第44回全国社会人サッカー選手権大会 1回戦 クラブ・ドラゴンズ 1 - 0 滋賀FC(観戦32試合目)

日時:2008年10月18日(土)11:00キックオフ
会場:新潟県立紫雲寺記念公園多目的運動広場
観衆:100人*(公式記録。実際は会場に300人程度いたと思うが、どこまでが関係者でどこから観客なのか極めて不明瞭)
主審:山際、副審:石川、金子、第4審:土田
得点:長浜(ドラゴンズ、60分)
警告:白井(ドラゴンズ、13分)、西粼(滋賀、18分)、前川(滋賀、38分)
退場:出原(39分)

ああ、とうとう来てしまいました。フットボールの魔界、その頂点の一つたる全社に。
もっとも、最近は全国各所にJを目指すチームができ、ちょっと前まではフットボール廃人の終着駅としか思えなかった地域リーグも、ずいぶんと身近なものになってきている感がある。
この日、紫雲寺会場に来ていたのは、クラブ・ドラゴンズ滋賀FC矢崎バレンテAC長野パルセイロの4チーム。このうち、北信越の強豪である長野、すでにJFL2チームが拠点を置いている滋賀から出てきた滋賀FCはそれなりのサポーター集団を擁している。矢崎総業系列企業を母体とする矢崎バレンテもなにやらサッカーを良く知ってそうなおじさん集団が付いてきており、会場はかなりの盛り上がり。関係者以外物好き数名、という環境を勝手に想像していたオイラは、大いにとまどった。一番地味だったのは、流経大の3rdチームであるドラゴンズ。ここの応援は関係者(親御さん)+物好き(amakuri姐さん)という大学チームらしいといえばらしい構成である。え、おいら? ただの運転手ですよお。


今年の全社は、来年の国体が開催される新潟が舞台。会場はビッグスワンが位置する新潟市と、そこから車で30分ほどの距離にある新発田市および聖籠町に設定されている。
今回訪ねた会場は、新発田市の海岸沿いに造られた県立紫雲寺記念公園。海水浴場やら、温泉施設やらが併設され(つーか、サッカー場が併設だな)、選手のシャワー室=温泉というオツな作り?らしい。サッカー場は天然芝のフィールド一面からなり、バック中央に屋根付きで2列のベンチシートが設けられ、用途不明のコンクリート製の張り出し(用具入れらしい)を挟んで、バック両翼は芝生。ベンチシートは木製、柵も木製。メイン側の運営用諸施設はプレハブ&テント。場所がやや狭いため、レイアウトにだいぶ苦労したようである。
この会場、砂浜の奥の防風林の中にあり、周りには何もない。当然、バスの便が非常に少なく、可能な限り公共交通機関を使う主義のオイラも(何のためかって? もちろん酒を飲むためだ)、今回ばかりは車を調達した。シャトルバスと銘打ったものがあるにはあるが、どこから来てどこへ行くのか良くわからない。


全社は国体のプレ大会(要するに運営テスト)としての位置づけもなされ、係員の皆さんは当然不慣れであり、あれこれ迷いながら会場を切り回しているのがよくわかる。
とくに悩みが深そうに思えたのはアナウンスを担当していたお兄ちゃん。各会場の途中経過を流す際、チーム名の読み上げでいちいち躓くのだ。まあ、何語だかよくわからんカタカナ名前のチームが多いしねえ。それが不満なファンもいて、アナウンスで「ぶい・ふぁーれん長崎」と読み上げられると、「違うだろ! ヴィ・ファーレンだろ! あんな『超』メジャーなチーム名を間違えるなよ」とお怒りのお嬢さん達がおられた。V・ファーレンがメジャー・・・・メジャー・・・・超メジャー・・・・なんか違う気がするw。やっぱり、廃人の溜まり場だよ、ここ(爆)。


クラブ・ドラゴンズのスターティングラインナップおよびサブスティチューション

クラブ・ドラゴンズ (第44回全国社会人サッカー大会1回戦)
19長沢
13千葉11高野隆
7大橋16柳
8澤田
5竹石2高野修
25出原 4東田
1白井
SUB:21古庄、18松岡、14早瀬、15田上、24長浜、10宮城、23金澤
選手交代:柳→松岡(HT)、千葉→長浜(50分)
わーい、3トップだー!(意味不明)。 中盤の構成をどう表記しようか迷ったが、澤田を底にした3ボランチとしておきます。
年齢からみて、流経の1〜3年生で構成しているみたい。


