2014年J1第7節 広島 1-0 FC東京(観戦13試合目)

広島の変態システムに対する東京の守り方が面白かったので、備忘録的に。


まず、スタメンとオリジナルフォーメーション。

東京は河野をトップ下に置いた4-3-3、広島はいつものとおり。


巷で言われているとおり、広島は攻撃時に5トップになる。

4バックに対して5トップをぶつけ、ミスマッチを利用して崩すやり方。後方は、塩谷と水本がSBの位置に張り出し、森崎がCBに下がって4バックになる。青山がアンカーとしてバイタルを埋める。中盤には人を配置しない。相手の中盤を遊兵化させ、前線と最終ラインの数的優位を確保するシステムである。


この変態システムに対し多く採られているやり方が、こちらも5バックにしてミラーゲームにするというもの。あの頑固なランコ・ポポヴィッチでさえ、広島に対してはこの戦法を用いた。ミラー戦術の利点は、基本マンマークになるので、一対一で負けない限りミスマッチを作られないこと。ただし、いつもとは違った配置になるので、攻撃面でうまくいかない事があること。典型的な例が去年の天皇杯準決勝・広島vs東京で、シャドー役を担ったアーリアと東には、プレーに戸惑いが見られた(という印象・・・)。


この試合で、われらがミステルが採った策は・・・

基本的には、高秀先生が寿人のマークとして最終ラインの真ん中に入る。前は3トップと両インサイドハーフの5人でスクリーンを張り、中央エリアへのクサビを遮断、相手の攻め手を限定する。
石原・高萩両シャドーのマークはCBとインサイドハーフが受け渡す。青山が前進してきた場合は河野が対処、サイドバックが上がってきた場合は2トップが対応し、インサイドハーフと連携してサイドに追いやる。
この守り方で特筆すべきは、バイタルエリアがぽっかりと空いていることである!(黄色の楕円)。ここにシュート力のあるトップ下でもいれば一大事になるのだが、広島の場合は構造上ここに人がいないので、空けておいても問題は起こらない(!!)。

「むこうが中盤に人を置かないなら、こっちも置く必要ないじゃない!」

バイタルを使わない相手に対してバイタルを埋める必要がない。たしかに言われてみればそうなのだが、まさか意図的にバイタルを捨てるとは・・・(サイドを捨てるやり方はよく見るんだが)

ミラーゲーム戦法が「数合わせな」のに対し、このやり方はいわば「スペース合わせ」。実に眼から鱗であった・・・



寿人がバイタルに引いてボールを受けに来た場合は先生が付いていく。シャドーが落ちてきた場合はCBかインサイドハーフが追う。



マイボールになった場合は高秀先生がアンカーの位置に戻れば4-3-3に戻り、いつものやり方で攻めていける。


このやり方はある程度奏功した。実際、広島はパスの出しどころが無くて苦労していたし、先生の徹底マークを受けた佐藤寿人カズダンスどころではなく、途中交代に追い込まれた。


難点ももちろんあって、ぱっと見て気づいた点は、インサイドハーフの負担が非常に大きいこと。シャドーをCBと受け渡しながらマークし、ウイングにボールが渡れば味方SBと共同して囲い込み、広島のSBが前進してくればFWと共に対応する。そして攻勢に転移すれば、前の3枚のサポートをしなければならない。タマはもちろん、死ぬまで走るはずの米本も途中交代を余儀なくされた。
後半は全体に疲労してしまい、攻撃に厚みを欠いた。


新監督になってやり方が一新され、3月こそもたついたものの、この試合では組織が整ってきているのがはっきりと目に取れた。セットプレーの一発で破れはしたものの、先に希望が持てる敗戦だった(だから余計に悔しいんだけど)。




ビッグアーチの仇は紙屋町でとった(イナゴ的報復法)。


この翌週、4月20日の第8節にビッグスワンで行われた新潟ー広島戦を観戦した。

新潟がとった広島対策はこれ。ボランチの一枚がシャドーに付いて最終ラインに下がり、バイタルにレオシルバを残す。前線の4枚はビルドアップを妨害するとともに後方の攻め上がりに対応する。こういうやり方をするだろうとは思っていて、どこまで通用するかなという興味を持って見に行ったのだが、この試合の広島はミッドウィークにACLを戦った影響で疲労が濃く、運動量はビッグアーチの試合と比べて激減していた。広島は最初から自陣にこもって引き分け狙い、新潟の拙攻もあってスコアレスドロー、面白みに欠ける試合だった。
1.5人分の働きをするレオシルバが広島に対しどこまでやるだろう、と期待していたのだけれど。