2004ヤマザキナビスコカップ決勝戦(その1) FC東京 0 - 0 浦和レッズ (PK 4-2 ) (観戦89試合目)

Lasakongawa2004-11-03


時は1940年、イギリス。ヨーロッパ大陸ナチスドイツに席巻され、同盟国フランスは電撃戦の前に倒れた。連合国はまだ結集していない。合衆国は未だ参戦せず、ソビエトは不気味に沈黙している。イタリアは地中海をうかがい、極東では大日本帝国が牙を研ぐ。
彼らは孤独だった。たった一国で本国と世界に広がる植民地を守らねばならなかった。英本土上陸を狙い、ドーバー海峡の制空権を奪取せんとするドイツ空軍。立ち向かうはRAF(イギリス空軍)のわずか数百名の戦闘機パイロットのみ。
そんな絶体絶命の状況下で、ときの首相ウィンストン・チャーチルの下院における演説で、
「もしこの危機を乗り切れれば後世の人々は『(国民が団結している今を)これこそが彼らの最良のとき(Their finest hour)だった』と語りぐさにすることでありましょう」
と述べた(かなり意訳)。


そして今は2004年11月3日。晴れ。我らがクラブが初めて迎える「最良のとき」。
(人によっては、JFL優勝のときだとか、J1昇格のときだとかあるかもしれないが、メジャータイトル奪取という意味で)


何時に国立に行くか迷ったが、結局、アドホックでマッチデイを買ってから国立へ行くことにした。
ところが、乗った東西線が、車内清掃(誰か吐いた?)と2度にわたる急病人救護で停車に次ぐ停車で10分以上遅れ、新宿に着いたのは11時過ぎ。幸先悪いなーと思いつつアドホック6階にいくと、マッチデイを求める東京サポの大行列が出来ていた。マッチデイプログラムはまだ山積み残っていて難なくゲット。その場で読みたいのを我慢しつつ(やっぱりマッチデイはスタジアムで読まなきゃ)、千駄ヶ谷に着いたのは11時半ごろ。やはり赤い人が多い。駅前で機関誌トーチューの特別号をもらってから国立へ。今年のお菓子はチップスターとオレオ。袋が赤なのが気に入らない。茂庭にならい、新潟支援募金に寄付。年齢にちなみ自由席ホーム寄り上段U-36(そうなのだよ^^;)に座る。
昼食を食べながら久方ぶりのビール(この日のために禁酒してたのだ)を飲んでいる内にナビスコキッズバトルが開始。ロンパールームカリキュラマシーンもすでになく、「できるかな」もとうの昔に終了した今、日本屈指の長寿マスコット(なんせU-36のオジサンが幼児の時に既に存在していた)となったガチャピン・ムックの登場である。最近は仲間もいるのね。対決はFC東京キッズが見事に勝利。うーん、最近の子はみんなうまいなあ。とくにドリブル合戦はすごく早い子がいた。最後にFC東京キッズとポンキッキーズのPK対決となったが、東京側のGKはMrピッチ・・・。横に動けないやつ、GKにするなよ。というわけでこれは負け。


その後、ゴール裏では懐かしの西が丘時代のネタ合戦が開始される。半分ぐらいしかわからなかったけど、笑えた。しっかし、ここで東海大ネタを出すか(笑)。余談になるが、最近の東海大は、「ねらいうち(by山本リンダ)」を歌いながらパフォーマンス(掲揚ポールによじ登るとか、虎の着ぐるみ着て走り回るとか)をやってます(今年春の時点)。目を吊り上げて応援するより、やっぱりこういうほうがいいよね。ただ、あのスペシャルソングは少しはずしてたと思うけど。
だいぶリラックスできたところで、選手紹介。さすがに決勝戦、両チームのスタジアムDJが来て、いつものテーマ音楽でやってくれた。ちなみに一番ブーイングが大きかったのは東京ではハラヒロミ、浦和はもちろん田中(闘)さん。ちなみに、あの挑発報道が本人発言の趣旨を反映しているのか、それともスポーツ紙のフレームアップなのかはわからないが、私が最初に連想したのは「加藤哲郎」。日本シリーズ3連勝後のヒーローインタビューで「巨人はロッテより弱い」と発言したと報道され、そのあと4連敗してしまった近鉄バファローズのピッチャーである(本当はちょっと違うニュアンスの話が、例によってフレームアップされてしまったらしいが)。


