J2第9節 徳島ヴォルティス 1 - 1 コンサドーレ札幌(観戦11試合目)
日時:4月30日14:00キックオフ 会場:鳴門総合運動公園陸上競技場 観客:5689人 主審:長谷、副審:原田、鍛冶、第四審判:丸
あのズングリしたシルエット・・・それは、まぎれもなく奴だ!
あの怪しげなオーラ・・・それは、まぎれもなく奴だ!
というわけで、大分に行く途中に徳島に寄った。
もちろんあの二人の近況を見に行くためである。
チームは違えど、ともにJ1昇格したばかりの台所事情が苦しい時期をまがりなりにも支えた選手。傑出した能力を持っているとはいえないが、ともにひたむきなプレーぶりがファンの共感を呼び・・・というより、一生懸命やっていてもそのキャラクターゆえか、なぜかネタにされてしまう選手だった(でも愛されてたことは確かだよね)。
その二人が、J2加入したばかりのチームに三顧の礼(かどうかは知らないが)で迎えられ、それなりに活躍しているという。これは見に行くっきゃないでしょ。
というわけで、ゴールデンウィーク初頭の徳島に降り立ったのであった。
空港からバスで徳島駅へ、そこからヴォルティス徳島号なる快速列車でスタジアム最寄り駅である鳴門駅へ向かう(コンサのサポーターのほうが目立つ)。JR四国の鳴門線は、高松−徳島間をつなぐ幹線である高徳線から池谷(いけのたに)という駅で分岐している、盲腸のような路線である。鳴門駅は終点で、しっかり線路の端が見える。徳島駅からは30分ぐらいだった。JR四国は女性駅員が多く、この鳴門駅も改札・切符販売・ホーム案内は女性駅員二人で切り回していた。
スタジアムへは駅前から臨時バスが出るのだが、歩いた(歩いても25分ぐらい)。鳴門陸上競技場はどこの県にもありそうな、聖火台のついた国体仕様の陸上競技場である。面白いのはメインとゴール裏が椅子(メイン中央が個席、メイン両端とゴール裏がベンチシート)なのに、バックスタンドが芝生席だということ。メインスタンドの席を買ったのだけれど、バックの芝生で寝ながら観戦しても気持ちよさそうだった。
運営のほうは、まだJリーグ仕様に慣れていないらしく、荷物チェックをすると言いながら検査用の机は小さなものが一つだけで、検査員は高校生らしきボランティアスタッフがおずおずとやっている。面白いことに、半券再入場が許されていて、主な売店はスタジアム外に並んでいる屋台なのだった(構内にはドリンクとお菓子類を売る小さな店が一軒だけ。もちろん、ポカリスエットとカロリーメイトが買える)。よくも悪くも、JFL時代の牧歌的な雰囲気が残っているのだった。
ちなみにこのチーム、チームソングは倉木麻衣作だが、はっきり言って倉木節なのでサッカーには合わないと思う。
やきそばなんぞ食らっているうちにチーム練習がはじまった。あの二人は遠目でみてもはっきりわかる。
徳島のスタメン。
大島 羽地 伊藤彰 片岡 金位漫 秋葉 鎌田 小峯 谷奥 谷池 高橋範
控えは、古田、挽地、筒井、大場、小林。
フォーメーションはオーソドックスな3-5-2ダブルボランチ。JFL時代は攻撃力を誇ったチームだったらしい(見たことはない)。マッチデイプログラムを読むと「つなぐサッカー」を標榜しているとのこと。
大塚製薬からの選手が大島、片岡、鎌田、谷奥、谷池、古田、筒井、大場。
移籍組が羽地(柏)、伊藤彰(鳥栖)、金(千葉)、秋葉(新潟)、挽地(湘南)、そして小峯(柏)とノリヲ(チリのチーム)。
JFL時代のメンバーと移籍組が半々ぐらいの構成で、手堅い補強と言えようか。
マッチデイプログラムの表紙は、フェイスガードをしていて良くわからなかったがなんと羽地だそうだ。ちなみに本来のエースである林はケガ中で、ファンクラブテントの前でサインをしていた。
札幌のスタメン。
中山 堀井 上里 砂川 西嶋 岡田 田畑 西澤 曽田 加賀 高原
控えは、阿部、徐、権東、三原、相川。
柳下体制2年目で、あいかわらず戦力的に劣勢なのは否めないが、チーム戦術が定着してきたのか、最近の3試合は湘南・京都・福岡という3強にいずれも引き分けとそれなりの結果をだしており、J2の下位から中堅へと脱皮しつつあるのかもしれない。
そして、開始から10分間は圧倒的な札幌ペースとなった。