滋賀FCのスターティングラインナップおよびサブスティテューション

滋賀FC (第44回全国社会人サッカー大会1回戦)
8本間 11岩田
14西粼10橋爪
6前川 15奥田
3奥村7上田
5谷口 4門岩
1松岡
SUB:21河原、13木村、17中島、20保田、26武藤、9梅辻、24北口
選手交代:15奥村→9梅辻(56分)、8本間→24北口(66分)、10橋爪→20保田(79分)
選手は近畿地区の大学・高校出身者が主体。11FW岩田は前所属が三菱水島FC
こちらは基本的に4-4-2に見えたが、岩田が1トップ気味になっている場面も多かった。

爽やかな秋晴れのなか、午前11時キックオフ。あ、試合は40分ハーフです。ケリが付かなければ10分ハーフの延長戦の後、PK戦というレギュレーション。


序盤は滋賀FCが優位。素早い寄せでボールを奪うと、サイドかラインの裏へパスを送り、FWを走らせるというシンプルな攻め。2分、左サイドで得たFKから本間がヘディングシュートを放つが、ゴール右に外れる。
滋賀のプレッシャーがきつく、パスを繋ぐことができないドラゴンズはロングボールと個人の突破で状況の打開を試みるが、有効な攻撃に結びつけられない。
滋賀は快足FW岩田が果敢にドリブル勝負をかける。10分、その岩田がドリブルでエリアへ侵入、対応したDF出原と絡んで倒れるがノーファール判定。


10分がすぎると、ようやくドラゴンズもエンジンがかかって流れが拮抗。攻守がめまぐるしく入れ替わる、ドツキ合いの展開に。11分、ドラゴンズは左SB竹石のロングスローから高野輶がヘディングシュートを放つがGKがキャッチ。そこからのカウンターで滋賀FW岩田が突進、ドラゴンズGKが飛び出しペナルティアーク付近でタックルをかけるがファウル判定で警告、この位置で滋賀のFK。MF前川が直接狙うがバーの上。
15分、ドラゴンズがFW長沢が単騎でエリア内に持ち込み、DFに囲まれつつも粘るが競り合いの中でファウルを取られ、滋賀ボールに。
17分、ドラゴンズは右サイドのから速いクロスを入れる。滋賀GKが飛び出すも触ることができず、ファーサイド側へ斜めに突っ込んできた千葉がボレーでゴールを狙う。シュートは枠を捉えていたが、カバーに入った滋賀DFに掻き出される。ドラゴンズ、前半最大の決定機だった。


20分過ぎから、流れがややドラゴンズに傾き、30分までの間に4本のCKを獲得する。しかし、惜しい場面もあったが得点ならず。


30分を過ぎると状況は膠着。滋賀FW岩田のスピードは相変わらず脅威であり、ドラゴンズDF陣は必死の対応。37分には突破を図った岩田に左SB竹石(翼くん)が対応、エリア内で絡んで岩田が倒れるがノーファール。
38分、ドラゴンズはFKからゴール前の混戦に持ち込むが滋賀GKがセーブ。39分にはカウンターでMF大橋が突進するが、滋賀DFに阻止される。


前半最大の事件はロスタイム直前に起こった。再三にわたってドラゴンズDF陣を脅かしていた滋賀FW岩田が、カウンターから裏への抜けだしを図る。これまで何とか対応できていたドラゴンズCB出原だが、今回ばかりはぶち抜かれ、あせって後方からチャージ、岩田を倒してしまう。これが得点機会阻止で一発赤紙となり、出原はピッチを去ることになってしまった。


海千山千の社会人を相手にして、数的劣勢で後半を戦わねばならなくなったドラゴンズ。さあ、どうする? 負けるな、燃えよ、ドラゴンズ!(なんか違うって)。


♪一番白井がセーブして、二番高野がオーバーラップ、三番・・・・は欠番ですか。じゃなくて後半だよ。


出原が退場したため、ドラゴンズは組み立ての中心だったMF柳を下げて、CBの補充として後半頭から松岡を入れる。中盤センターを大橋と澤田、千葉と高野隆を両サイドMF、長沢1をトップ気味に配する4-4-1的な布陣。


