2009年Jユースカップ FC東京U-18 2 - 0 サンフレッチェ広島ユース

12月27日、日曜。穏やかな冬の長居で、決戦が始まる。



東京は4-4-2。メンバーは決勝Tに入ってからずっと不変。技術とハードワークが高いレベルで両立するチームである。やってることはオーソドックスだが、磨き上がられ方が普通ではない。


広島は3-6-1というか3-4-3というか、要するにトップと同じようなやり方。技術とハードワークの両立を目指すところは変わらないが、戦術が変態である。ユースでこれをよくやったもんだとおもう。


キックオフは13:33。
開始直後、GKからのフィードを受けようとした梅内がファウルを受け、FKを得る。約25mの距離を重松が狙う。おそらく無回転だったのだろう(映像みてないんすよ)、厳しいコースでは無かったが、GKが危なっかしくCKに逃れる。これが、後に語り継がれることになる「重松、嵐の無回転」の始まりであった(今のところ嘘)。
阿部のCKはニアに飛び、DFがクリア。これを拾った年森がクロスを入れ、ファーに飛び込んだ重松が合わせてネットを揺らすが、広島がグッドタイミングでラインを上げていたため、オフサイドになる。


立ち上がりは双方が主導権を握ろうと激しくプレスを掛け合い、ゲームが落ち着かない。ファウルが多く、両チームとも縦ポンで中盤を回避する場面も多い(広島も蹴ってるじゃないすかゴリさんw)。


5分、中盤の奪い合いを制した広島・大崎がドリブルで持ち出し、裏へパス。これに呼応してDFの森保がオーバーラップ。松藤がカバーリング。競り合いの中、森保がファウルを犯し1枚目の警告。


10分に差しかかる頃だろうか、プレッシングの激しさで上回る東京が主導権を握り始める。
「前プレ」が機能し押し込む東京、カウンターで対抗する広島、という前半の基調となる図式ができあがる。


14分、阿部の右CKをファーで折り返し。広島DFのクリアを拾った年森がミドルを狙うが左にそれる。
16分、広島は一気に右サイド裏へ展開、そこからクロス。松藤のクリアを拾った宮本がミドルシュートを放つがGK正面。
17分、右サイド裏へ走り込んだ山口が広島DFと肉弾戦。最後は後ろからチャージしてしまい、山口が警告を受ける。
山口はめげずに走り続ける。19分、ラインの裏をとってエリア左サイドに侵入、シュートを放つが広島DFがブロック。


東京の前線では、重松が起点となる。DFを背負っても、ほとんどクサビを収めることができ、そこから自分で反転しての突破もあれば、他の選手を生かすプレーもある。山口、三田、梅内が激しく動き回り、左サイドでは阿部がダイナミックなオーバーラップを見せる。


23分、阿部のアーリークロスに三田が突撃するが、GKがタイミング良く飛び出してキャッチ。
24分、広島は右サイドをコンビネーションで崩してゴール前へ入れるが、これは東京DFがクリア。これを拾った中山がミドルを打つがGK崔の正面。その直後、阿部が左サイドを攻め上がり、クロス性のシュート(なんだそれ)を入れる。広島GKがボールをこぼすがすぐ押さえる。東京は詰め切れず。


東京が猛攻をかけるが、さすがに広島も真ん中が堅く、ペナルティエリアではシュートチャンスを得られない。そんな膠着状況を、キングのスーパープレーが変える。
25分、クサビを受けようとした山口がファウルを受け、東京はゴール正面、約30m位置でFKを得る。キッカーは重松。右足から放たれた強シュートはGK正面へ飛ぶが、GK田村は無回転のブレ球をキャッチしきれず、その手を弾いたボールがゴールイン。スーパーな一撃で東京が先制した。


30分、重松が中盤に下がってチャンスメーク。ボールキープから右サイド裏へスルーパス。三田が猛ダッシュで突進し、クロスを上げようとするが広島DFがブロック。続く34分にも三田が右サイドをえぐる。35分には重松とのワンツーで山口がきれいに中央突破、GKと一対一の決定的なチャンスを得るが、シュートはやや弱くGKがキャッチ。


そして迎えた36分、クサビを受けようとした重松に対し、広島DF森保が後ろからアタック。森保はなんとか足をだしてボールを掻き出そうとするが、このときに足が絡んでしまい2人とも転倒。悪質なプレーではなく、むしろ重松が森保の上に倒れ込んだようにも見えたが、主審は森保に二枚目のイエローカードを呈示。森保は退場となった。たしかに、倒れたときに重松の足をカニばさみみたいにはさんでしまったようだが・・・ちょっとかわいそうな判定だった。なお、この判定に抗議した大崎?も警告を受けた。


一人少なくなった広島に対し、東京は情け無用の攻撃を継続。39分には阿部のクロスを受けた重松が、右サイドを突進してくる三田へパス。三田がエリア右、やや角度の無いところがらゴール左隅を狙うが、これはわずかに外れる。
43分には重松が再び無回転FKを狙うが、これはアウトにかかってしまい枠をそれる。