そしていつものYou'll never walk aloneの大合唱。浦和側は一人一旗運動実施中とのことで、大中小の旗だらけ。地域ナショナリズムと結託した金満クラブのマーチャンダイジングの成果である。こちらは選手入場時に身の丈クラブのささやかな奮発、青赤ボードを掲げる。客の入りは7:3ぐらいの比率で浦和が多い。東京側の指定席にもかなり赤い人が混じっているが、クラブカラーが青赤だし、ちょうどいい彩りかも。バックスタンド指定席の上部ではユース選手たちが整列!って感じで応援している。東京側のゲーフラはよく見えなかったが、「はじめてだからやさしくしてね(はあと)」には笑った(どこかでみたような気がするのだが。J1に上がった年かな)。浦和側は真面目なものばかり。バックスタンドでゲバラ旗をもった浦和の若い衆が東京側に向かって突進していくが、警備員によって志半ばで阻止される。うーん、若いのう(遠い目)。
盛り上がったところで、14時7分、キックオフ。


東京はいつもの4-5-1フォーメーション。GK土肥、金沢‐茂庭‐ジャーン‐加地の4バック、三浦文丈・今野のボランチ、戸田が左、石川が右、トップ下ケリー、そしてルーカスの1トップ。控えは塩田・藤山・梶山・馬場・阿部。土肥は今年のナビスコ初見参、怪我から復帰の戸田が先発。
浦和は3-4-3フォーメーション。GK山岸、ネネ‐田中(闘)‐アルパイの3バック、ボランチ鈴木啓太と長谷部、左WBアレックス、右WB山田、そしてエメルソン・田中(達)・永井の3トップを採用した。控えは都築・内舘・酒井・平川・岡野。


東京は、浦和3トップをDFラインとドイスボランチとの間でサンドイッチにして封じる。浦和FWがサイドに流れた場合はボランチが追いかけSBと共同で囲い込み、ボールを奪う。なるべく高い位置でボールを奪うためにラインは高く保つ。奪ったら戸田・石川の両サイドにケリー・ルーカスがからんで速攻をかける。両チームのサイドMFの駆け引きが見所の一つ。バランス重視のポジショニングをする右WBの山田はともかく、左のアレックスは攻撃に特化している。石川が高い位置をとってアレックスを押し込めるかどうかがポイントとなる。


その石川は開始直後、裏へ出されたボールに走り込み、追いつけなかったものの攻めの意識を見せる。
2分には永井がドリブルで上がってきて右サイドのオープンスペースへパス、これに鈴木啓がコーナーフラッグぎりぎりで追いつき折り返し、しかしこれに反応する選手は誰もおらず、難なく土肥がキャッチする。
左では戸田が積極果敢な飛び出しを見せるがオフサイド。7分にはクリアミスを拾った石川が右サイドを駆け、ネネをかわしてクロスを入れるがルーカス・ケリーに合わない。


浦和はむしろ慎重な立ち上がりだった。最近の浦和といえば、鈴木啓を中心に最初からガンガンプレッシャーをかけてきて相手を混乱させ、3トップの決定力で得点を重ねて、前半のうちに試合を決めてしまうというイメージがあった。ところがこの日はラインが下がり気味で、したがって中盤プレスを掛け始める位置も低い。守りを固めて攻撃は前の3人におまかせ、という感じなのである。こういうガチガチな戦法って田中(闘)さんがお嫌いなサッカーじゃ・・・(以下自粛)。


8分、エメルソンがドリブル体勢に入るが、東京はCBとボランチで挟み込み突進を止める。こぼれたボールは永井にわたるが、素早く体勢を立て直したボランチ陣と戻ってきた戸田で素早く囲い込んだため、永井はボールを下げるしかなかった。東京の守り方を象徴するシーンだった。
直後の9分、ルーカスがキープして守備陣を引きつけてから右サイドのスペースへボールを送る。石川が追いかけるがわずかにおよばず、ゴールラインを割る。
以後、しばらくは激しいぶつかり合いの展開が続くが、東京はラインを高く保ち、ボールを奪ってから早い攻撃をかけようとし続ける。しかし、ラインが高いということは、一つ対応を間違えれば浦和快足3トップにスペースを与えてしまうという事でもある。


10分、東京のパスミスを拾った浦和はエメルソンに繋ぐ。得意のドリブルで前進するエメルソン。ジャーンがいったん止めるがこぼれ球は再びエメルソンへ。今度こそ裏へ抜けようとするエメルソンをジャーンがプロフェッショナルファウルで倒して1枚目の警告。これによって得たFKからファーサイドの田中(闘)がヘッドするがオフサイドの判定。13分には東京が攻め込むが鈴木啓がパスカット、ネネのロングフィードを田中達が頭で落とし永井へ、ペナルティエリアの前を横切る様なドリブルを開始した永井を後ろから文丈が引っかけてしまい警告を受ける。このFKをアレックスが直接狙うがバーの上。