札幌は、パスを繋いで組み立てようとする徳島の逆手をとり、前線から激しいプレスをかけて高い位置でボールを奪い、そのまま早い攻撃に繋げていく。徳島の繋ぎのパス、受け手がトラップする瞬間を狙ってアタックする。徳島がクリアしても、運動量に勝る札幌がセカンドボールを支配し、攻撃を続ける。最初の10分間に札幌の得たCKは3本、クロスが5本、そして4本のシュートに結びつけた。プレースキック、クロスボールの精度が良く、上記以外にもあわやのシーンが続出する。徳島は全くといっていいほどボールを前に運べず、西澤のミス以外で得たチャンス以外は防戦一方だった。
ところが、一つのプレーをきっかけに形勢が逆転する。
このように、徳島が突然、流れるような素晴らしい攻撃を披露した(まともにパスがつながったプレーはこれが最初だったと思う)。これをきっかけに流れがガラリと変わり、続く10分間は徳島が主導権を握る。
徳島のサッカーは確かにショートパスによる繋ぎを重視したもので、かつポゼッション指向だった。まずポストプレイヤーである羽地にクサビを入れ、落としたボールをFW大島(マリノスの大島とは違い、小柄なテクニシャン)やトップ下の伊藤彰が受け、両WBも絡んでワンツーやドリブルで抜いて行こうとする。前が詰まると無理に突っかけず、ボランチの位置までボールを戻して組み立て直す。組み立ての中心は秋葉だった。
秋葉は、ボランチ二人の中でもアンカー的な役割を与えられており、3バックの前に位置をとって、バイタルエリアのケアとボールの展開役をこなし、時にはバックラインに入って攻撃を防ぐといった、このレベルでは抜きんでた働きを示し、文字通りの要になっていた。
この時間帯の徳島は、DFラインの押し上げが効いていて、秋葉にボールが戻されたとき、谷池・小峯の両ストッパーがすかさずオーバーラップして展開パスを受け、サイドに攻撃の起点を作ることが出来ていた。3バックの両サイドが攻撃の起点になるのはなんだかトルシエジャパンみたいだが、それにしても小峯がぁ〜!という感じである。大胆だなあ(それなりにこなしてました)。
こうして、前が詰まると一度戻してサイドに展開、というパターンがはまり、20分すぎまでは徳島が一方的に攻め続ける。とくに左WB片岡のクロスは正確で、なんどもいいボールを送り込んでいた。しかし、シュートが・・・シュートが打てない。羽地も大島も勝負をかけるのだが、そのたびに札幌3バックに潰されていた。
そのうちに流れが拮抗しはじめ、徳島がポゼッションから、札幌がカウンター気味という違いはあるにせよ、お互いに攻め合うようになる。
- 13分、札幌:カウンターから右サイドに流れた中山元気がドリブルで前進しクロス、これに堀井?が飛び込むがノリヲが交錯しながら押さえる。このプレーはファウルになったが、ノリヲが足を痛めたらしく、ゴール前のFKを蹴ったのはなんと小峯。ハアハア。
- 28分、徳島:左WB片岡のクロスがファーサイドへ。そこに斜めに飛び込んだ右WB金がゴールエリア内でボレーシュートを打つが、ふかしてしまう。決定的だった。
- 33分、徳島:羽地がドリブルで持ち込んで左CKゲット。片岡が低く速いボールを送り込む。羽地にDFの注意が引きつけられている隙に、うまい動きでマークをはずした大島が頭で合わせようとするが、いかんせんタッパが足りなかった・・・
- 38分、札幌:カウンター。岡田が右から早いグラウンダーをゴール前に送り込む。混戦になるが、ノリヲがなんとか押さえる。
- 44分、札幌:徳島陣内でボールを回し、最後に田畑がねらい澄ましたミドルシュートを放つが、惜しくもクロスバー。
ロスタイムは1分。お互いに決定機はあったものの、無得点のまま前半を終えた。
このとき、後半があんな展開になるとは思いもしなかった。
後半はのっけから札幌が主導権を握った。
徳島も札幌ゴール前までボールを運べるものの、前半と同じく羽地と大島の2トップが押さえられている。
- 54分、札幌は堀井に代えて相川投入。
- 56分、その相川がゴール前でフリーになりかけるが谷奥が阻止。
- 57分、札幌:砂川のクロスに中山が頭で合わせるがクロスバー直撃。
- 63分、札幌:砂川がカットインしてシュートを放つが押さえが効かない。
この時間帯、砂川の動きが良く、たびたび右サイドを崩してチャンスを作っていた。
劣勢の徳島は選手交代で流れを変えようとする。
徳島は、交代で入ってきた大場がタイミング良くエリア内に進出し、苦しい態勢でもしゃにむにシュートに持って行く。可能性を感じさせ始めた。