2分のロスタイムが過ぎ去り、前半が終了する。
東京は、持ち味のプレッシングがはまって主導権を握り、FKを含めて10本(手元集計です)のシュートを放った。広島の守備が堅く、シュート数のわりには決定的なチャンスが少なかったが、重松のスーパーFKが決まって1点リード。山口のアレは・・・強く打って欲しかったけど、ずうっと走り回ってたからなあ。
広島はシュートわずか2本(同じく手元集計)に封じ込まれた。前線にクサビが収まらず、東京の「前プレ」を回避できなくて押し込まれたままだった。大崎のドリブルも不発だった。


ハーフタイム、コンコースを歩いていたら、森保パパらしき人を見かけた。佐藤寿人がいたらしいがわからんかった。


後半頭に広島は2枚替え。ワントップを砂川から井波に、シャドーストライカーの水頭にかえて浅田を投入する。フォーメーションは、DFが左から浅田・宗近・越智、MFが宮本・茶島・中山・早瀬、FWに大崎と井波。実際はかなり流動的だが、あえていえば3-4-2の形になる。


後半立ち上がり、重松がドリブルでペナルティエリア近くまで持ち込み、シュートコースを探す。すかさず広島DFが群がり、狭い局面でボールの奪い合いに。サポートに駆けつけた梅内が密集からボールを持ちだし、重松にパス。重松のシュートは枠を捉えていたが、GKががっちりキャッチ。48分には阿部がオーバーラップし、グラウンダーの高速クロスをゴール前へ入れる。これに山口が突撃するが、クロスは広島DFにカットされる。


このあたりから、主導権が広島に移り始める。要因としては、前線で井波が起点になり始めたことだと思いますね。東京の「前プレ」をかわして井波にボールを収め、2列目以下が押し上げる(だから広島も蹴ってるじゃないすかゴリさんw)。高い位置でボールを持てれば、持ち前のテクニックと変態な戦術が生きてくる。そして数的不利を補う凄い運動量。この人たちもどえむでどえすだわ(なんのこっちゃ)。
東京のほうは、再びプレスをかけて押し返そうとしているように見えたけど、後半は広島の繋ぎのほうが上回っていた。前半から飛ばしてきたツケが出てきたのかも知れない。


広島は、左サイドでは茶島を中心とするコンビネーションで揺さぶって大崎のドリブル勝負、右は11分に交代投入された元田を中心とする崩しで、ゴールを狙う。


52分、大崎が左サイドでドリブル勝負をかける。前半は不発だったが、後半はキレキレ。たまりかねた平出が足を引っかけてしまい、警告。ペナすぐ外の位置から茶島がFK、GK崔がクリア(狙ったのか?)。続くCKは東京DFがクリア。
57分には、大きなサイドチェンジから浅田が速いクロスを入れるがGKが押さえる。


東京はカウンターアタックで対抗。59分、左サイドを梅内が抜け出しゴールライン際までえぐって折り返す。中に重松が入り込んでいたが、タイミングが合わない。62分には阿部のアーリークロスに三田が飛び込み、ヘッダーを放つがキーパー正面。


64分、重松のファウルで広島がFKゲット(重松は警告)。中山のFKに合わせてゴール前に広島の選手がなだれ込むが、突っ込む勢いに比べて球速が遅く、タイミングが合わず。
66分、井波のポストプレーから中盤の選手がミドルシュートを放つが崔がキャッチ。
67分には広島の決定機。ワンツーで浅田がエリア左へ侵入。飛び出すGK崔と交錯する寸前、浅田がチョンとシュートを放つがバーの上。


69分、カウンターで得たFKを重松が狙うが、枠を捉えられない。


このあたり、東京は耐える時間帯。プレスがはまらず、広島に高い位置で繋がれて揺さぶられる状況が続く。広島は後列の選手の追い越す動きを使ってペナルティエリアへの侵入を試みるが、東京の最終ラインが最後のところをしのぐ。カウンターのチャンスはあるものの、攻め上がる枚数が少なく、広島ゴールを脅かすに至らない。


72分、東京が後半初めて得たCK。阿部のキックからゴール前の混戦になり、こぼれた浮き球に平出がボレーで合わせるが枠へいかず。74分、再びの阿部のCKに重松が飛び込み頭で合わせるが、当たり方がやや薄く、シュートはゴール左に流れる。


78分、大崎がワンツーで抜けだし、ドリブルでエリアへ侵入してから中央の井波へパスを出すが、東京DFがカットしCKに逃れる。この左CKに、マークを振り切った井波が足を大きく伸ばしてシュートを放つ。決定的チャンスだったが、井波はシュートをふかしてしまう。


80分、東京の反撃。中央やや左寄りでボールの奪い合いになり、最後は年森がボールをキープ。年森にプレスをかけようと広島DFが囲い込む。その間を抜いて、年森がポンと右サイドへ展開する。そこには太平洋みたいな(オーバーなw)広いオープンスペースが広がり、大会得点王・三田が待ち構えていた。三田はペナルティエリア右に侵入、前へ出てシュートコースを塞ぎにかかるGKの横を抜いて、ゴール左隅に値千金の追加点を流し込んだ。
ゴールパフォーマンスは当然コマネチ・・・・ではなかった。