ここからしばらくはポゼッションでやや勝る東京がサイド攻撃をかけ、浦和がカウンターで応酬する展開となる。
15分にはジャーンのパスカットから金沢を経由して戸田が左サイドをえぐってクロスを入れる。これにルーカスが飛び込むが山岸がキャッチする。続いて加地の左足クロスをルーカスが胸でケリーへ落とすがタイミングが合わず。18分には加地のサイドチェンジから戸田がルックアップしてクロス、これにはルーカスと石川が反応するが山岸がキャッチ。
21分には浦和に最初の決定機が訪れる。カウンターから永井がドリブルで持ち込んでエメルソンへ、素早く永井に戻してマークを引きつけてから長谷部にボールが渡る。中央突破をケアするために加地がかなり中へ絞り込み東京の右サイドにスペースができる。そこへ入り込んだアレックスへ長谷部がスルーパス、石川のマークが後手に回りアレックスがフリーでドリブルシュートを放つ。しかしファーサイドを狙ったと思われるシュートは大きくはずれた。中央へ走り込んでいたエメルソンは激怒する(もっともジャーンがパスコースを切り、エメルソン自身には茂庭がしっかり付いていた)。これが両チームを通じてのファーストシュートだった。23分にはスローインを田中達がヒールで裏へ流しエメルソンが突進するが競りながら茂庭が外へけり出す。


東京のファーストシュートは24分。ジャーンがロングフィード一発、浦和3バックのギャップにうまく入り込んだルーカスが胸トラップしてシュートを打つが浮いてしまった。28分にはルーカスケリーコンビで突破をはかるが山田がCKに逃れる。石川の蹴ったCKをルーカスがネネと競りながらヘッドするがシュートはバーを越える。
そして運命の29分。東京の中盤パスを鈴木啓がカットし素早く裏へ抜けようとするエメルソンに送る。これを早めに潰そうとチャージするジャーンだが足がエメルソンにかかってしまい、エメルソンは転倒。いったんピッチ外へ。吉田主審は躊躇無く2枚目のイエローを示す。ピッチの上に崩れ落ち懇願するジャー ン。抗議する文丈。しかし判定が覆るはずもなく、ジャーンは涙を流しながらピッチを去る。去り際に土肥に腕章を渡して(そう、今日はジャーンがキャプテンだったのだ!)。


早くも10人になり、東京は大きなディスアドバンテージを背負い込む。ベンチ裏にアップを強める藤山が見えた。
そして33分、藤山投入。下がるのは三浦文丈。てっきり戸田か石川だと思っていたのに。藤山が右CBに入り、今野がワンボランチ。あえて書くなら4-1-3-1という布陣になる。文丈自身は無念の交替だろうが、これは原監督の紛れもない「下がるな」というメッセージだった。
その意を受けてか、東京は機をみて攻撃を試みる。35分にはルーカスがサイドに流れて中央へ走り込むケリーへクロスを入れるがネネがクリア。その直後には石川がサイドをえぐってファーサイドの戸田へクロスを送るが少し大きい。ネネは石川のスピードに付いていけない。また単純なクロスを入れるだけでは浦和3バックの高さにはじき返されるだけであるため、低く早いクロスやファーサイドを狙うなどの工夫をしている。


数的優位に立った浦和だが、何か様子がおかしい。足元でボールを回し、チャンスをうかがっているふうに見える。まるで緑のサッカーである。しかしパスセンスのある選手を複数抱えている緑ならともかく、今ちゃんが言っていたとおりに浦和の遅攻はあまり怖くない。結局3トップの個力勝負になるからである。それならば集中力を保ちマークをはずさなければ対応可能だ。37分にはエメルソンがペナルティエリアに侵入するが、藤山がシュートコースを塞ぎ、結局は横ばいドリブルからのグラウンダーシュートを土肥がキャッチする。
その直後に東京は加地のスローインをルーカスが頭で流し戸田が飛び込むが山田にクリアされる。このとき山田と戸田は激しくぶつかり合い、しばらく倒れる。


この後も浦和は慎重な姿勢を崩さず、東京も石川の飛び出しがオフサイドになるなどゴールにせまれず、前半が終了する。


その2に続く