クロスは入れられるもののゴール前での勝負に勝てない徳島、チャンスはあっても決めきれない札幌。試合は膠着状態になっていたが、その正確なキックでたびたびスタンドをどよめかせて(というより悲鳴をあげさせて)いた上里のフィードから相川が仕事をした。
あとが無くなった徳島はなりふりかまわぬ攻撃にでる。
- 82分、徳島は片岡を下げ、小林を投入。3トップになる。
- 83分、徳島:クロスに大場が飛び込んでシュートを放つが高原がキャッチ。
- 85分、徳島:大場が浮き球をボレーシュートに持っていくが、ふかす。
- 89分、逃げ切り体制の札幌は上里に代えて権東。時間稼ぎ。
この時間帯、徳島はとにかく3トップめがけてボールを放り込んだ。前線に張る5人と後方に構える5人に分かれて、中盤が消滅してしまったがそんなことに構ってはいられない。秋葉が、谷奥が、谷池が、とにかく前線にボールを送り一か八かの勝負をかける。札幌は完全に引いてしまったが、曽田を中心としてロングボールをはじき返し続ける。
ロスタイムは3分。
- ゴール前の競り合いでこぼれたボールを大場が強引にオーバーヘッドシュートに持って行く。山なりのボールがキーパーの頭上を越えるがバー直撃。惜しい。このセカンドボールの競り合いは徳島ボールのFKという判定になった(このとき、手元計時では3分をすぎていた。
- 文字通りのラストプレー。ゴール前に放り込まれたフリーキックはクリアされるが、これを拾った谷奥が、落ち着いて前線の選手たちがオンサイドに戻るのを待ち、ゴール前・左サイドにボールを送る。このフィードが、一番左側でなぜかフリーになっていた大島に渡った。これを受けた大島がワントラップして角度のない場所からシュートを放つ。高原は反応しきれず、ボールは逆サイドのサイドネットに突き刺さった。徳島同点。このとき、手元計時で3分43秒。
ゴールの瞬間、ビッチもスタンドも大騒ぎになった(除くコンサ)。
そして、ボールは主審の手に収まり、試合は再開されなかった。文字通り、最後の瞬間(おまけだけど)での同点劇だった。
札幌にとっては非常に悔しい結果になった。序盤の10分ほどを除いて、組織的なサッカーというよりは個人能力に頼った試合運びだったが、そこはさすがにJの先輩で選手個々の質では徳島に勝っていた。3バックは最後の一瞬を除いて徳島FW陣を押さえていた。攻撃面では、両WBの攻撃参加が乏しかったような気がするが、砂川・上里の2列目コンビがいい働きをしていた。バーに嫌われたシュートが2本あったようにやや運がなかったのと、なまじ選手の質で優位だったので(慣れてない?)、本来の持ち味であろう組織サッカーが前面に出てこなかったのが残念だった。そして、最後の一瞬、集中力を切ってしまった。大島をフリーにしたのもそうだし、そもそも同点弾につながるフィードを送った谷奥に対し、時間があったにもかかわらず誰も詰めていかなかった。
徳島は、逆にホームの意地を見せた形になった。
ボールを回しながらサイドに起点をつくってクロスを入れるという形が確立していたし、特に左サイドの片岡からいいクロスが入っていた。そこから、どうやってシュートに結びつけるか、問題だが。今日の試合では、大島のシュートは最後の一発だけ、羽地はシュート0だった(手元集計)。羽地はポストプレーで奮闘していたし、大島もテクニックで見せ場を作ったものの、いかんせん札幌DFとの勝負に勝てない。それならそれで対策はというと、前半で金が一度、後半は大場が何回かエリア内に侵入してシュートを放ったように、両WBやトップ下(今日はあまり機能していなかったが)の飛び出しに活路を見いだそうとしているのかも知れない。
守備面は、両ボランチと3バックが粘り強い守備をしていたし、ノリヲもガッツのあるプレーを見せていた。小峯は相変わらずしつこい守りを披露していた。驚きだったのは秋葉の活躍ぶり。現役にこだわって新潟スタッフ入りを蹴って徳島入りしたとのことだが、完全に中心選手として機能していた。
まだまだ発展途上、というのが一見の人間にもはっきり分かる初々しいチームだが、メインスタンドの盛り上がりぶりはなかなかのものだった。大宮が昇格してしまった今、J2では数少ないポゼッション重視型のサッカースタイルを指向しているチームだけに、厳しい現実に直面することも多いだろうが、このやり方を続けていって欲しい(みんなカウンター指向じゃつまらないよ)。
あとは・・・最後の展開に興奮してしまって、阿波踊りを見逃した(しなかったのか?)・・・。