後が無い広島は、無理責めに出る。87分、右クロスに2枚が飛び込むが東京DFがクリア。89分にはゴール前の混戦から大崎?がシュートを放つが、ゴール左へ外れ。


東京は89分に重松・山口から佐々木・前岡へ、さらにロスタイムに山崎に替えて武藤を投入し、逃げ切り体制へ。
ロスタイムは4分。左サイドで阿部のキープショーなんかもあり、確実に時間を使ってタイムアップ。


冬の王者(byエルゴラ)の栄冠は東京に輝いた。


勝因はというと、やはり決めるべき人が決めたことでしょうね。広島は強かった。これまで対戦したチームとは、ちょっと格が違っていた。ただ、最後のところが決められなかった。東京は、キングと得点王を擁していた。差は、それだけでしょうね。


今回の東京U-18に勝つには、①東京の猛烈なプレスの中でも繋げる技術をもつ、②大人のフィジカルで力任せにねじ伏せる、③最初から引いてプレスを空回りさせ、カウンターとセットプレーに勝機をかける、の3つぐらいのやり方が考えられる。
広島は①ができた、決勝Tでは唯一のチームだった。②は、例えばガンバの宇佐見みたいな規格外の化け物が必要で、こういう選手が出てくるかどうかは運の要素もあるよね。③は夏のクラブユースでセレッソが採ったやり方(だそうです、見てません)で、これは見事にはまったらしい。


ま、「前プレ」がはまったときの東京は、もう無敵でしたね。J's Goalのコメントに「東京は蹴ってきた」っていうのがあったけど、あれはちょっと筋違いだとおもう。東京は、意図して「蹴った」のだ。繋ぐことに対する変なこだわりなんかない。それよりも、勝つために最適なプレーを選択しようという確かな意思が感じられた。技術があって、ハードワークが出来て、なおかつ状況に応じて適切なプレーを選択できる、戦闘集団。それが倉又東京なのでしょう。


それにしても重松は凄い。体が大きいわけでも、特別スピードがあるわけでもないが、でっかいDFを背負っても、ほとんどボールを失わず、確実にコントロールし、攻め上がってくる味方に効果的なパスを出した。そして前を向けば、技術と駆け引きでシュートまで持っていき、確実に仕留める。まさにスナイパー。そしてあのフリーキック日向小次郎に例えている方がいましたが、俺的には、あれは「ギャラクティカマグナム」です(リンかけ派なのよ)。
トップでは・・・二列目やシャドー的な位置では結構使えるのでは。
阿部は、とにかくパワフルな攻め上がりが印象的だった。体は小さいが、重心が低くて安定していて、背の高い選手がかえって対応に困っているぐらいだった。来年は長友・徳永がワールドカップで抜かれるので、けっこう出場機会があるのでは。
平出は、とにかく最後で体を張れる選手、という印象(この辺は、ユースを見続けてきた人とはちょっと違うかも)。評判がいい足元だが、1試合に一回はびっくりどっきりプレーがあったような。CBは激戦だが、守備的なボランチの控えは手薄なので、こちらもナビスコあたりで出場機会があるかもです。
そして三田君は・・・本人は、「東京に恩返しする」っていってるようですが、特別指定で囲い込んだ方がいいんじゃない?


とにかく、べたな言い方ですが、うちのにーちゃんたちには元気と希望をもらいました。ありがとう。
東京U-18はうまいんだけど、決して華麗ではなく、むしろ泥臭く戦い続けるチーム。俺が初めて東京を見たときと、どこか似ている。輪は続いているんだなあ、と感じる(これでまとまったかなw)。


最後に試合後の写真をば。



試合終了。



球蹴りのうまいにーちゃんを、戦う男に育て上げたカミナリオヤジ。



泣き笑いの得点王。



集合写真の裏はこうなってます。選手達の右上、アナウンサーのやや後方にいる女性がフォトセッション担当の人。仕切る仕切るw。


得点王がシャーを始めようとしたら、チャンヒ君(かな?)はじめ数名がピッチの中央に向けて走り出し、皆を呼ぶ。みな走って移動。シャー中断w。カップをスタンド前に置き忘れたが、年森が気付いてしっかり回収。さすがキャプテン。すかさず、年森コールが発生w。

おもむろにカップをセンターサークルに置き、ワニナレモニワ、じゃなくてワニナレトウキョウ。
これは良かったが、後がグダグダ。しばらく、みんな所在なげにしていたが、「ありがとうございました」みたいな感じで場を収めて、スタンド前に戻ってくる。



改めて、得点王のシャー。



キングのシャー。三田の後、しばらく間が空いてましたが、やりたそうだったのを察した声だし隊の人が呼んであげましたw。



試合後は、ちょっとこんなところへ。


We are Tokyo!