2014J1第11節 浦和レッズ 1-0 FC東京(観戦21試合目)


埼スタへ行ってきた。


両チームのスタメンとフォーメーションはこう。

東京は、前節トップ下だった東が左インサイドハーフで起用された。前線は3トップ。ただし、開幕時のようにウィングを置くのではなく、平山をCFとし、千真と武藤がその左右近くに位置する形。CBは吉本に代わって加賀を先発起用。高さで勝負してこない相手に対しては加賀なのね。ベンチには河野が戻ってきた。
浦和は槙野が負傷欠場で、代わりに永田が先発起用。


浦和はいわゆる(?)「サンフレッズ方式」の変形フォーメーション。攻撃時には4-1-5の形になる。通常、阿部は攻撃時にCBの位置に下がるが、この試合では槙野がいないため左SBの位置にスライドしていた。

サンフレッズ方式」の特徴のひとつは、相手の4バックに対して5トップをぶつけ、前線で数的優位を作ること。そのために必要な人数を、「中盤を無人化」することによって捻出している。
東京の対抗策は、第7節で本家・広島相手にとったのと同じく、高秀先生を相手1トップ・忠成のマーカーとしてDFラインに下げ、5バック的な布陣とすること。向こうが中盤を無人化して前線の枚数を増やそうとするなら、こっちも中盤を捨てて数的優位を打ち消す、というやり方。向こうが使わないスペースはこっちも捨ててしまうのである。このやり方だと、アンカーがDFラインに吸収されてしまうためバイタルエリア(図の黄色の楕円)ががら空きになるが、「サンフレッズ方式」はデフォルトでここに人を置かないシステム(中盤を無人化しているから)であるため、問題は起こらない。忠成がボールを受けにバイタルに落ちるなら、先生もついていく。前は、3トップと両インサイドハーフでスクリーンを張り中央エリアへのパスコースを遮断、相手をサイドに追い込んで仕留める。


この「バイタル放棄」とでも言うべき守り方で中央エリアへのパスコースを遮断された浦和は、そこだけは比較的フリーになる両WBを使って攻めてきた。

例えば、WBに長いボールを入れ、裏へフリックしてシャドーをペナルティエリアへ侵入させるやり方。


もう一つは、

単純にWBに勝負させてシンプルなクロスを上げるやり方。中の選手にダイアゴナルな動きをさせてマークを振り切ろうという工夫はしていた。しかし、連戦の疲れなのか、習熟度が「本家」に比べると落ちるからなのかはわからないが、ビッグアーチでやられたような息もつかせぬコンビネーションアタックを連発する、という状況にはならず。


連戦の疲れからか、浦和のほうが自陣に引いてしまう時間帯もあった。

東京の「バイタル放棄」方式が「ミラーゲーム」方式に比べて優れているのは、アンカーの位置さえ元に戻せば自分たち本来の配置に戻ること。アンカーの高秀先生は大変だけど。
ただし、現時点の東京の攻撃パターンは、前線3人によるショートカウンター、太田のクロス、武藤よっちの個人能力による局面打開、ぐらいしかなく、引かれた相手を崩す方法はまだ身につけていない。そもそも、主な攻め手であるカウンター自体がまだ下手である。
その中で、前半はショートカウンターからいくつかシュートチャンスを得ていた(千真・・・)。後半、浦和に引かれた状態で攻めあぐむが、ここは個人能力。徳永がカットインからシュートを放つが、惜しくもポスト(録画見ると、西川がちょっと触ってる)。


浦和のカウンターに対しては、先発起用された加賀が奮戦。その快速を生かしたカバーリング能力を見せつけた。交代出場した河野も献身的な守備を見せた。・・・が・・・・


またもセットプレーから失点。そのときの配置図が以下。録画が低解像度なので、一部推定(TBSチャンネルこのやろ)。
柏木がニア側のゴールエリア角(以下、ニアゾーンとする)に立つ武藤の頭を越えて落ちるボールを入れ、マークを振り切って飛び込んだ阿部に合わせられて失点。これが決勝点となった。

注目したいのが、CKに対する守り方。なにしろ、広島戦、名古屋戦に引き続き、CKから失点して負けるのはこれで3試合目である。その全てが、ニアを破られての失点だった。


東京のCKに対する守り方は、ゾーンとマンマークミックス。このやり方は大半のチームが採用している。
ゾーン守備を担うのは、ニアポストに立つ太田、ファーポストの徳永(興梠と密着)、ニアゾーンにいる武藤よっち、ゴール前の平山。これら、事前に担当エリアを決めて配置される選手は「ストーン」と呼ばれる。
一方、ゴール前に突っ込んでくる相手選手をマンマークするのは、こちらの守備の専門家たち。このケースでは、両CBと先生、それに米本が、忠成・永田・那須・阿部らをマークする。


私が気になったのは、ニアゾーンのストーン役をやる選手の起用法(この場面では武藤よっちの位置)。この位置には、ヘディングの強い選手が置かれることが多い。ここではじき返してゴール前にボールが入れられるのを防ごうという発想である。しかし、守備の専門家であるCBは相手のストロングヘッダーをマンマークしなければならないため、ゴールエリア角のストーンにはヘディングの強いFWが起用されることが多い。東京でいうと、第6節鳥栖戦で平山がCKをはじき返しまくっていたのが記憶に新しい。


ところが、CKでニアゾーンを破られ失点した広島戦、名古屋戦、そして浦和戦、この3試合の失点場面全てで、平山はこの位置のストーンに起用されていない。例えば、名古屋戦では高秀先生がニアゾーンのストーンで、勢いをつけて飛び込んできた矢野貴章に上回られ、失点を喫している(これは相手が悪かった・・・)。
もちろん、フィッカデンティはこんなこと百も承知のはず。つまり、ニアゾーンの防空力を落としてでもケアしたい何かがあった、もしくは平山を別のところで起用することで総合的な守備力を向上させる目論見があった、ということになる。

上の絵で、平山の位置はニアゾーンでは無く、ゴール真ん前のストーンである。

かなりいい加減ではあるがそれぞれの担当範囲を書き込んで、平山が担っていた役割とフィッカデンティの意図を考えてみる。


平山はゴール前の広いエリアをゾーンで守る。その役割はマンマークを振り切ってゴール前に突っ込んでくる相手に対応すること。突っ込んできた相手がストロングヘッダーであっても、その高さで対抗すること。
フィッカデンティは、マーカーが振り切られた場合の保険として平山をゴール前のストーン役に指名した。たとえマークが振り切られても、ゴール前に単純な高さ勝負なら最強の選手をあらかじめ配置しておくことによって、念には念を入れたつもりだった。


こういう推測はなりたたないだろうか?


実際は、CKに対する守備システムがうまく機能しなかった。米本は阿部に振り切られ、ニアゾーンに配置された武藤はヘディングを被り、その後方をカバーすべき平山は突っ込む阿部に対応できなかった。最後の砦たる権田もニアポストにいた太田も、阿部のヘディングに反応できなかった。


まだ先は長い・・・んだろうな。