原さんがなんちゃって欧州風に手直ししてここまで来た。「なんちゃって欧州風」という表現を使ったのは、基本的にリアクションサッカーであることに変わりはなかったから。「アマラオ大作戦」が「サイドアタック大作戦」に変わっただけです。ただし2003年は別(2002年は見てない)。ケリー、文丈、宮沢の作る中盤のコアユニットがサイドアタックの効果を最大限に引き出していた。大作戦を操っていたコアが解体してから、単なるクロス放り込みサッカーになってしまった。岡ちゃんが「東京はカウンターしかない」と喝破したとおりです。この辺が理解できてないと、加部究みたいな誤解をすることになる。
つまり、東京の選手たちはチーム事情があったにせよ、単純な、やることがはっきりしている(選択肢の少ない)サッカーをずっと続けてきた。あまりにも長く続けて来たせいで、イケイケで攻めて根性で守る以外のことができない、状況に応じたプレーが出来ないチームになってしまった。


つまり、ここで立て直しを図るのは妥当なわけですよ。ただし、その一番手に、経験が少ない上にある意味エキセントリックなサッカーを指向するガーロたんを選んでしまった。
だから、「ガーロでいいのか?」じゃなくて「ガーロがふさわしいのか?」という問なら成立しうると思う。本来は、オーソドックスなスタイルを採りつつ、戦術をじっくり仕込んでいくタイプの人がよかったんだよね。具体例をあげると、オフトとか神戸のバクスターとか。日本人だと、柱谷兄あたり。


私の意見はというと、結論としてはガーロという選択は時期尚早だったと思う。もう少し各選手の戦術理解力や技術レベルが高いチームじゃないとあのサッカーは難しい。ただし、現時点での解任には反対。理由としては、再生は破滅の後にしか来ないから、じゃなくて、シーズン中の監督解任はリスクが大きすぎる、ということにつきる。それに、そこそこ勝ち点は拾っているんだし(ただし、残留争いに巻き込まれた場合を想定して、堅い戦い方ができる監督候補をリストアップしておくべき)。
ただし、フォーメーションは固定する。守りは現行の3バック2ボランチをベースに、守りの面でコンビネーションを熟成させる(どうせ、左SBいないんだしさ)。前も、新加入のワシントンが1トップ向きらしいんで、1.5列目にルーカスや馬場or梶山を配する3-6-1で良いかと(もっと早く、ガーロ子飼いの選手を取ってきて中心に据えればよかったのに)。
とにかく、せっかく始めたんだから、1シーズン続けるべき。いまのサッカーをやってれば、最低限、足元のテクニックは向上するよ。ガーロの契約を延長するかどうかは、シーズン残りの采配を見て決めればよい。帳尻合わせが上手そうだけど、長期的にみて東京のチーム力向上に寄与するかどうか、という視点でね。


もう一つの問題として、中長期的にみて東京を強くするにはどうするか、今のクラブのやり方は妥当なのか、我々ファン・サポーターはなにを考え、どういう態度を取るべきかという問題があるのだが、それは別のエントリで。