後半開始から数的優位に立つ滋賀FCがゲームを支配、ドラゴンズのゴールを脅かす。松岡は入るなり大忙し。
46分、左CKからゴール前の混戦であわやのシーン。48分、FW岩田がエリアにカットイン、DFと絡んで倒れるがノーファール。続く49分、裏への長いパスを受けた岩田が再びゴールに迫るが、シュートはGKがキャッチ。

ドラゴンズは、流れを変えようとFWにフレッシュな選手を投入、千葉に代わって長浜を入れるが、滋賀の勢いは衰えず。
50分、右CKの流れからCB門岩がヘディングシュートを放つがポスト右。53分に右クロスにMF西粼が頭で合わせるも、シュートはやや弱くGKが難なくキャッチ。54分には本間のミドルがゴールを強襲。


55分、ドラゴンズの反撃。FW高野隆?がドリブルでDF一枚をかわして右クロス、GKが触って左CK。そこからCB東田がゴール前に飛び込むが、混戦の中でシュートが打てない。


このころから、圧倒的に見えた滋賀の勢いがペースダウン。いわゆる「攻め疲れ」があったのかもしれない。もっとも、柳を下げてしまったドラゴンズも手詰まり気味。試合は滋賀がやや優勢のまま膠着。
56分、滋賀はMF奥田に替えてFW梅辻を投入。


60分、ドラゴンズは左サイドでボールを繋ぐ。プレスをかけようと滋賀の陣形がボールサイドにシフトした時を突いて、大橋がピッチを斜めに横断するサイドチェンジを飛ばす。スピードといいコースといい文句なしの素晴らしいボールだった。これに合わせて、SB高野修がタイミング良く右サイドを駆け上がる。高野修は、ゴールライン際までえぐって、GKが出てこられないコースに低く速いクロスを入れる。ゴール前に突っ込んでくるドラゴンズのFW2枚。ラインを上げていた滋賀DFは自軍ゴールに向かって相手FWと競争する形。クロスに合わせたのは、ファーサイドに飛び込んだ長浜だった。伸ばした左足でのダイレクトボレーがネットを揺らす。キーパーは反応できなかった。


滋賀は65分、FW岩田がドリブルシュートを放つがGKがセーブ、これで得たCKからゴール前の混戦に持ち込むが、ファウルを取られてドラゴンズボール。66分、本間に替えてもう一人の控えFW北口を投入し、パワープレー開始。
入った北口は早速チャンスを演出。68分、右CKが逆サイドに流れ、これを拾った北口がカットインして速いクロスを入れ、一瞬のスピードDFを振り切った岩田がゴール前に飛び込む。触れば一点ものだったが、わずかにタイミングが合わず、岩田の頭に薄く当たったボールはゴール右へ外れる。


73分、ドラゴンズのカウンター。長沢がアーリークロスに頭で合わせるがゴール左に外れる。


その後は、しゃにむに攻める滋賀と、必死で守るドラゴンズ、という構図。
滋賀は79分、FW北口が倒されて得たFKをゴール前に放り込むが、競り合いの中でGKに対するファウルを取られ、万事休す。


学生さん達が、数的劣勢の中で社会人を退け、見事に一回戦を突破した。


全般に押していたのに、チャンスも作っていたのに無得点負けを喫した滋賀。攻撃が単調だった。FW岩田のスピードは確かに脅威だったが、単騎突破にこだわりすぎというか、周りが頼りすぎというか。ただでさえ、ドラゴンズは退場者を出すほど手こずっていただけに、岩田が引っかき回して周りが決めるとか、中盤でタメを作って岩田を使うとか、もうひとつ仕掛けがあればねえ。


ドラゴンズも、得点に至る一連のプレーこそ見事だったが、それ以外の場面では、滋賀のプレッシャーがきつかったせいか、精彩を欠いた。話を聞いた限りでは、調子に波があるチームのようで、パフォーマンスが相手チームとの相性で左右されるところがあるとのこと。際だったパフォーマンスを示した選手は流経大の上位カテゴリ(2ndチームであるJFLチーム)に引き上げられてしまうという、3rdチームゆえの事情もあるようだ。


こんなハンデを抱えたドラゴンズの次戦の相手は、北信越の覇者、AC長野パルセイロ。間違いなく強豪である。
さあ、どうする。いいぞ、がんばれ、ドラゴンズ。燃えよ、ドラゴンズ!
注)筆者は中日ファンではありません。山本正之のファンではあります。